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初春
春の淡い日差しに、夢から目覚めた。眼裏に残る、微かな余韻に耽る。
穏やかな光の情景。画用紙を広げ、幼い手は指先を汚しながら、円を描く。乾いたパステルはかすれて、不器用な楕円だった。白紙に消えそうな、象牙色の輪郭の中に、黒で髪と目を、赤で口を描き込む。原色の子供じみた絵だった。
誇らしげに僕は見せた。彼女は笑いながら、僕の髪をなでた。
そうしてその時の温もりが、また眠りへと誘う。
たくさんの花で、空白を埋めた。綺麗なもので飾りたかった。彼女は微笑んでいる。僕は嬉しかった。
ちくりと、蜂が刺す。痛みに目をつぶった。甘い香りが広がる。まぶたを開いた。
たくさんの花に囲まれて、彼女は眠る。僕は悲しくて泣いた。静かに眠る彼女は綺麗で、花びらが瑞々しさを湛えていた。
古い紙に描かれた絵が燃える。子供の描いた絵だった。
意識は浮上する。熱いものが、こみ上げて、流れた。