どうして作者は悪役の辛い過去を描こうとするのか
今回は、ネットに転がっていた疑問について考えてみようと思います。
「ワイ、悪役とかの辛い過去語りとか嫌いやねんけど理解できる奴おる?」
趣旨としては、「んなことしたら、敵を気持ちよくぶっ飛ばせなくなるやん。余計な設定入れんなよ」ってことですね。
この意見は個人的には理解できますね。
時代劇なんかで、悪代官に辛い過去やら、やむを得ない事情やらがあったら、成敗した時のカタルシスの減少は避けられません。
実際に江戸時代の幕府の代官職は、上からの無茶難題、下からの直訴に挟まれ、それはそれは辛い辛いお仕事だったようですし。損害賠償請求で破産する人もいたとか。
しかしながら物語の中での悪代官さんには、小判片手に「ガハハッ」と笑っていていただきたいものです。そこに、辛い現実は挟んで頂きたくない。
では、どうして作者は悪役の辛い過去を描こうとするのか、理由を幾つか考察していきましょう。
一応、私も作者ですので、作者目線の考察となります。ご了承ください。
それでは、始まり始まり。
① ただの害悪では物足りなくなってきたから
これは物語の構成のお話です。
作品が進むと、登場人物の表面だけではなく、内面に対してもフォーカスするものです。ってなると自然に、悪役の行動原理みたいなものを語る必要も出るでしょう。その中で、辛い過去とかトラウマとか、それなりの事情なんかのお話が飛び出してきます。
意味もなく襲ってくるモンスターとは違い、悪役ってのは基本的に知性を持っているからです。
次の話の展開も作りやすくなるので、作者としては描きたくなりますね。
② そのキャラに愛着が出てきたから
作者が悪役を描いている内に、そのキャラを好きになってしまうことがあります。
そうなると単純なバカとしては、描きにくくなります。
私は昔、アンパンマンに出てくる"ばいきんまん"が好きすぎて、彼の行動原理を考察したことがあります。この場合、"ばいきんまん"に寄り添うような設定を考えてしまうものです。結果として擁護みたいな展開にもなる。
③ 作品のリアリティーを上げたい
普通に考えると、完全なる悪人など存在しません。この設定自体に無理があります。
客観的には屁理屈でも、主観では正義なんてことは、現実社会でも往々にして起こり得る事態です。
逆に描かないと、悪役が欲望だけで動くモンスターか、本当に何も考えられない低能かの二択になるでしょう。どれほど強かろうと、主人公の敵としては物足りない連中となります。
主人公を持ち上げるためにも、悪役には高い知性が欲しい。となると、それなりの行動原理がそこにはある。ってな感じに、内面を掘り下げることになるでしょうね。
④ 物語の厚みを増したい
物語における、カメラの位置が変わるというお話です。
今まで見ていた一方的な視線を変えることによって、作品の奥行きを増やそうとする試みです。
ついでに、お話しの水増しも可能。作者にとっては都合がいいですね。
読者にとっては蛇足になる事もしばしば。
これは悪役だけでなく、脇役なんかにも当てはまります。
⑤ 悪役ってのは魅力的
役者さんも「悪役は演じていて楽しい」とおっしゃいます。悪役ってのは魅力的な人物になりやすいものです。
ガンダムのシャアとかナウシカのクシャナとかが良い例ですね。
下手をすると主人公よりも魅力的になったりします。そうなると作者の筆も進み、過去語りや内面の描写に力が入るでしょう。
パッと思いつくのはこの5点です。これらが作者の人が、悪役の体面を掘り下げる要因です。他にもあるとは思いますけど。
お次は、悪役の過去物語を描くことによる欠点について考えてみます。
① 読者が望んでいない
最初の問いになりますし、総括的な答えでもあります。
そもそもとして需要が無いので、「別にいらんって」という反応が起こるでしょう。
感情移入したキャラをぶっ飛ばすと、後味が悪くなります。
② 主人公が薄っぺらくなる
相対的なお話です。
悪役を掘り下げると、主人公の立場が軽くなります。
主人公側の掘り下げが足りないと、能天気な主人公と苦悩する悪役との戦いになりますし、悲惨な境遇同士の争いになると、被害者友の会みたいな展開になりかねません。
読者の感情移入の先がブレブレとなり、つまんなくなる可能性が高まります。一言で表現するなら「主客転倒」
③ スナック感がなくなる
作品にのめりこみたくない読者にとっては、悪役の過去語りは重たくなるだけの害悪です。
物語の温度というか、湿度みたいなものが上昇するし、何よりも「話が長なる」
(/・ω・)/いけませんね~
特になろうみたいなフィールドでは好まれないでしょう。
お気楽、お手軽が、なろうのメインストリームです。
内面を掘り下げると、文学や私小説っぽくなります。
最後に、悪役のバックボーン必要なのかについて考えてみましょう。
答えとしては
「作品による」
当たり前の結論となってしまいました。
繰り返しになりますが、ドラゴンとかのモンスターには要りませんし、チョイ役のチンピラ君たちにも必要ありません。本能と低能の二文字で説明完了するからです。
次に悪の化身みたいなキャラにも要らないでしょう。例といたしましては、モルゴスとかサウロンとかね。
こいつらは半分神様みたいなもんですから、人知を超えた発想を持っているでゴリ押し可能です。
またまた、とっても強い力(暴力)を持っているキャラも必要ないでしょう。
この手のキャラは力の行使に快感を覚えるタイプですので、神様と本能と低能のハイブリッドになります。バトル作品とかの悪役とかが該当するでしょう。要らないと思います。
私見になりますが、この手の悪役の掘り下げが一番嫌われているように感じます。
バトル作品の悪役の多くが基礎設定が適当で、話の進行で掘り下げをすると、後付け感が倍増します。また、自身の力を過信したイキリキャラであることが多いので、イキリの過去に興味がわかないのもあるでしょう。
凶悪な犯罪者の過去がいくら悲惨でも、犯行の正当性にはなり得ませんし、情状酌量を狙っているようで、見苦しくもあります。
例えるのであれば、作者が凶悪犯の弁護士の立ち位置に見えかねない。
現実世界では必要な行為ですが、フィクションでの必要性は低いでしょう。
ここまで考察して私個人の結論といたしましては、悪役の掘り下げは「別に要らん」ですかね。
悪役の掘り下げって、基本的には作者の都合であることが多いいからです。読者としては「知らんし」という感情が芽生えるのも仕方がありません。
ですが皆さん。残酷な真実を一つ。
「悪役が魅力的な作品は名作」
( ̄▽ ̄)//これっすよ。
やっぱ、物語ってのは主人公の独りよがりよりも、相手側とのレスポンスによって、より高みへと昇華するものです。そのためにも悪役側の掘り下げはしたくなります。
そのため、取って付けたような後出し設定が現れるのです。
どんなに「しょうもない」作品を描いている作者でも、本人は名作を書きたいと望んでいます。これからも悪役の掘り下げは後を絶たないでしょうね。
ですから、暖かい眼差しで見てやっておくんなまし。
終わり
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