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死蝶町  作者: 谷樹 理
3/7

第三章

 ショットガンの二発はハズレ、姿をくらませた二人に紅琵は舌打ちした。

「……あーあー、また派手な……それよりここは何?」

 麻諷が呆れるように、脇に現れる。

「まだこちらをまともに認知してくれてないんでね。ここは……」 しだれた枝から、頭上に行く千もの枝をつけた巨木を二人は見上げる。

 浮かせた顎はそのままに、紅琵はショットガンをカバンに納めてから口の解電子タバコを指で挟み、口を隠した。

「……多分、中央演算機の役割を担ってるシステムだ。樹、か。独特で面白いものを使ったな。水気を吸い上げる木気、五行か。中々できているじゃないか」

 楽しそうに半ば説明に、半ば独白を吐く。

「五行って?」

「『木は土を克し』『土は水を克し』『水は火を克し』『火は金を克し』『金は木を克す』」

「うち等、排除そうだけどねぇ」

「モノ好きは、そう拒絶したりはしないもんだ」

「情報体は情報が欲しい?」

「そういうことだな」

「エロいなぁ。距離感わかってなくてキモイ。こっちが排除したいわ」

 嫌そうに麻諷は眉をしかめた。

「それじゃあ、飯が食えねぇんだよ、こっちとしては」

「最悪だ。餌になる気分を味わってもらいたいね」

「餌ならちゃんと大物に食われろよ?」

「あんたの溺死を希望する」

「希望するだけならすればいい」

 煙の奥で表情の読めない紅琵は吐き捨てる。

 麻諷は、大樹に顔を向けたままの紅琵に中指を立てる。

「……で、壊す?」

 彼女は大樹のほうに向いた。

「……そうさせるわけにはいかんなぁ」

 樹々の影から、布を顔に垂らして隠し、首に幾つもの珠をぶら下げて錫杖を持った男が現れた。

「……ほぅ」

 紅琵は、顎を浮かせたままサングラス越しの目をやり、小さく声を上げる。

 情報では地下衛星を統べている久鴨衆という連中だ。

「化生が現れ笹路來眞を殺したと聞いたが、貴様らか……」

 久鴨衆の男は、一歩踏み出してきた。

 巨木が根から小さな光を吸いだし、広がった枝の端まで拡散させたのを、麻諷は感じた。

「……好んでこっちに来るとは、物好きな連中だ」

 紅琵は腰の裏から二十二口径のリヴォルバーを抜き、シリンダーを脇に出して弾を確かめる。

 麻諷は腰の梵字が書かれた布の札を一枚、引きちぎった。

 途端、彼女の内に大きな渦のような流れができ、意識が巻き込まれる。

「行け」

 隣にいた紅琵が、麻諷の薄い胸にリヴォルバーを一発放った。

 人の形を保っていた麻諷は、その瞬間、解放されたかのように、長い爪をもち、太い尻尾に流れるような耳の異形と化した。

 ため込んでいた、異形の一つの姿である。

 ズボンの下の太くなった脚が大地を蹴り、一瞬で久鴨衆の眼前まで跳ぶ。

 振り下ろした腕が、反射的に向けられた錫杖を外側に弾いた。

 そのまま麻諷は通り抜けるようにしつつ、膝蹴りを腹部に喰らわせた。

 久鴨衆の男は唸ってよろめきつつ、身を丸める。

 苦悶の様子を見せつつ、錫杖の石突きを大地に刺す。

 大樹の中に反応が起こった。

 頭部の細かな飾りが鳴り響き、その背から丸い顔の太い腕を持った普通の人の四倍はある巨大な姿が現れる。

「ぬら坊主、というのか……いいね、オリジナル。こちらも改造してあるが」

 紅琵は解電子タバコを吸った煙を吐きながら、声なく笑う。

 彼の頭の中で何か機械的な音がカチリと鳴る。

 電気の軽い痺れが全身に走る。

 ふと、自分の手のひらに目を落としてから、大樹を見上げる。

「認識されたようだ……」

 ぬら坊主の腕が麻諷に振られる。

 踵を手の甲に置き、低い姿勢でそのまま肩に足を置き、もう片方の脚でぬら坊主の顔面を蹴った。

 凄まじい打撃に、硬質的なものが割れる音がした。

 バチバチと、ぬら坊主の身体のあちこちから火花が散る。

 紅琵はリヴォルバーを久鴨衆の男に向けた。

「おまえはおまえで化けの皮剥がしな、そろそろ」

 引き金を引く。

 弾丸は久鴨衆の右胸に当たる。

 それは解呪の力を持っていた。

 久鴨衆の男は、途端に身体にひびが入り、爆発するかのように蝶の群れになった。

 ぬら坊主もかき消えていた。

「はい、役目終了」

 淡々と、次に獣化した麻諷に、三発目の弾丸を見舞う。

 順番通りだ。

 麻諷は身体を縮ませ、膝を崩して顔面から土の地面に倒れた。

 






 扶等兆錠(ふら ちようじよう)は梵字の書かれた布で顔を隠した人々が円座を組んだ中で、一人顔を晒していた。

 まだ若い。

 二十二歳。

 細い眉に髪は蒼く染められ、目がやや大きく、小さな口に髭を生やした顎が細い。幼げだが、静かな悟ったような雰囲気があった。

「町に化生が侵入して、我らの仲間が一人、消滅させられた」

 一人の男が言った。

 重大な問題だ。

 兆錠は思った。

「……で、この責任をどう取るおつもりか、衆長?」

 彼は口に出した。         

 薄暗い場の空気がかたまる。

 輪の中の変わらない一人が、重く黙る気配を醸し出す。

「我が町に久鴨衆というものを組織しながら、化生の侵入を許した挙句、その組織された人間を一人死なせた。これでは、我々そのものが供物のようだ」

「供物とはなんという言い方!」

 一人が怒鳴る。

 容赦なく兆錠はその男の喉を錫杖の先で突いた。

 くぐもった音を鳴らし、男は後ろに倒れる。

「私は衆長にお尋ねしているのだ」

 冷ややかにゆっくりと錫杖を脇に収める。

 息をのむ音が数個鳴った。

 布越しの視線が、一人の男に集中する。

「……兆錠の言い分、最も。だが、我らに他の選択肢は無い。我らはメクロメの意志に従うのみ」

「地下衛星十三号はどうなる?」

「アレはいずれ、メクロメと合する」

「……聞いたか、皆よ。我らは、メクロメのモノらしい」

 兆錠が笑うように言うと、数人がいきり立つ。

「どういうことか!? 我々は地下衛星十三号が接近してくるのを迎えるのが役目ではないのか!? メクロメは最初から我らの問題ではなかったはず!」

「合したときにあの巨龍を地下衛星十三号が乗っ取る」

 衆長は静かに断言した。

「……それでいい。あとは、侵入した化生だ」

 兆錠が頷き、問題を提示する。

「放って置け」

 衆長が重々しく言う。

「そういうわけにはいかぬ!」

 兆錠は声を張って続けた。

「我らが町に娘と童の化生が現れた。それは、我々久鴨衆に仇なした。隠としての鬼とも報告があった。一体、何を放って置けというのか! しかも娘は鬼ではない。町に憑りつく祟り神とみた!」

「地下衛星が合するのが先決だ」

「笹路の來眞師が犠牲になった。そしてもう一人。何を黙っていられるというのか!」

「それ以上言うなら、兆錠よ。我ら久鴨衆としての約を破る者と見るぞ?」

「結構。私は化生と祟り神を追う。文句は言わせない」

 一瞬、場が静まった。

「……なら好きにせい!」

 衆長は吐き捨てる。

 兆錠は立ち上がった。  

「化生の次は、御方々だと思っていただきたい」

 彼は席を立ち、夜中の道に姿を消していった。







「なんで家に帰ったら駄目なのさ?」

 悠は憮然としていた。

 街灯のついた、河原の上の道だった。

 ここまで、悠は早紗に手を引かれていた。

 早紗はガードレールに座って、夜気に空を眺めていた。

 サテライト・コミューンの主星である衛星をである。

「鬼が来るよ」

 ボソリと応える。

「あのへんな格好の人?」

 早紗は頷いた。

 悠は頭をかいて茫然とした。

「……じゃあ、俺はどこに行けばいいんだ?」

「今はまだ、決まってない。ただ、危ない所へは行けない」

 淡々と応える早紗に、悠は溜め息を付いた。

 ガードレールを軽く蹴る。

「どうすんだよ、もう」

 意外とあっさり納得していた。

 カムロの姿が所々に見える。

「大丈夫だ。君はわたしが守る」

 ふわりと、後ろから早紗が抱きしめて来た。

「うわぁ!」

 驚いて悠は、そこ両腕の中から飛び出した。

「何? 何、何、何、何!?」

「どうした?」

 書面から小首をかしげて来る早紗に悠は、顔を真っ赤にして黙った。

 なんだ?

 突然、どうして抱きしめられた?

 早紗は何を考えてる?

 悠は、戸惑いながら「いや、なんでもない」と答えて、俯いた。

 あの表情で淡々としていながら、距離感が近い。

 そういえば、距離が近い。

 なんだ、この女の子は?

 河の流れが涼やかに鳴っていた。

「ちょっと、降りる」

 悠は宣言するように、道路から河原に移動した。

 上から覗くように、早紗が見守る。

 スニーカーで雑草の中を踏み、街灯で照らされた流れを前に、考える。

「……ねぇ、俺が遭った事故ってどんな?」

「気になるの?」

「そりゃ、自分のことだし!」

「聞いて何の得があるの?」

「これからどうするの?」

 悠は核心をついた。

 頭上から、早紗の姿が消えていた。

 突然、背を押される。

「うわ!?」

 次の瞬間、両肩を持たれて、河に落ちそうになる悠の身体を固定された。

「うっそでーすー!」

 振り向くと早紗だった。

「危ないだろう!?」

 早紗は、この時初めて笑顔を見せた。

 人を驚かせておきながら、爆笑しているのだ。

 悪戯っ子。

 悠は呆れて思った。

 この状態でも悪戯してくる早紗の根性がわからない。

「……これからね、地下に逃げるよ」

「地下?」

「まぁ、地上と地下を行ったり来たり」

 悠は少し考えた。

「……それって具体的にどこに行くため?」

 早紗は真顔で首を傾げた。

 おい、と声が出そうになる。

 決まってないのか。

「どうしてあたしにそれを聞く?」

「あんたが、逃げる先を用意してくれてるもんだと思ったからだよ!」

「一言も言ってない」

 軽く両手で口を隠すジェスチャーをする。

 だめだ、これは自分がしっかりしなければ。

 悠は心に決めた。

「……で、事故の話を教えてよ?」

「仕方ないなぁ」

 早紗は悠の隣にしゃがんだ。

「今年の四月二十五日、午後八時二十二分。通報で君の家を確認した警官により、君の父と母が死んでいるのが発見された。もう一人の住居者、西鹿悠の姿はなく、そのスニーカーが片方だけ、玄関に裏返って置かれていた。目撃証言によると、白い車が何度か家の前を通っていたらしい。以上だ」

「何それ、じゃあ、今の俺は?」

「メクロメの枝から、君の死ぬ前に絡んでた要因の枝を取って折った。あの木の枝は、人生も象徴する。君は死ぬときに死ぬことがなかった状態にある。わたしには、癌のような、メクロメに伸びだした死の枝を取り払う役目がある」

「俺は殺されたってこと? その原因を排除したから、生き返ったけど、排除しちゃったから原因がわからない?」

 早紗はニコリとした。

「正解」

「しかも、母さんと父さんも殺された……」

 恐怖なのか、怒りなのか、悠の身体は小刻みに震えだした。

 早紗が優し気に腕を肩に回してくる。

 抵抗できなかった。

 悠は、その場で泣き叫んだ。


   





「アレイを打ち込んだが。彷徨ってるな。まぁ当然だろうが」

 温泉の帰りに麻諷と合流して、変えた宿に戻った二日目の昼だった。

 方位盤がメクロメの大樹の方角を指し、天測儀がサテライト・コミューンの衛星を捕らえている。

 方位盤も天測儀も対象を解析している。

「ねー、なんでメクロメの木、破壊しなかったの?」

 麻諷は椅子に座り、なんとなく聞いた。

「アレは破壊しちゃダメなやつだ。メクロメはこの町そのものと言っていい。そんなもんが壊れたとなっちゃ、何が起こるかわからん」

「だからって放って置くの?」

「介入はする。そのための解析だ」

「なるほどねぇ」

 二十二口径で撃たれた傷はもうどこにもなかった。

 テーブルの端に、一枚の神が置かれていることに二人が気付いた。 麻諷が手に取ると、「笹路來眞殺害ご苦労。郁玖詫総合警備会社に気をつけることだ」と書かれていた。

「なんか冤罪なんですけど?」

 麻諷が白けた雰囲気で、紅琵の目のあたりで揺らす。

 乱暴につかみ取り、一読すると、紅琵は丸めてゴミ箱に放り込んだ。

「良心的なやつもいたもんだ。一々、出てけと言ってくる」

「面倒臭いには変わらないじゃん」

「こういうことしてくる奴が意外な勢力って、良くあることだよ。あんまり無視してたらどんどんやり方が酷くなってそれでも無理なときは排除される」        

「割りに相手にしてませんが?」

「相手にしてたら俺の仕事がなくなる」

 方位盤と天測儀の解析を眺め、紅琵はしばらく無言だった。

 彼のサングラスがさまざな情報を視覚から脳に送り込んでいる。

「なるほど、メクロメは何故大木か……」

 やがてぽつりとつぶやいて、彼は荷物をまとめだした。

「どうしてさ?」

「明らかに、龍を使いやすくカスタマイズした結果だろうな」

「なにそれ、そんなことできるわけ?」

「五行の水気を木気に閉じ込めたんだ。果たして巨龍、巨木となりぬ」

「何のために?」

「中央演算装置だっていたろう。この町の為だよ。行くぞ」

「あー、さっき帰って来たばっかじゃん」

「俺たち本来の場所に向かう」

 紅琵は聞いていなかった。


 





 地下道の充実ぶりに、悠は驚いた。

 町に暮らす者がどれだけ、ここを知っているかわからないが、少なくとも悠は初めて来た。

 空調は完璧で、暑くも寒くもなく、息が苦しいこともない。

 明かりは昼間の日差しのように強く、足元はコンクリートの上からリノリウムが張られ、両サイドには、露店商や部屋を造って商業スペースとしている者、そのまま住んでいる者など、多様だった。

「地下は久鴨衆の利権だから、余り来たくはないんだけど地上は今煩いだろうし……」

 早紗は無表情ななか、やや、緊張した面持ちをしていた。

「……考えてたんだけど、早紗はどうして俺を助けてくれるの?」

 なんだかんだ言いつつ、早紗は揚げ物の露店売りの前に立っていた。

「んー、それはねぇ……」

 肩が当たるか当たらないかの距離で、早紗はカニクリームコロッケを手に、中身が垂れないように被りついた。

「君だけが、歐木町の封じられた古龍を開放することができるからだよ」

「……何それ?」

 悠は突然の話に、怪訝そうな顔になった。

「君が死んだ時刻に戻れば、龍の拘束は一時解ける。死が否定された時は、全てが否定されて解放される時だ。時空の歪というか、なんかそんなやつ」

「最後適当すぎない?」

 冷めた様子の悠の首に腕を回し、早紗はニヤリとした。

「……そんなやつ、なんだよ」

 わかった風に圧を掛けて来たけど、実はわかってないな、この子。

 悠は確信した。

 ということは、彼女を動かしている存在があるということだろう。

 自分でもそれぐらい察せられる。

 突然、ワンフロアの通路の明かりが消えた。

 慌てる周りの中、悠は平然と直立不動だった。

 その目は、両脇から、顔に梵字を描いた布を垂らした、二人の男が、錫杖から仕込み刀を抜いてこちらに構えていた。

「見つけたぞ、化生!!」

 白刃はサイドの店の明かりで輝いている。

 悠は逃げ腰になった。

「ヤバくない?」

「ヤバい。あたしは乙女だから、悠より喧嘩弱いぞ?」

「自慢してる場合じゃないだろ!?」

 弾かれるように、悠の手をもって早紗は今来た方向に走りだした。

 久鴨衆の二人は、上半身を固定しながら駆けて追ってくる。

 突然、ショットガンの銃声がした。

 悠が振り返ると、久鴨衆の一人が、胴体をミンチにしながら吹き飛んでいた。

 もう一発で、残った久鴨衆の頭が爆発した。

 帽子にサングラスを掛けて、解電子タバコを口にした巨躯の男が、片手に変わった形のショットガンを伸ばし、通路に出て来た。

 その後ろに、左側に三つ編みを垂らしたショートカットの少女がついていた。

「止まれ、そこの二人」

 悠は慌てて走った。

 早紗が転んだ。

 嘘!?

 ここで転ぶとかあるかと思いつつ、手を引かれて一緒に倒れる。

 ブーツがこめかみの側の床を踏んだ。

「……ちょっと頼みがある。宿に案内してくれないか?」

 煙を吐きながら、巨躯の男が低く言った。

「……誰だあんたら?」

 気丈にこの状態で悠は挑発的に言った。

「龍に用がある者だ。おまえらが依る、巨木でもいいかな。別に痛くするわけじゃねぇから安心しなよ、坊やと嬢ちゃんよ」
































第四章 

 窓の外は相変わらずの晴天だった。

 これだけ強い日差しだと、すぐまた雨の予感を持ってしまう。

 比微はぼんやりと思った。

 そして、すでに読んでいた次羽良葉理作成の企画決裁書にサインした。

吉田兼俱(よしだ かねとも)ねぇ」

 どうでも良さそうなつぶやきだった。







 そこは廃屋だった。

 ここまで来るのに、時折カムロの姿があった。

 早紗は悠と紅琵、麻諷を連れて、狭い空間に入っていた。

「キキド様の間だ」

 彼女は言って、雑然とした廃屋の割りに埃がまったくない部屋の隅のパイプに腰かけた。

 各所で電気の小さな火花が散る。

 あちらこちらの廃材の物陰から、黒い平べったいモノがぬぅ、と何枚も立ち上がる。

『……我らが娘が迷惑を掛けているな』

 声が響く。

 悠はふと、思いだした。

 町の噂をだ。

 この歐木町に祟る少女のことを。

 思わず、パイプに無表情で座る早紗を見る。

 こちらに全く関心を持たず、上の空だ。

 少し腹が立ったので、彼は据わった目にしたまま手を振ってみる。

 視線もやらず、指先一本だけが、それにピコピコ動いた。

 悠は、なんだそれ? と息を吐く。

「……何だあんたら、電磁場の固形物か? 珍しい姿をしてるな」

 紅琵は解電子タバコを咥えたまま、サングラスに指をやりつつ、言った。

「……煙い」

 脇で、彼を鬱陶しそうに麻諷が一言吐く。

『我らは、大龍メクロメの残基。言う通り、電磁場そのもの。我がメクロメが巨大な稲妻でもある故に。早紗を護るのが我らが役目。それで、迷惑を掛けていると言っている』

 紅琵の指が止まる。

 麻諷も、何度か瞬きをした。

「……もう一回言ってもらおうか? 何だって?」

『ウチの娘はこう見えてもしっかり者だ。いささか悪戯者だがな。あとはよろしく頼んだ』

 薄っぺらい漆黒の塊は、そのまま元の物陰に引っ込もうとする。

 紅琵はそのうち一つの端を安全靴のつま先で踏みつけた。

「ちょっと待て……」

『何をするか!? 濡れておるではないか!? 大体、そのタバコ苦手なのだ!』

 火花を散らし、漆黒の塊はのたうった。

「あのさぁ、なんか勝手に決められてませんこと?」

 しゃがんで木の棒をとり、麻諷はキキドの一体を突きまわした。

『ここに来たなら、もう決まったようなものだ。おい、煙』

 影は観念したようにその場に立ち上がった。

 紅琵はしぶしぶ、解電子タバコのスイッチを切る。

 麻諷を見下ろすように影は伸びた。

『早紗はこの町では祟り神と言われている。一部、メクロメとリンクしているところのある娘だ。その子がおまえたちをこの場に合わせたということは意味がある』

「やはり、そいつは死んでいるか……町に入った時の悲鳴はおまえか?」

 紅琵はパイプの上の少女に目をやった。

 彼女は無表情で目を返してくる。

「……君の領域に入った時に、悲鳴が上がった。ようこそと言わんばかりにな」

「そんな仕掛けは知らないけど、ありうる」

 当の早紗は他人事だ。

「……いや、感じからしたら、この子がぴったり」

 感覚過敏な麻諷が請け負った。

 死んでいる?

 悠は改めて内心驚いた。

「……何で早紗は死んだんです?」

 彼は誰にともなく尋ねた。

「……死んだのは四月二十五日。頭部殴打ののち、滅多刺しにされている」

 データを読むように、紅琵が言った。

 これで、彼女の死は「確定」された。

『その時に、メクロメに取り込まれた』

 キキドが補足するように言う。

「じゃあ、この今の彼女は?」

 悠は納得いかないかのように再び声に出す。

「人間、七回は死んでみないと本当の人間とは言えない」

 早紗の言葉は無視されて空を流れた。

『メクロメのネットワークがつくる、有機物。走り根の一つ』

「メクロメのネットワーク?」

 聞き捨てないと、紅琵が喰いつく。

『あの大樹は、他の樹々の根や枝と繋がり、町中に一つの情報体を造っている。歐木町の本体と言っていい』

「つまりは、メクロメが死ぬと、早紗は?」

『消滅する』

 悠が聞くと、キキドは即答した。

『ただ、皆はこの別個のメクロメとは別に意志を持った存在を祟り神とするがな。メクロメの悪いところがこの子のせいにされるのだ。仕方あるまい』

「メクロメ側からの浸透はないのか?」

 紅琵が指摘する。

『無いとは言えない』

 これもすぐに帰って来た言葉だった。

「……俺たちは、ここで人隠しの話を聞いて来た」

『メクロメに取り込まれた者は、この町にとって本当に姿を消したと言えるかどうか疑問だな。なんならメクロメが消されかねない状況だというのに』

「なるほど……」

 思い当たる節があるという様子で、紅琵は煙を長く吐いた。

「神隠し? 死んだ? どっち?」

 悠が改めて聞く。

「両方だ」

 キキドの代わりに紅琵が答えていた。

『問題は、早紗を祟り神として排除しようとする動きがあることだ。だが、それは始まりに過ぎないという話だ』

 キキドが補足する。

「あーあー、その話なら渡りに舟だ。うち等が何とかするよ」

 麻諷が勝手に話をつけようとする。

 紅琵はそれに口出ししなかった。

「……最終的にもめ事がなくなりゃ、やりやすい」

 ボソリと呟く。

 早紗はその間、やや離れた位置にある窓から外を眺めていた。

 三階からの景色は、角度から言って地上まで目が届かない。

 しかし、異常を察知するのには十分だった。

 空気が騒めくのだ。

 樹々の間から、彼女に情報が入ってくる。

「……客が増えたけど、あまり良い客じゃないなぁ。出来れば、即刻おかえり願いたいねぇ」

 彼女は他人事のように言った。

 悠と紅琵がその視線の先の窓に近づき、外を見る。

 黒いRV車のバンが、十台近く、この建物の周りに集まっていた。

 その側面には、郁玖詫総合警備の文字が白く描かれている。

 黒い目だし帽を被り、防弾チョッキを着た男たちが、明らかにゴム弾のショットガンとハンドガンをもち、隙間を埋めていた。

「おいおい、これは無いだろう……」

 流石に紅琵も眉をひそめて、苦々しく煙を吐く。

「郁玖詫総合警備会社!? 町の警察じゃん!」

 悠は驚く。

「郁玖詫総合警備会社の一人は、久鴨衆の幹部がいた会社だ」

 早紗が言葉を加える。         

「あー、あの逆さづりになった人!」

 麻諷は思いだした。

「それ」

 早紗がうなづく。

「冤罪っすよ、マジで……」

 麻諷は溜め息のような息を吐く。

「どっちにしろ脱出しないとなぁ。あと、色々あるから坊ちゃん嬢ちゃん達とは、地下で合流しようか?」

 紅琵は麻諷の腰の布で出来た札を一枚剥がし、自分の胸元に張り付けた。

「あたしも行こうか?」

 早紗が無表情で言う。

 パイプの間から化粧ポーチを出す。

 どうやらそこが彼女の定位置らしい。

 悠が驚いたが、紅琵は少女を見下ろして鼻を鳴らした。

「面白くなりそうだ」

 紅琵はニヤリとした。   

  

  





 葉理の乗るバンは、多層建築物の正面に展開した車と部下たちの中間にあった。

 笹路來眞が死んで以来、葉理は自由に行動できるようになっていた。だが、まずは來眞の事件だった。

 來眞の死を追っていくと、町に新たに現れた二人組が完全に怪しいとなっていた。

 幾枚かの写真から、池袋にある怪しいNPО法人の関係者だということは確認できた。

 黄天載という名だが、調査の手を入れようとして、吉田神道に関係があるところまでいった途端、都議からの横槍が入って来た。

 あまり関わるなと。  

 通常ならここで手を引いているところだが、町唯一の治安維持組織であり、警察とはまた別という立場の彼は、俄然やる気を起こした。

 手元には、來眞が残した久鴨衆のネットワークがあった。

 葉理は部下たちに命じ、二人組を密かに追っていると、この建物に入ったと報告が来た。 

「威力による制圧と犯人とおぼしき者の確保」

 彼は会社の実力行使部隊を率い、そう命じた。

 入口から、小さな少女らしい姿が現れた。

 顔を炭のようなもので乱雑に塗られている。やや大きめのシャツにショートパンツ、腰からフリルのついた細い布を垂らし、右手に長めの鉈を持っていた。

 その後ろには、巨躯で帽子を被り、サングラスを掛けてワイドパンツにコートを着た男が、両手に弾倉が横に付いた短いショットガンを両手にぶら下げていた。

「祟り子……」

 警備会社の男たちの誰かから、声が漏れた。

「相手は武装しています!」

 葉理の指揮車の元に報告が入る。

 念のため、葉理は郁玖詫総合警備会社の外郭団体としての葛香会という集団も連れてきていた。

 彼等は警備会社と違い、実砲を持ち、法の外の威力を持っていた。

 当然ながら表面での関係は無いことになっている。

 葛葉会の若頭は、葉理の指揮車の中の脇にいて、静かに、だが不気味な沈黙で今までの様子を眺めていた。

 ダークスーツに黄緑のシャツ、ウエーブを掛けたややボリュームのある髪をしている。

「あんたらの出番かもな」

「……あんな気のおかしい相手をさせられるなんてまっぴらですよ。

こっちの武装は、相手が武装してない事前提にしてるんですから」 ニヤニヤと、返してくる。

「役立たずと言われて構わないのか?」

「今看板だしてるのは、おたく方ですしねぇ」

「出張ってきてるのは、あんただよ、然馬(ぜんま)さん」

「場合によりますわ。ウチは顔出しただけ」

 葉理は男との会話を打ち切った。

 流れで巻き込んだ方が、早いと判断したのだ。

 いきなり、空気が破裂するような轟音が鳴った。

 続いて、ゴム弾の銃声が連続する。

「男が撃ってきました。各員、対応しています」

「撃って来ただと!?」

 葉理は眉をしかめ、バンから降りた。

 コートを着て帽子にサングラスを掛けた巨躯の男が、ゴム弾を喰らいながらも平然と両手に一丁ずつもったショットガンをこちらに喜々として撃ち込んでいる姿が、彼の目に飛び込んできた。

 バンが一台、爆発を起こす。

 ショットガンの餌食になった警備員が数名、路上に血を流しながら倒れている。

 まるで地獄絵図だ。 

「然馬!」

 葉理はどっと沸いた汗の中、バンに振り向いた。

「……酷いもんだですけど、ありゃ囮でしょ。狙いのやつらはどこ行ったんです?」

 然馬は脇のドア口から渋い顔を向けて、言った。

 葉理は舌打ちする。

「いいからあいつを仕留めろ!」

「言質、取りましたわ」

 然馬は携帯通信機を取り出して耳に当てると、一言だけ何かつぶやいた。

 騒然としていた建物の全面で、新たに実包の銃声がそこらから響いた。

 紅琵の身体が震え、一歩下がるが、弾倉付きショットガンの引き金は引き続けていた。

 そのたびに、警備会社員の頭部は吹き飛び、胸に穴が開いている。

 銃弾が紅琵に集中した。

 最後に然馬の配置していたスナイパーが、彼の頭を後部に弾いた。

 帽子が舞い、解電子タバコが落ち、サングラスが割れた。

 紅琵はゆっくりと、後ろに倒れ込んだ。







「……ありえないだろう……」

 その声の時に、紅琵は意識を取り戻した。

 救急車用の担架の上で、身体がベルトで拘束されている。

 場所はどこかの部屋で、薄目の視界は蛍光灯の光りが強い。

 これは力ではどうにもならないとわかり、彼は大人しくそのままでいた。

 耳だけをそばだてる。

「血はでているが、弾痕は一か所もない……」

「バラせとは言われたけど、コレ何? 物理的な接触が出来ないよ?」

「稀成よ、おまえプロだろ?」

「だからコレさあ、ウチの専門じゃないって」

 渋めの年配の声に、若い声がのらりくらりと返している。    然馬の管理する一室だった。

 そばにいるのは、伊馬稀成だ。

「僕は残飯の処理機じゃないんだよねぇ。残飯喰らってるあんたらには悪いけど」

「旨い飯にしてやろうって言うんだよ。皮肉はやめろ」

 葉理が脇から軽く叱る。

「……よそ者だよ、完全に。僕じゃ手に負えない」

 稀成はつまらなそうに断言する。

「……逃げる気じゃないだろうな? おまえはウチらの管理下にあるの、忘れるなよ?」

 然馬が鋭い目をよこす。

 稀成は面倒臭そうだった。

 そういうところだよ、と小さく息を吐きながらつぶやきつつ、顔に手を触れながら、葉理に助けを求めるように向き直る。

「コイツは気が小さいから勘弁してやってくれよ、然馬」

 軽く笑いつつ、稀成を援護してやる。

「で、よそ者ってどういう意味だ?」

 葉理は続けて尋ねた。

「この町のやり方じゃ対処できないタイプだよ。ウチら、メクロメから逃れられないでしょ?」

 その言葉に二人は不機嫌そうに黙る。

 途端、部屋中につんざくような悲鳴が上がった。

 蛍光灯の光が消え、室内は暗闇と化す。

 ドアが蹴破られて、小柄なモノが飛び込んできた。

 差し込む微かな明かりのなか、棒状のものが振られて、くぐもった音と共に、何かが倒れる音がした。

 担架から体重のかかった大きな影が、ドア口に駆けだす。

 一瞬の出来事だった。

 静かになったあと、再び蛍光灯が部屋を照らし、床で頭を押さえている然馬と物陰に潜んでいた稀成が素早くドア口をチェックする。

「……何なんだよ」

 痛みを悔しがるように然馬はぼやきに似た声を出す。

 担架を見た葉理は、そこに拘束していたはずの男の姿が消えているのを知った。

 そして、稀成の姿もなくなっていた。







「はい、六キル。いぇーい」

 携帯ゲーム機をもち、麻諷が歓喜の声を上げる。

「……大人げない!」

 少し離れたところの悠は同じゲーム機を放り投げて、悔し気に叫んだ。

 新しい宿の一室だった。

「……楽しそうだな」

 無表情に、早紗が部屋に立っていた。

 脇に、帽子を被りながらも裸眼の紅琵がいた。

「あー、早紗聞いてくれ! この人、ゲーム強いけど、ホントに容赦ないんだよ! 射線に入った途端撃ち殺される!」

「ヘタだからじゃね?」

 麻諷が取り付く島もない言い方をする。

「あー、面白かった。あとは任せたわ」

 彼女は携帯ゲーム機の電源を切って、伸びをするとそのまま畳の上に寝転がった。 

「……気楽でいいなぁ」

 紅琵は、コートの下の呪符を取って捨てた。

 弾が当たらなかったのも、身体に物体を差し入れなかったのも、それのおかげである。

 宿は地下にあった。

 地上では限られていたが、地面の下の町は意外と活気に満ちている。

「……撒けなかったけど、仕方ないか」

 早紗は何でもない事のような独白をする。

「面白いもんだな、この地下は」

 コートの下に背負っていたカバンをから、紅琵は新しいサングラスを取り出して掛けた。

「あー、なんかさあ、死臭が凄いんだわ。ここら辺」

 麻諷が鬱陶しそうに言う。

「メクロメ等の根が伝う空間だ。根の国ってあるだろ?」

「あるねぇ」

「五行に当てれば土気にある。わからんが言葉が土気と水気のものとすれば、黄泉の国というところか。水気とか、龍にふさわしい」

「黄泉ね。それは臭うはずだわ」

 麻諷は横に目をやって頭を掻く。

「勝手に殺すな」

 早紗が気にした風でもなく言った。  

「てか、地下にこんなところあるって初めて知った」

 悠が今更ながらな感を出す。

「知らなかったのか?」

 紅琵は興味深そうに聞く。

「まったく」

「ほぅ……」

 紅琵は、畳の上に置かれたテーブルの側に座った。

 早紗は、ガラスの張られている窓の近くに位置取る。

「たしか、地下衛星があったはずだが?」

 彼は早紗に言葉をやった。

「……ある。普通に」

 少女は、淡々と答える。          

「何基だ?」

「十三基。うち一基は元々あった物じゃない。ここの連中が造ったものだ」

 紅琵は空笑いして見せる。

「何もかも勝手にやってくれるものだ。お陰で俺が苦労する。俺がな」

 妙なところを意地のように強調するが、誰もその点を相手にした様子はなかった。

「十二基って普通じゃないの?」

 麻諷が促すように、口にする。

 彼の愚痴が鬱陶しかったようだ。

「今の都市の御空の上なら普通だな。ただ、ここみたいな小さい町で地下に十二基と一基追加は大仰で異常だ」

 隠れ町として、独立しているのなら正直何でもありでもありそうなので、紅琵は一般論にとどめた。

「……サテライト・コミューン世代の遺物か」

 一人納得する。

「黄天載が喜びそうなネタよね。こういう土地買って改造して転売してるんだから」

 皮肉気に麻諷がニヤリとする。 

「ああ、あの連中もこういう土気が大好きだからな」     「他「人事みたいにいうねぇ」

「俺は属詫だから」

「NPОからお金貰うゴロというね」

「その通り」

 紅琵は新しい解電子タバコを咥えた。   

 ブーストのかかった煙が吹き上がる。

 目の隅で早紗を伺った。

 明らかに、彼女がこの町の鍵を握っている。

 悠はそこからの派生と見るのが正しいようだった。

 ともかくも、二人を放すわけにはいかない。

「飯は?」

「あー、腹減ったなぁ」

 麻諷に悠が答える。

「そろそろ用意されるはず」

 早紗が感情の無い声で反応した。

 麻諷はふと、早紗が美味そうに御飯を食べるところを想像してから、実際どうなのか見てみたいと興味がわいた。

 視線をやられたが、早紗はまったく気にしない風で座っていた。








 稀成は、紅琵らの宿を確認すると、地下空間の別の一画に姿を現していた。

 そこは一種の神社にも見えるが、境内に寺院のある場所だった。

 管理事務所空中に入ると、事務的な部屋と生活感丸出しの部屋が続く中に、一人の青年がソファで和綴じの本を読んでいた。

「やぁ、兆錠。久鴨衆は元気?」

 青年は顔を上げて、表面、いかにも薄っぺらそうな稀成に目をやった。

「……おまえか」

 短くってから、日本酒を入れたお猪口に手を飲まして舐めるようにする。

「よそ者、どうしたもんか」

「化生か。俺がぶち殺す」

 口だけで反応しているが兆錠の語気は鋭い。     

「あー、できる?

 稀成は遠慮ない。

 兆錠も気にした風はなかった。    

「迷ってたんだが……一つ方法がある」

「へえ……」

「メクロメを使って、肉体を強化するんだがやってみないと自己の意思がどれぐらい保てるか確証がない」

「……他人でやれば?」

 言われた兆錠は、思わず顔を上げた。

「……ふむ。なるほどな」

 彼は納得した様子で、深くうなづいた。

「吉田神道というものを知っているか?」

「吉田兼俱とか言う人が自分が認めたものが神道だと主張して神道の主流になったとしか知らないなぁ」

「そのとおり。いわゆるごった煮だ。そしてそこからの流派が多数派生して、今の歐木町のメインシステムの根幹にある。我々久鴨衆は、それを使い、町を守る」

「衛星十三号のこと?」

「話が早いじゃないか。邪魔するなよ?」

「僕は処理屋だよ。あんたらが動いてくれないと何もする気はない」

「こうして俺のところに来てるじゃないか?」

「未処理のモノがあるからね」

 兆錠は鼻を鳴らした。 

「……近々、龍が昇る時期だ。久鴨衆はそれを阻止するだろう。関連して化生がどうでるのか。おまえらが処理できんというなら、やはり私がやらざるを得ないか」

 彼はやれやれと言う風につぶやいた。

「あんた、そのために久鴨衆抜けたんでしょ?」

 当然、わかっていたといった態度だった。

 兆錠は顎髭に手をやる。

「ここをよそ者にくれてやる気はなにからな」

 その言葉は、来訪者の目的を知っているかのようだった。

















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