#2 本に囲まれた少女【2nd】
五十嵐家、リビングにて。
「あ、蓮さん! 大丈夫なんですか?」
俺がリビングに足を踏み入れた途端、ミラが心配そうに声をかけてきた。
あー、そっか。俺はミラのパートナーになり、一緒に暮らすようになったんだっけ。
「あぁ、なんとかな。そういえば、俺をここに運んでくれたのはお前か? いや、ないな。有り得ない」
「なっ、どういう意味ですか! ちゃんとわたしが運びましたよ!」
「嘘、だろ……ッ!? そんなにちっさいのに?」
「うるさいです! みんながでかすぎるだけです!」
「……それは無理があるぞ」
さて、ボケとつっこみを繰り返したところで、俺はズボンの後ろポケットに入れておいた携帯で時刻を確認する。
ふむ。一時、か。どうしようかな。
「よし、出かけてくる」
「え、どこに行くんですか?」
ミラの素朴な疑問に、俺は「ちょっとな」といなす。
いつもより少し遅れてしまったが、昨日あんなことがあったし、今朝謎の眩暈に見舞われてしまったので仕方ない。
俺の、毎週土日の日課。それは、外を散歩しながら可愛い幼女を探すこと。
そうすることによって、体力がつく上に目の保養になる。まさに、一石二鳥。
ふふふ。今日はどんな幼女がいるのかなー、と。そう思い後ろを振り返った時、見つけた。
銀髪低身長に猫耳尻尾…………おい。
「何でついてきてんだ、ミラ」
そう。俺の背後をとことこと可愛くついてきているのは、見間違うはずもなくミラだった。
「何で……って、何しに行くのかと思いまして。嫌な予感がしたので、わたしが監視してあげます」
「別に、ただの散歩だよ。だから監視なんかいらねぇ」
うん、嘘はついてない。まぁ、それは第二の目的だが。
「本当にそれだけですか? 蓮さんはロリコンだから、可愛い女の子を探したりするんじゃないですか?」
「……ッ!? え」
ミラがジト目で発した言辞に、思わずびくっとしてしまう。
な、何故だ!? あやめといいミラといい、どうしてすぐに分かってしまうんだ!? 俺がそんなに分かりやすいとでもいうのか!?
と、とととにかく平静を装わないと。
「……ナ、ナンノコトカナー?」
「そうですか、探すんですね」
ごめんなさい、どうやら失敗のようです。
畜生、こうなったら開き直って見逃してもらおう……という一存を消却するかのように、ミラが続く。
「そんなに暇なら、修行をしたらいいじゃないですか」
「え、修行? 何で? どうやって?」
脳内が疑問符で埋め尽くされる前に説明を求む。
「じゃあ逆に訊きますけど。わたしが変形した刀剣を、蓮さんは練習なしで扱うことができますか? 振り回せたとしても、素人のままじゃ戦闘など無理です」
言われてみれば、その通りかもしれない。
刀剣の技術なんて当然あるわけないし、体力や運動神経は昔からあまり自信がなかった。
それに剣は重すぎて、常人では捌くことが不可能というじゃないか。
特に何事もなく過ごせるのならそれでいいが、万が一再び鳥山先生が襲ってきたとき相対できるようになっておかないとな。
「わたしたちは、精霊獣を感知できるんですよ。実はこっそり海聖学園に行ってみたんですが、中から精霊獣の力を感じました」
勝手に俺の学校に行ってんじゃねぇ……と、ツッコミは置いといて。
「それって鳥山先生のパートナー、レグルスじゃないのか? 今まで学校で見かけたことはないけど、どっかに隠れてたりするんじゃ?」
「いや、有り得ませんね。あのレグルスさんなら、『そんなかったりィことやってられっかよ』とか言うに決まってます」
「そ、そうか」
敵ながら、ミラに根拠もなく決めつけられて軽く同情を覚える。まぁ確かに言いそうではあるけどさ。
「つまり、学校の中には他の精霊獣とパートナーがいるってことです。それを明後日の月曜日に捜索し、師匠とすることで修行を見てくれるか頼んでみてください」
「でもどうやって探せばいいんだよ? 全校生徒何人いると思ってんだ」
「わたしと契約した蓮さんなら大丈夫ですよ。問題なく見つかるはずですから安心してください」
「え」
そんな言語を放ち、当惑する俺を置いてミラは家へと入っていった。
一体、どう安心しろというのだろうか。
…………まぁ、いいや。明後日、学校で考えよう。
ミラのせいで幼女を探す気分じゃなくなったので、俺も早々に帰宅した。
せめて一人でもいいから、ミラ以外の可愛い幼女を見つけたかった……。




