プロローグ・電波的な出会い
初投稿で不定期掲載します。けどなるべく早めにupできるよう頑張ります!p(´⌒`q)
「はぁっ、はっ、はっ」
吉井知佳は走っていた。
理由は朝礼のチャイムが鳴っていたからだ。鳴り終わるまでに教室に入らなければもちろん遅刻。担任がいなければセーフだが、あいにくきっちりした担任なのでその期待は薄い。
しかし、廊下を駆ける知佳の表情は涼しい。教室は目前だから。次の角を右に行くとすぐだ。
「楽勝、楽勝」
そのままの勢いで角を曲がる。だが、それがまずかった。
「きゃ!」
予期せぬ衝撃に思わず目を瞑る。誰かにぶつかった感覚、しりもちをつく。
「っつぅ……」
自分に怪我がない事を確認して、ハッとぶつかった相手を見やるが遅かった。
「大丈夫?」
スッと差し伸べられた手。
運命的なシチュエーションを予感し一瞬ドキッとしたが、そこにいたのは同性だった。自分よりも華奢なその手をつかみ立ち上がる。
「あ、あなたこそ大丈夫?」
申し訳ない気持ちよりも、残念な気持ちが勝った声音で訊いてしまう。
「はい、ロボットですから」
無表情で彼女は答えた。
「――は?」
「本日は起動してまだ一時間しか経ってない故、レーダーも本調子でなくあなたが飛び出してくるのを予知出来ませんでした」
返ってきた言葉の意味を飲み込めず立ち尽くす。
「では」
混乱している知佳に軽いお辞儀をし、彼女は去ってしまった。
ロボッ、ト……?
彼女の言った言葉が頭の中で何度もループする。しかし、こんなことに気を取られてる場合ではない事も同時に思い出していた。
「あー、遅刻かぁ」
重い足取りで教室に一歩踏み入れる。が――。
あれ……?
予想とは裏腹に、担任はおらず。それどころか生徒達はまだ休み時間同様に騒いでいる。
「おはよー、知佳。良かったねぇセーフじゃん」
ぽかーんとしてる知佳の肩を叩いたのは親友の詩垣麻衣だった。
「え、セーフ?」
「今のは予鈴だよ。本鈴だと思って走ってたんでしょ? もう笑っちゃう」
ふと、時計を見るとまだ朝礼開始の時間までは五分あった。早とちりに気づき少し恥ずかしくなる。
「なっ、なんで走ってる事までわかるわけ!?」
「何年一緒にいると思ってるのよ」
ニヤニヤする麻衣に納得いかないまま自分の席に着く。
やがて本鈴も鳴り、生徒達は自分の席に着き始める。そんな光景を眺める中、知佳はふと目を疑う。
あの子、同じクラスだったんだ――。
さっきぶつかった女生徒が窓際の席で読書をしていた。