鉄格子の向こう
前回の短編に引き続き、狂気を孕んだ内容となっております。また、直接的ではありませんが、残酷描写も含まれておりますので、苦手な方は十分にお気を付け下さい。
「ふふっ、くくく……ふふふふふっ……」
鉄格子の向こうに、男が一人。今日も、笑っている。
男の瞳に、真紅の夕日が映る。ふと手を見下ろすと、同じ色をしている。それで思い出すのは、正反対のアイスブルーの瞳。
笑う彼女は、最後に言った。こうすれば、あなたは永遠に私を忘れられなくなるでしょう? と……。
薄い青の奥に、真紅の炎が踊る。彼女の胸を深々と貫く、鋭利に輝く銀色……。
銀の凶器を握るのは、男の手。それを包み込むのは、彼女の白い優しい手……。男の震える手を握ったまま、真紅の唇を不気味に吊り上げる。ちょうど、夜空に浮かぶ三日月のようだ。赤い赤い、歪んだ三日月……。もう一度。
ズブリと沈む、鋭い銀光。ドプリとそこから、真紅が溢れる。
男の手も、彼女の手も、つないだそこから、真紅に呑まれる。
消える薄青、歪む真紅……。
後に残されたのは、真紅の手。――ただ、烙印のみだった。
「ふふっ、くくく……ふふふふふっ……」
鉄格子の向こうに、男が一人。今日も、笑っている。明日も、笑うのだろうか……?
こんにちは、霜月璃音です。
最近こういう作風のものが書きたくて仕方ないのは、自分の人生が平和だからでしょうか……?
かなり短いものですが、色の対比を中心に楽しんでいただければな、と思って書きあげました。いかがでしたか? もしよろしければ、このような短いお話ですが、ご感想などをお聞かせ下さい。
このお話をお読み下さった皆様、ありがとうございました。