表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

どうして作者は悪役の辛い過去を描こうとするのか

作者: 加藤 良介
掲載日:2026/06/30

 今回は、ネットに転がっていた疑問について考えてみようと思います。


 「ワイ、悪役とかの辛い過去語りとか嫌いやねんけど理解できる奴おる?」


 趣旨としては、「んなことしたら、敵を気持ちよくぶっ飛ばせなくなるやん。余計な設定入れんなよ」ってことですね。

 この意見は個人的には理解できますね。


 時代劇なんかで、悪代官に辛い過去やら、やむを得ない事情やらがあったら、成敗した時のカタルシスの減少は避けられません。

 実際に江戸時代の幕府の代官職は、上からの無茶難題、下からの直訴に挟まれ、それはそれは辛い辛いお仕事だったようですし。損害賠償請求で破産する人もいたとか。

 しかしながら物語の中での悪代官さんには、小判片手に「ガハハッ」と笑っていていただきたいものです。そこに、辛い現実は挟んで頂きたくない。

 では、どうして作者は悪役の辛い過去を描こうとするのか、理由を幾つか考察していきましょう。

 一応、私も作者ですので、作者目線の考察となります。ご了承ください。

 それでは、始まり始まり。



 ① ただの害悪では物足りなくなってきたから


 これは物語の構成のお話です。

 作品が進むと、登場人物の表面だけではなく、内面に対してもフォーカスするものです。ってなると自然に、悪役の行動原理みたいなものを語る必要も出るでしょう。その中で、辛い過去とかトラウマとか、それなりの事情なんかのお話が飛び出してきます。

 意味もなく襲ってくるモンスターとは違い、悪役ってのは基本的に知性を持っているからです。

 次の話の展開も作りやすくなるので、作者としては描きたくなりますね。



 ② そのキャラに愛着が出てきたから


 作者が悪役を描いている内に、そのキャラを好きになってしまうことがあります。

 そうなると単純なバカとしては、描きにくくなります。

 私は昔、アンパンマンに出てくる"ばいきんまん"が好きすぎて、彼の行動原理を考察したことがあります。この場合、"ばいきんまん"に寄り添うような設定を考えてしまうものです。結果として擁護みたいな展開にもなる。



 ③ 作品のリアリティーを上げたい


 普通に考えると、完全なる悪人など存在しません。この設定自体に無理があります。

 客観的には屁理屈でも、主観では正義なんてことは、現実社会でも往々にして起こり得る事態です。

 逆に描かないと、悪役が欲望だけで動くモンスターか、本当に何も考えられない低能かの二択になるでしょう。どれほど強かろうと、主人公の敵としては物足りない連中となります。

 主人公を持ち上げるためにも、悪役には高い知性が欲しい。となると、それなりの行動原理がそこにはある。ってな感じに、内面を掘り下げることになるでしょうね。



 ④ 物語の厚みを増したい


 物語における、カメラの位置が変わるというお話です。

 今まで見ていた一方的な視線を変えることによって、作品の奥行きを増やそうとする試みです。

 ついでに、お話しの水増しも可能。作者にとっては都合がいいですね。

 読者にとっては蛇足になる事もしばしば。

 これは悪役だけでなく、脇役なんかにも当てはまります。



 ⑤ 悪役ってのは魅力的


 役者さんも「悪役は演じていて楽しい」とおっしゃいます。悪役ってのは魅力的な人物になりやすいものです。

 ガンダムのシャアとかナウシカのクシャナとかが良い例ですね。

 下手をすると主人公よりも魅力的になったりします。そうなると作者の筆も進み、過去語りや内面の描写に力が入るでしょう。



 パッと思いつくのはこの5点です。これらが作者の人が、悪役の体面を掘り下げる要因です。他にもあるとは思いますけど。


 お次は、悪役の過去物語を描くことによる欠点について考えてみます。



 ① 読者が望んでいない


 最初の問いになりますし、総括的な答えでもあります。

 そもそもとして需要が無いので、「別にいらんって」という反応が起こるでしょう。

 感情移入したキャラをぶっ飛ばすと、後味が悪くなります。



 ② 主人公が薄っぺらくなる


 相対的なお話です。

 悪役を掘り下げると、主人公の立場が軽くなります。

 主人公側の掘り下げが足りないと、能天気な主人公と苦悩する悪役との戦いになりますし、悲惨な境遇同士の争いになると、被害者友の会みたいな展開になりかねません。

 読者の感情移入の先がブレブレとなり、つまんなくなる可能性が高まります。一言で表現するなら「主客転倒」



 ③ スナック感がなくなる


 作品にのめりこみたくない読者にとっては、悪役の過去語りは重たくなるだけの害悪です。

 物語の温度というか、湿度みたいなものが上昇するし、何よりも「話が長なる」

 (/・ω・)/いけませんね~

 特になろうみたいなフィールドでは好まれないでしょう。

 お気楽、お手軽が、なろうのメインストリームです。

 内面を掘り下げると、文学や私小説っぽくなります。



 最後に、悪役のバックボーン必要なのかについて考えてみましょう。

 答えとしては


 「作品による」


 当たり前の結論となってしまいました。

 繰り返しになりますが、ドラゴンとかのモンスターには要りませんし、チョイ役のチンピラ君たちにも必要ありません。本能と低能の二文字で説明完了するからです。

 次に悪の化身みたいなキャラにも要らないでしょう。例といたしましては、モルゴスとかサウロンとかね。

 こいつらは半分神様みたいなもんですから、人知を超えた発想を持っているでゴリ押し可能です。


 またまた、とっても強い力(暴力)を持っているキャラも必要ないでしょう。

 この手のキャラは力の行使に快感を覚えるタイプですので、神様と本能と低能のハイブリッドになります。バトル作品とかの悪役とかが該当するでしょう。要らないと思います。


 私見になりますが、この手の悪役の掘り下げが一番嫌われているように感じます。

 バトル作品の悪役の多くが基礎設定が適当で、話の進行で掘り下げをすると、後付け感が倍増します。また、自身の力を過信したイキリキャラであることが多いので、イキリの過去に興味がわかないのもあるでしょう。


 凶悪な犯罪者の過去がいくら悲惨でも、犯行の正当性にはなり得ませんし、情状酌量を狙っているようで、見苦しくもあります。

 例えるのであれば、作者が凶悪犯の弁護士の立ち位置に見えかねない。

 現実世界では必要な行為ですが、フィクションでの必要性は低いでしょう。


 

 ここまで考察して私個人の結論といたしましては、悪役の掘り下げは「別に要らん」ですかね。

 悪役の掘り下げって、基本的には作者の都合であることが多いいからです。読者としては「知らんし」という感情が芽生えるのも仕方がありません。

 ですが皆さん。残酷な真実を一つ。


 「悪役が魅力的な作品は名作」


 ( ̄▽ ̄)//これっすよ。


 やっぱ、物語ってのは主人公の独りよがりよりも、相手側とのレスポンスによって、より高みへと昇華するものです。そのためにも悪役側の掘り下げはしたくなります。

 そのため、取って付けたような後出し設定が現れるのです。

 どんなに「しょうもない」作品を描いている作者でも、本人は名作を書きたいと望んでいます。これからも悪役の掘り下げは後を絶たないでしょうね。

 ですから、暖かい眼差しで見てやっておくんなまし。


 

             終わり

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 ご意見、こ感想などございましたら、お気軽にどうぞ。

 いいね、評価などして頂けたら喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 とても興味深く読ませていただきました。    今では悪役は、もう一方の正義なんですよね。だから、掘り下げていくんでしょう。言い方を変えればもう一方の主人公でしょうから。特に某きどうせんしがんだむと…
論点はずれるけれど、一昔前はワイドショーなんかでやたら犯罪者の動機を探っていたのを思い出した。あれも視聴者に訴えかけるために物語を必要としていたのかなー。 誰かが捕まるとすぐ動機動機というのでそんな深…
もうファスト作品には、みながうんざりとし始めているので、調和の配合が変わったのではないでしょうか。単純なバカで悪というキャラが出てくる作品は、それだけで作者の軽薄さをあらわすので、ファスト作品でも難し…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ