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いままでどうもありがとう~虐げられた令嬢は下克上を試みます~

作者: 久遠れん
掲載日:2026/02/21


『お前など生まれてこなければよかったんだ』

『汚らわしい。近寄らないで』

『お義姉様って本当に愚図ね』


 父から、継母から、異母妹から。

 罵られた数々の言葉が脳裏をぐるりとめぐる。


 伯爵令嬢セシリアの人生が可笑しくなったのは、十歳の時に彼女を生んだ実母が亡くなり、父親が後妻を迎えた後からだった。


 同い年の異母妹が出来た。父が母に秘密で外に囲っていた平民の女性が後妻として収まって、それからセシリアの地獄は始まった。


 誰に話しかけても父も継母も義妹も使用人すら、セシリアを居ないものとして扱った。

 十三歳から十六歳まで貴族の子供たちが通う貴族学園には辛うじて入学を許可されたことが救いだった。


 親元を離れて全寮制の学園生活が始まり、やっとセシリアは息をすることを思い出せた気がした。

 とはいえ、異母妹のキャロルも同じ学園に在籍している。セシリアを見下す彼女の影響で学友は出来なかった。


 屋敷にいた頃に比べれば全然マシとはいえ、寂しさはある。今日もまたキャロルの笑い声が響く教室から逃げるように図書館にやってきた。


 教室のある棟とは別棟にある図書館は国内でも有数の蔵書量を誇る。

 勉学に必要な書籍から、流行りの娯楽小説までなんでも置いてあることで有名だ。


 借りていた歴史小説を返却し、膨大な書籍が置かれている棚の間をうろうろと動く。

 本はいい。読んでいる間は現実を忘れられるから。


 何を借りようか迷って、その日セシリアは一冊の娯楽小説を手に取った。

 それが彼女の運命を変えると知らぬまま。






 学生寮に戻り、着替えてベッドに横になったセシリアはさっそく借りてきた小説を読みふけった。

 なんとなく手に取ったはずの小説の内容に食事の時間も忘れて没頭してしまう。


 彼女が借りた小説は『家族から虐げられた主人公が周囲に認められて幸せになる話』だったのだ。


 今のセシリアより劣悪な環境に置かれたヒロインが、努力に努力を重ね周囲に認められ、婚約者を得て、ヒーローの力を借りて家族に決別を告げる物語であった。


 夢中になって読み終わった後、セシリアは衝撃を受けた。受動的なままではダメなのだ。このヒロインの行動力を見習わなければ、と。


(この人にできたことが、私にできない理由がない……!)


 物語の中だから都合よく進む部分はもちろんあっただろう。

 だが、たとえ失敗しようとも現状を打破しようともせず蹲って泣いているだけより万倍マシだ。

 小説を宝物のように抱きしめて、セシリアは決意する。


「変えてみせるわ、この状況を!」


 亡き母だって言っていた。女は度胸と行動力だと。どうしてこんなに大切なことを忘れていたのか。

 反省と共に母の言葉を思い出し、セシリアは勢いよくベッドから起き上がる。


 そのまま机に向かって、キャロルが気に入らないと投げつけてきたノートを広げそこに羽ペンでガリガリと書き込んでいく。


(まずは人脈。キャロルの言動に振り回されない友達を作るの)


 小説の中のヒロインは身近な足場を固めることから始めていた。

 味方とまではいかなくとも、話を聞いてくれる友人がいるだけでずいぶんと心は軽くなるだろう。


 キャロルの話を真に受けず、セシリアの言葉に耳を傾けてくれる相手ならなおいい。

 学園で過ごす間に頭に入っていった勢力図をノートに書きだし、そこから友達になってくれそうな相手を何人かピックアップする。


 まずは同性から。異性はキャロルがすぐに色目を使ってしまうから。


「……よし!」


 早速明日から話しかけてみよう。最初の話題は何がいいだろう。物語の中では、ヒロインは相手の好きそうな話題を選んでいた。


 教室の隅で小さくなって今まで過ごしていたけれど、暇だったから噂話はたくさん耳に入ってきた。

 それらが使えるだろうと確信して、セシリアは軽やかに笑う。


 なんだか、酷くすっきりした気持ちだった。






 翌日からセシリアはさっそく行動を開始した。

 どきどきと煩い心臓を隠して、久しぶりに浮かべる笑みを表情に乗せ、明るく穏やかに話しかける。


 選んだのはキャロルの派閥に属さない子爵令嬢。

 一応は伯爵令嬢であるセシリアが自ら話しかけても失礼にならない相手だ。


 相手の令嬢は驚いたようだったけれど、セシリアが最近王都で流行りだというお菓子の話題を振れば見事に食いついてくれた。


 隣国から持ち込まれたという流行のお菓子を食べたことはないが、最近図書館で作り方の乗った本を読んだのでその知識を織り交ぜて話すと、感嘆と共に楽しそうにおしゃべりをしてくれたのだ。


 貴族の令嬢は普通料理などしない。だがお菓子作りであればまだ許容範囲内だ。

 二人が流行のお菓子の話題で盛り上がっていると、周囲で聞き耳を立てていた令嬢たちも自然と話に混ざってくれた。


 同格の伯爵家の令嬢もその中には居て、少し驚いたが表情には出さない。

 あくまで人当たりの良い笑みを浮かべて穏やかに話し続ける。

 そうすれば自然と味方は増えるのだと小説に書いてあったからだ。


 遅れて教室にやってきたキャロルは、セシリアが楽しげに話している様子を見て目を見開いていたがすぐにそっぽを向いていつものメンバーで話し出した。


 邪魔をされなかったことに胸をなでおろす。その日、セシリアには初めて友人が出来た。

 その日からセシリアは挨拶を欠かさなくなった。


 いつも俯いて小さくなっていた自分を忘れて、母の言葉と物語の主人公の言動を常に思い描きながら行動したのだ。


 徐々に交遊の輪は広がって行った。

 今まで一人ぼっちだったのが嘘だったように、休み時間は友人たちとおしゃべりができるようになった。


 ただ楽しいだけではなく、今後の立ち回りの参考になる人間関係の話も聞けるようになって有意義な時間が過ごせる。


 セシリアがクラスで馴染むようになると、今まで見えてこなかった光景がみえるようになった。異母妹のキャロルのことだ。


 彼女は婚約者がいる身にもかかわらず、様々な男子生徒に親しげに話しかけ、彼らの婚約者の令嬢の顰蹙を買っていた。


 その上、身分が上の令嬢や令息にも自ら話しかけに行くため、貴族の礼儀を知らないとずいぶんと煙たがられているようだった。


 セシリアとは違ってキャロルは誰からも愛されている、そう思い込んでいたが、それは幻想でしかなかったのだ。


「ごめんなさね、セシリア様。あのキャロル様のお義姉様だというから、私たちも距離を測りかねていて」


 仲良くなったクラスメイトに頬に手を当てて困ったように微笑みながらそう言われたときには、思わず乾いた笑みを浮かべてしまった。


 セシリアが学園で浮いていたのは、もちろん彼女自身の後ろ向きな考え方も要因として大きかったのだろうが、それ以上にキャロルの悪評に基づいて距離を置かれていたらしい。


 だからこそ、明るく微笑み常識的な話題を振れば、セシリアはあっという間に学園に馴染むことができた。


 いまだ婚約者の一人もいないセシリアを気遣って、仲良くなった侯爵令嬢の一人が「今度開くパーティーにいらっしゃらない?」と誘ってもくれた。


 学園に在学する令嬢と令息を集めた小さなパーティーを開くから、と。

 学園では休養日には個々人の裁量でお茶会やパーティーを開くことが許可される。


 将来国の中枢を担う貴族の子供たちが集まっているのだから、当然ではある。

 令嬢たちは積極的にお茶会やパーティーを開いて友人たちを呼び、情報を集めているのだ。


 今までのセシリアならば「着ていくドレスがないので……」と遠慮しただろう。

 だが、彼女は生まれ変わったのだ。今後のことを思えば、生きた情報には貪欲にならねばならない。


「もちろん、喜んで。……と、お答えしたいのですが……」


 そっと視線を伏せる。

 物憂げな表情を浮かべたセシリアに、侯爵令嬢マルティーヌが「どうしたの?」と可憐な声音で問いかけてくれる。

 意識を引いたことを確認し、セシリアは浅く息を吐く。


「ドレスの手持ちがありませんの……制服では場にそぐいませんでしょうし……」

「まあ」


 学園の制服のドレスは個々人の裁量で着こなしは自由にしていいが、それでも制服である。

 お茶会やパーティーに着ていくものではない。セシリアの告白にマルティーヌが困惑している。


「ヴァネット伯爵家の経済状況はそこまで逼迫していますの?」

「お恥ずかしいのですが、事情がありまして……」


 途中で言葉を区切りキャロルを見る。

 高い髪飾りを見せびらかすように身に着けている彼女にマルティーヌが事情を察したようにと息を吐く。


 ヴァネット伯爵家の資産は継母と異母妹が使い込んでいるのだ。セシリアに回してくれるドレスや宝飾品はない。


 制服もパターンの違う複数着をその日の気分で変えているキャロルと違ってセシリアは一つしかもっていない。


「そうでしたのね。失礼でなければ、こちらでドレスをご用意いたしますわ」

「いいのですか?」

「ええ。わたくしたちは体形が似ていますから、少し手直しをすればわたくしのドレスがはいるでしょう」


 願ってもない言葉だ。目を輝かせたセシリアにマルティーヌが上品に笑う。


「よければそのまま差し上げますわ。わたくし、少しドレスを処分しようと思っていましたの」


 本当に願ったり叶ったりである。ますます目を輝かせたセシリアにマルティーヌが穏やかに微笑む。


「ドレスに合わせた装飾品もご用意いたしますね。そちらも気に入るのでしたら差し上げますわ」


 持つべきものはお金持ちの友である。

 小説の中でも書かれていた言葉を実感して感動するセシリアだった。






 放課後、教室に残って自習をしていると肩を怒らせたキャロルが近づいてきて睨みつけてきた。


「お義姉様、調子に乗るのやめたらどう? 必死すぎて笑いを抑えるのが大変なのよ」


 全然笑えていない表情でキャロルがそんなことをいうから、セシリアのほうこそ可笑しくなってしまった。


 こらえきれず小さく笑うとキャロルの眦が吊り上がる。かつてはとても怖かったのに、いまはそんなことはない。

 彼女の機嫌を伺うことは止めたのだ。


「お義姉様の癖に生意気ね……!!」


 手を振りかざしてきたキャロルの行動に、さすがに失敗したとは思ったけれど。

 反射的に目を閉じたが、いつまでたっても痛みがおとずれない。

 恐る恐る目を開けば、キャロルの背後から彼女の手首を抑えている人物がいた。


「アルフレッド様……?」


 ロンバート公爵家の子息アルフレッドだ。

 セシリアがぽつりと漏らした言葉に反応して慌てた様子でキャロルが振り返る。


「あ! これは……! お義姉様の髪にゴミがついていたの! だからとってあげようとして!!」


 どうみても無理な言い訳を並べるキャロルが可笑しい。

 再びくすりと笑うと酷い眼差しで睨まれる。でも、欠片も怖くはなかった。


「キャロル嬢、ジョージが探していた。行ってやるといい」

「そうなの? でもわたし、アルフレッド様とお話したいです……!」


 きゅるんと上目遣いでアルフレッドを見上げるキャロルを冷めた眼差しで見つめる。

 彼女はこうやって媚びを売って男子生徒に取り入ろうとしているが、成功率は悪そうだった。


 婚約者のいる令息たちは迷惑そうにしているし、そもそもこの程度の色仕掛けで手の平を返す相手はろくな性格をしていない。


 浅く息を吐く。さて、アルフレッドはどうするだろうと思ってみていると、彼はキャロルを綺麗に無視してセシリアに視線を注いだ。


「セシリア嬢、商会への伝手を探していると小耳に挟んだんだが」

「え? はい。その通りです」


 最近、セシリアは商家から成り上がって男爵位や子爵位を得た令嬢や令息たちに接触を図っていた。

 貴族に成り上がる商人の子供たちだけあって、警戒心が強い彼らだが、利益になると判断した相手にはよくしてくれるのだ。


 将来、学園を卒業したらヴァネット伯爵家を出て彼らの所で雇ってもらえないかと思って、こつこつと交流を図っているのである。


「面白い商品を見つけたら教えてくれ」

「はい、わかりました」


 どうやらアルフレッドはセシリアが商会に伝手を求めているのは物珍しい商品を求めてのことだと思っているらしい。

 キャロルがいる前でわざわざ訂正することもないので、素直に頷く。


「アルフレッド様! お義姉様はお金なんてもってないです! わたしが一緒に商会に行って」

「そういえば。セシリア嬢、図書館の蔵書に関して話がある。少しいいか」

「え、ええ」


 あくまでもキャロルを無視するアルフレッドに驚きつつ、言われるがままに教科書やノートを片付け立ち上がる。

 この場に残っても怒ったキャロルの八つ当たりの対象になるだけだ。


 すでに顔を真っ赤にして怒っているキャロルを放置して、そそくさとセシリアはアルフレッドと共にその場を後にした。






 すたすたと前を歩くアルフレッドについていきながら、セシリアはその背中に問いかける。


「アルフレッド様、図書館はそちらではありませんが……?」


 アルフレッドが向かっている方向は図書館とは正反対だ。彼女の問いかけにぴたりと足を止めた。


「もういいか」


 くるりと振り返ったアルフレッドを見上げる。彼はセシリアより頭一つ半ほど高い。

 首が痛いなぁと思いながら見つめていると、アルフレッドが目を細める。


「少し身の回りに気を付けたほうがいい」

「え?」

「変わることはいいことだ。だが、劇的な変化は劇薬になりかねない」


 思わぬ言葉をかけられてセシリアは黙り込んだ。

 キャロルが彼女のことを目障りに思っていることは知っているが、アルフレッドの言葉にはそれ以上の重みがあるように感じられる。


「それだけだ」


 言いたいことだけ言ってひらりと手を振って立ち去る後ろ姿をセシリアは黙って見送った。

 言葉の意味は自分で考えろということなのだ、と理解して。






 セシリアの変化はアルフレッドが言う通り劇的であったのだろう。

 刺激の少ない学園生活で、彼女の変化は噂の的となった。


 物語の主人公のように凛と背を伸ばし、好き勝手に噂されても気にしないようにしていたが、さすがに無視できない出来事が起こった。それは。


「やあ、セシリア。今日も可愛いね」

「……」

「つれないなぁ」


 廊下を歩きながらセシリアが素っ気なく無視を決め込んでも付きまとってくる男子生徒、彼はジョージ・ダーヴィン。

 ダーヴィン伯爵家の三男で、キャロルの婚約者だ。


 キャロルが絶賛し自慢して回る整った顔立ちをしているが、それだけだ。

 顔以外に良い評判を聞くことがない。


 それを証明するように、最近しつこく付きまとわれて困り果てている。

 最初の頃こそ当たり障りのない返事をしていたが、キャロルを放置してまで話しかけてくるようになってからは無視を決め込んでいた。


 彼にどういう意図があるのか知らないが、下手にキャロルを刺激したくないのだ。

 だが、そんなセシリアの努力も空しくジョージは事あるごとに彼女に声をかける。


 とうとう今日は親しげに腰を抱かれてしまい、流石に「やめてください」と声をあげようとした。


「さすがにやりすぎだ」

「アルフレッド様」

「手をどかせ。セシリア嬢が困っている」


 制止の声を発してくれたのは向かいから歩いてきていたアルフレッドだ。

 彼はセシリアの腰に回されたジョージの手を見とがめてくれた。


 助かった、と胸をなでおろす彼女の隣で、流石に侯爵令息を相手にするのは分が悪いと思ったのか、へらりと笑いながらジョージが引き下がる。


「先生に呼ばれていたのを忘れていたなぁ。じゃあね、セシリア」


 ぱちんとウィンクをされても嬉しくもなんともない。

 呆れた眼差しを返すが、気にする様子もなくジョージは離れていった。

 その姿が廊下の角に消えたあたりで、アルフレッドが腕を組んでため息を吐く。


「気をつけろ、と言ったはずだが」

「……こんなことになると、思っていなかったのです……」


 確かに忠告されていた。

 だが、キャロルの婚約者であるジョージがセシリアに近づいてくるのは予想外に過ぎたのだ。

 肩を落としたセシリアに、アルフレッドが庭園を示す。


「少し話をしたい。庭園のガゼボでどうだ」

「はい」


 貴族の子供が通う学園だけあって、綺麗に整えられた庭園には休憩用のガゼボがある。

 二度も助けてくれたアルフレッドの誘いを断る理由もないので頷くと、彼はそのまますたすたと歩き出した。

 一歩後ろをついて歩いていると、ふいに足を止める。


「……隣を歩け。君は私の従者じゃない」

「ありがとうございます」


 爵位はアルフレッドのほうが上なので遠慮をしたのだが気に入らなかったらしい。

 不服そうに言われた言葉に小さく笑い、隣に並ぶ。


 渡り廊下から庭園に出る。色とりどりの花々の間を歩いて白いガゼボに着いた。

 蔓薔薇の刺繍が施された長椅子に腰を下ろす。


 アルフレッドもテーブルを挟んで体面に座った。

 暫しの沈黙が下りたのち、彼がゆっくりと口を開く。


「これは念のための確認だ。……君は異母妹が憎くて、婚約者を寝取ろうとしているわけではないな?」

「とんでもありません!」


 慌てて首を左右に振る。必死に否定すると、もう一度「念のためだ」と言われてほっと胸をなでおろす。


 疑われていなくてよかった。そう思うのはこれ以上のもめ事を嫌ったからだ。

 そのはずなのに、胸の奥がなぜかちくりと痛んだ。


「では、さらに確認させてくれ。君は自分が変わることで、虐げてきた家族に復讐をしたいのか?」


 セシリアがヴァネット伯爵家で虐げられていることを把握されている。そのことに少しだけ驚いた。

 彼女を軽んじるキャロルの言動から推察したのか、あるいはセシリアが知らないだけで公然の噂となっているのか。どちらなのか判断に困る。


 いったん思考は棚上げし、セシリアはゆっくりと首を横に振る。


「……復讐というより、下克上をしたいのです」


 セシリアが変わろうと思った切っ掛けの物語の中でも、主人公はしきりに『下克上をするのよ!』と口にしていた。


 流行の小説らしからぬ古風な言い回しに笑ったのでよく記憶に残っている。

 セシリアの言葉にアルフレッドが瞳を瞬かせる。その眼差しに興味深げな色が乗った。


「それは復讐とどう違うんだ?」

「私の力を認めさせたいだけなのです」


 問いかけに素直な気持ちを応える。アルフレッドは考え込むように顎に触れる。

 思案するように視線が伏せられると、長いまつげが影を落とす。

 ジョージとは別系統で元々整っている顔立ちに儚げな雰囲気が足され、心臓が不自然に脈打った。


「不幸にしたいわけじゃない?」

「はい、私は両親と義妹に幸せになって『いままでどうもありがとう』と笑って縁を切りたいのです」


 心打った小説の最後、主人公が華やかに笑って口にした台詞を彼女を冷遇し続けた家族にそのまま叩きつけてやりたい。


 セシリアの言葉に、アルフレッドが視線を上げる。

 すんだ瞳に射抜かれるとやっぱり心臓が可笑しくなってしまう。


「ああ! 今流行の小説のラストだな」

「はい!」


 どうやら彼も同じ小説を読んだらしい。

 女主人公の話を男性が読むのは珍しいが、同好の士がいることは素直に嬉しい。


 声音を跳ねさせたセシリアは思わず思い入れの深い小説の好きな場所を早口にまくしたててしまった。


「あの物語に心打たれたのです。私もあの主人公のようになれるのでは、とそう勇気づけられました。だから私は変わることを決意したんです!!」

「なるほど、納得した」


 熱の入ったセシリアの言葉に頷いたアルフレッドは優しく目を細める。


「私もあの作品には思い入れがある。そうかそれなら――君が望むなら、力を貸そう」

「え?」


 思わぬ提案に瞬いてしまう。アルフレッドが力になってくれるなら心強いことこの上ない。

 だが、どうして、と同じくらい不思議だった。


「どうしてそこまでしてくださるのですか?」

「面白そうだからだ。変わり映えのない毎日に退屈していた。君が下克上をするのを眺めるのは楽しそうだからな」


 にやりと口角を吊り上げたアルフレッドの言葉に戸惑わなかったわけではない。

 だが、使えるものは何でも使え。それもまた物語の主人公の言葉だった。


「よろしくお願いします」

「ああ」


 握手を交わして、二人は盟友になったのだ。






 アルフレッドの紹介で、令息たちの間にも伝手が出来た。

 婚約者がいる令息と話すときは、常に人目につくように距離を保つことを特に意識した。

 その結果、セシリアはキャロルとは違って悪評が立つことはなかった。


 商家の跡取りたちとも頻繁に会話を交わし、商売の基礎を教えてもらった。

 アルフレッドの手助けを借りながら、在学中にセシリアは小さな商会を立ち上げた。


 物語の主人公の名前からとって――アリア商会と名付けた小さな商会では、セシリアは入念に市場を調査し流行を先取りすることを狙った。


 アルフレッドの伝手で腕のいい職人を紹介してもらい、数量限定で売り出すことで所有欲を満たすことも忘れない。


 さらに、売り出すものは物語とセットにした。


 例えば、林檎をモチーフにした髪飾りとネックレスとイヤリングの三点セット。

 流行の毒林檎を食べるヒロインの小説と合わせて学園で売り込むと反響が良かった。

 作者はセシリアが感銘を受けた物語の筆者と同じだ。


 あの作者の筆力で描かれるラブロマンスは女生徒を中心に圧倒的な人気を誇る。

 商売をするにあたり出版社を通して作者の許可をとった。


 作者は快くオーケーしてくれ、その上「がんばってください」とメッセージカードまで貰いセシリアは舞い上がった。


 本とアクセサリーのセットの売り上げがいいと、支援者であるアルフレッドに報告すると彼がどことなく嬉しそうにしていたのが印象的だ。


 他にも内陸の王都では珍しい魚の子供を主人公にした物語と雑貨のセットも評判がいい。

 魚モチーフのものを身に着けるのは難しいだろうと雑貨をチョイスしたら、意外と男子生徒の評価も高かった。


 聞き取りを行ってくれたアルフレッド曰く「さりげない小物ならば日常遣いに抵抗が少ない」と教えられた。


 アリア商会の商品は最初は学園を中心とした小さなブームだったが、休養日に帰宅した令嬢や令息たちが家族に自慢したことで広がりを見せ、一か月後には社交界を巻き込んだ一大ムーブメントを巻き起こした。


 ああでもない、こうでもない、と考える日々は楽しい。

 新しい商品を取り扱うときは必ず出資者であるアルフレッドに許可を取るのだが、彼もまた楽しげに忌憚のない意見をくれた。


 そうやって過ごしていれば、二人の仲が親密になるのは当然だった。

 セシリアはアルフレッドに淡い気持ちを抱いていることを自覚したが、あえて蓋をして隠し通した。


 アルフレッドは彼女が「面白いから」付き合ってくれているのだ。

 恋心を伝えて「面倒な女」になれば、離れていくと確信があったのだ。


 キャロルは着実に成功への道を歩むセシリアを妬んで、様々な邪魔をしてきた。


 わざとらしく新商品を人前で「こんなに壊れやすいなんて!」といいながら壊したり「あの商会の商品は子どもっぽいわ」と悪評を流したり、挙句正面切ってセシリアに「お義姉様なんかの事業が成功するはずないでしょ!!」と怒鳴ってきたり。


 だが、その頃にはもはやキャロルの言葉を真に受けるもののほうが少なかった。

 皆無にならなかったのは、キャロルの男性人気の高さと彼女がヴァネット伯爵家を継ぐは自分だと昔から豪語していたこと、家を出る気満々のセシリアがそれらの訂正をしなかったからだ。


 とはいえ、流行を作り出すセシリアと彼女の妨害に躍起になるキャロルを見ていれば、周囲も察するものがあるのだろう。


 徐々に彼女から人は離れていった。

 愛らしい、と容姿を褒めていた取り巻きも減っていき、とうとう婚約者ジョージまでもがキャロルに見切りをつけセシリアに取り入ろうとしてきたのだ。


「セシリア、君の手腕は素晴らしいね。先日の新商品を母上にプレゼントしたんだが、好評だったよ」

「ありがとうございます」


 放課後、図書館で息抜きの本を探していたときに背後から声をかけられた。

 猫なで声でそんなことを言われても相手がジョージだと嬉しいとは思えない。


 最近キャロルの癇癪が酷くなっていて、それはジョージに雑に扱われているせいだともっぱらの噂だというのに。


「ヴァネット伯爵家は当然君が継ぐんだろう?」

「さあ、どうでしょうね」


 最近、実家から顔を出せとしょっちゅう手紙が届く。

 セシリアの成功を知った両親が掌を返しているのだ。


 休養日も寮に籠って屋敷に戻ってはいないが、今までとは違ってキャロルを後継に、という話が遠ざかっていることは理解していた。


 適当にはぐらかしたセシリアは、ジョージを一瞥もしない。

 興味がない、と明確に示しておかなければならないからだ。彼はあくまでキャロルの婚約者である。


「セシリア嬢は婚約者がいなかったね」

「それがなに……!」


 ダン! と本棚に押し付けられる。強かに額を強打してしまった。

 驚いて振り返ると、顔が笑っていないジョージの目がぎらぎらと欲に光っている。

 小さく悲鳴を上げたセシリアに、ねっとりとした声がかかった。


「僕はね……伯爵家の当主になりたいんだ……!!」


(それで、キャロルと)


 ジョージはダーヴィン伯爵家の令息だが、三男だ。

 よっぽどの問題がない限り、長男が家督を継ぐこの国では、次男や三男といった立場の男児は武功を立て新たな爵位を賜るか、娘しかいない家の長女に婿入りするしか当主になる道はない。


 元々、キャロルのことを愛してはいなかったのだろう。爵位目当てで近づいて、彼女の立場が危うくなれば簡単に捨てて乗り換えようとする。


 吐き気がした。


「……最低ね、貴方」

「そんなことをいっていいのか? 優しくできなくなるぞ」


 捕食者の目をしてジョージが嗤う。だが、セシリアは慌てることはない。

 図書館で待ち合わせをしているからだ。姿が見えなければ探してくれると確信している。


「チッ、可愛げがない」

「可愛げはキャロルが持っているわ」

「減らず口を――っ!!」


 言葉が途中で途切れ、ジョージの姿が視界から消える。正確に言うと、横に吹っ飛んだ。

 目を丸くしてジョージが飛んで行ったのと反対側を見れば、眉間にこれでもかと皺を寄せたアルフレッドが立っている。


 彼こそがセシリアが待ち合わせをしていた相手だ。

 突き出していた右足を降ろして、床に転がっているジョージを睨む。


「伯爵家の三男の地位すら失いたいか」

「なっ」

「失せろ。私は機嫌が悪い。二度と姿を見せるな。次に視界に入ったら――なにをするか、わからないからな」


 うっそりと凄みのある笑みを浮かべるアルフレッドにジョージが逃げ出す。

 そこまでしてくれると思っておらずぽかんとセシリアが見上げると、彼は不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「不用心だ。忠告はしたはずだぞ」


 最初の頃に注意するように言われていた。セシリアは小さく首を傾げた。


「待ち合わせをしていましたから。気づいてくださると信じていました」

「……はぁ。まったく、君という奴は……」


 乱雑に前髪をかきあげ、ため息を吐く。

 アルフレッドに手を取られてついていくと、彼は図書館を出ていつかと同じ庭園のガゼボを目指しているらしい。


 庭園の中を歩いていると、風が長く伸ばした髪を揺らす。

 頬を撫でる気持ちのいい風に目を細めていると、アルフレッドがぽつりと呟いた。


「卒業パーティーは、どうするんだ」


 半年後に迫った卒業パーティーでは、令嬢は令息にエスコートされるように求められる。

 婚約者を探す意味をもつ学園での結果をみせろ、という意味だ。


 この期に及んで将来の伴侶が見つかっていないものの方が珍しく、売れ残りは白い目で見られてしまう。


「どうしましょう。商売に夢中になっていたんです」


 パートナーをみつけなければ、と思っていたけれど思いのほか商会の仕事が楽しかったのだ。

 このまま家を出て商会で身を立てるのであれば、無理に伴侶を探す必要はないと思いっている部分もある。


「……私がエスコートしよう」

「いいんですか?!」


 思わぬ申し出に声が跳ねる。

 嬉しいと感情を隠さなかったセシリアの前で、アルフレッドが足を止めた。


 くるりと振り返った彼の表情は、いつもの笑みがない。

 怒っている様子でもなく、ただどこか困惑しているようだった。


「アルフレッド様?」

「私、は」


 ざあ、と風が吹く。

 アルフレッドがなにか口を開いたようだったが、言葉を拾えなかった。


「アルフレッド様?」


 どうしたんですか、ともう一度問う。

 彼はまっすぐにセシリアを見つめて、もう一度口を開いてくれた。


「――君は本当に見ていて飽きない。傍で一生観察をしたい」

「あら」


 予想外だし、なんだかちょっとずれているが、紛れもない愛の告白だ。

 彼へ好意を向けてはならないと自分を律していたが、告白されたのであれば話は違う。


 本当に、夢のような展開だ。物語のヒロインになったようですらある。

 アルフレッドなりの精一杯を感じ取って、くすくすとセシリアが笑うと彼はむくれたように口をへの字に曲げた。


 そんなところも愛おしいと思ってしまうのだから、恋は盲目とよく言ったものだ。


「でも、いいんですか? 学園を卒業したら、多分、私はそんなに面白くなくなりますよ?」


 噛みついてくるキャロルとも距離が取れるし、両親に絶縁を告げれば彼の望む「面白さ」が無くなってしまう気がする。


 心配からつい余計なことを口にしてしまった。だが、大切な確認だ。

 面白くないからと婚約を結んだあとで捨てられてはたまらない。


「そうは思わないな。君のころころ変わる表情を見ているだけで飽きないんだ」


 目を細めて愛おしげに言われると心臓が妙に跳ねて身体が火照る。

 つい視線を逸らしたセシリアに影が差す。

 つむじに柔らかな感覚が触れて、咄嗟に頭を押さえてしまった。


「本当に、私のことが好きなんですか……?」

「お最初からそういっているつもりだ」


 どうして伝わっていないんだ、と言わんばかりの台詞にセシリアは困ってしまう。

 面白い女でなくなっても、傍にいていいのなら本当に嬉しいのだが、不安が残る。


「なにやら疑われているようだが、私は好意を持たない相手の手助けなどしない」


 きっぱりと言い切られると、心が軽くなった。セシリアは微笑んで「よろしくお願いします」と頭を下げる。

 そっと抱き寄せられて、二人の唇が重なった。






 アルフレッドと婚約者になって、あっという間に半年がたった。

 卒業パーティーの日、アルフレッドにエスコートされたセシリアと違って、キャロルは一人だった。


 ジョージにエスコートを拒否されたらしいと周囲は噂している。

 アルフレッドに脅されて以来、彼の目に入らないようにしているらしいので、その一環だろう。


 キャロルに対し少しの憐憫を感じたが、同情されても余計に惨めなだけだろうとあえて声はかけなかった。


 なにより、キャロルにばかり意識を配っていられなかったのだ。

 卒業前の最後のチャンスにアリア商会と伝手を持ちたいという令嬢や令息の相手で手いっぱいだった。


 キャロルもここまでくると騒ぐだけ自分が不利だと察したのか、睨んではきたものの表立って騒ぐことはなかった。


 パーティーも無事に終わり、夜半になってから「最後のショーは特等席で見たい」というアルフレッドを連れてヴァネット伯爵家に戻る。


 一足先に帰宅したはずのキャロルは自室に閉じこもっているらしいが、今までセシリアを冷遇していた両親は手のひらを返して二人を出迎えに玄関まで来た。


「アルフレッド様もご一緒でしたか……! 我が娘は私たちに婚約のことを話してくれず、困っていたのです」


 照れ屋なのですよ、と笑う父の目はアルフレッドを値踏みしていた。

 不快だろうに表情に出すことなく飄々と笑っている彼の隣で、セシリアは凛と背を伸ばす。


「貴女の商会の商品、今後はもちろんわたくしを優先してね。貴女の母なのですから」


 傲慢な台詞を放つ継母にも笑みを崩すことなく、セシリアは学園で叩き込まれた淑女の礼を披露する。

 優雅なその所作に両親が驚いたのが気配で伝わってきた。


「私、セシリアはヴァネットの名を返上いたします」

「なに……?」

「なにをいっているの?!」


 ドレスの裾を摘まんでいた手を降ろし、下げていた頭を上げる。

 背筋を伸ばして事態を把握できていない父と、声を荒げた母を冷たく見据えた。


「いままでどうもありがとうございました。この家で受けた仕打ちを、一生忘れることはありません」


 要らない子、邪魔な子供、不必要な姉。

 たくさんのレッテルを張られた。


 母がいたにもかかわらず外で女性を囲った父を許さないし、既婚者だと知りながら財産の誘惑に乗った継母も許さない。


 結果生まれたキャロルに罪はないとしても、彼女の今までの言動は許せる範囲を超えている。

 目標としてきた言葉を吐き出して、セシリアは優美に微笑んだ。


「私は自由に生きます。もう二度と、この家とは関わりません」


 凛と言い放ったセシリアに呆気にとられていた父が怒鳴り返してくる。


「どういうつもりだ! ヴァネットの名がなくして、侯爵家の妻が務まるものか!!」

「ああ、その点はご心配なく」


 アルフレッドがいつにない冷えた声を発した。セシリアの腰を抱き寄せて、彼は優雅に笑う。


「彼女の商会の力は強大だ。我が家としてはそれだけで十分だと父のお墨付きをもらっている。むしろ――」


 笑っていた表情が抜け落ちる。

 ひっと継母が小さな悲鳴を上げる程度に、いまのアルフレッドの表情は冷酷なのだろう。


「邪魔な虫がいなくなって助かりますね」

「なっ!!」

「では、そういうことで。手続きに後ほど家の者を寄越します。――いこう、セシリア」

「はい、アルフレッド様」


 背後で喚く父を放置して二人は屋敷を後にし、馬車に乗り込んだ。

 馬車が動き出して暫く。ずっと肩を震わせていたアルフレッドに、セシリアは小さく笑って許可を出す。


「もういいですよ」

「ふ、はははは!! あの間抜け面! 意味を理解した直後の真っ赤な顔! 最高だ!!」


 腹を抱えて笑い出したアルフレッドにセシリアは肩をすくめた。

 そしてなんでもないことのように、言葉をかける。


「よい創作の刺激になったでしょうか」

「ああ、本当に! ……え?」

「気づかないとお思いで?」


 セシリアを奮い立たせたあの小説も、彼女が商会で扱った物語も、全部アルフレッドが書いたものだ。

 糾弾ではなく事実を確認するセシリアに、珍しく呆けた表情をしていたアルフレッドが誤魔化すように咳払いをする。


「ごほん。……いつ気づいたんだ?」

「違和感は最初からあったんです。だってあの物語の主人公は、あまりに私にそっくりだったから」


 セシリアの境遇を丸っとそのまま小説に落とし込んだようだった。

 だからこそ、彼女は勇気づけられたわけだが。


「それだけか?」


 少し情けなく問われて、セシリアは軽やかに笑う。


「私が頂いたメッセージカード。女性らしい文字を意識されたのでしょうが、アルフレッド様の手癖が残っておりました」

「……やっぱり敗因はそれだよなぁ」


 がり、と頭を掻いてアルフレッドは拗ねたように窓の外を見る。


「手紙をくれた読者に、代筆で返事なんてしたくなかったんだ」


 あの時、セシリアは商売の許可を求めるだけではなく、熱烈な感想も一緒に送ったのだ。

 便箋で実に二十枚を超えた大作の感想だった。


「ふふ、真面目ですね」

「私は結構真面目なんだよ」


 あえてふざけた調子で肩をすくめたアルフレッドに、ころころと笑いながらセシリアはずっと疑問だったことを問いかける。


「でも、どうして私を物語の主人公にされたんです?」

「セシリアだけじゃない。あの学園の生徒は結構モチーフにしていた。……でも、そうだね」


 窓の外から視線を戻して、アルフレッドの真摯な眼差しがひたとセシリアを見つめる。

 その瞳の奥に甘い恋の色を見てとって、セシリアの頬に朱が昇る。


「君に、立ち上がってほしかった。だけど、言葉では届かないだろうと思っていたから」


 本が好きなのは知っていたから。そう続けられて、セシリアの胸に熱いものがこみ上げる。

 あのとき、きっとどんなに言葉を尽くされてもアルフレッドの言う通りセシリアに響いたかは怪しい。

 だからこそ、小説という形をとって伸ばされた救いの手だった。


「ありがとうございます。……私、いま、幸せです」


 物語のラストで、家族との縁を切ったヒロインである主人公は伴侶となったヒーローに問われるのだ。

『君は今、幸せか?』と。そしてヒロインは『私、いま、幸せよ』と答える。

 物語になぞらえたセシリアの言葉に、アルフレッドは僅かに目を見開き。そして。


「『そうか、よかった』」


 物語の中と同じように、微笑んで答えてくれた。



読んでいただき、ありがとうございます!


『いままでどうもありがとう~虐げられた令嬢は下克上を試みます~』のほうは楽しんでいただけたでしょうか?


面白い! 続きが読みたい!! と思っていただけた方は、ぜひとも


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― 新着の感想 ―
なろうだと割と枷になりがちな似た境遇の小説が人生を変える素敵アイテムなのが新鮮でした。あと、おもれー女扱いに確認と突っ込みをいれるとこも。
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