第5話:老師ゼンと禁断の遺跡へ
ルミエールの朝は、いつもより熱かった。
地熱炉の区画で、バルドじい が鉄を叩く音が響く。
俺、カイトは、新装備 を受け取りに来ていた。
「カイト! 遅えぞ! これが、お前の初陣用 だ!」
バルドが差し出したのは――
氷鋼の短剣 と 地熱マント。
短剣は軽く、刃に青白い魔法回路が走る。
マントは芋の繊維とモグラの毛で織られ、地熱を蓄える 仕組みだ。
「す、すげえ……! これ、俺が!?」
「シルバーフロストの依頼だ。文句言うな!」
バルドの目が、どこか優しい。
俺は短剣を腰に、マントを羽織る。
配達屋 → 探索者見習い → 正式メンバー。
今日から、本物の冒険者 だ。
拠点に戻ると、シルバーフロストの三人が待っていた。
――そして、もう一人。
「カイト、遅かったな。」
ガルドの隣に立つのは、白髪の老人。
杖をつき、目だけが鋭い。
老師ゼン。
ルミエールの魔法灯りを管理する、伝説の魔法使い。
「ゼンさん!? なんでここに……?」
「ふむ。ガルドの頼みだ。お前に、魔法を教える。」
魔法!?
俺は目を丸くする。
配達屋の俺が、魔法を!?
「だが、条件がある。」
ゼンが杖を地面に突き、小さな魔法陣 を描く。
青い光が、俺の足元を包む。
「地熱の脈 を感じられるか?」
俺は目を閉じる。
――ドクン……ドクン……
足元から、温かい鼓動。
ルミエールの命、地熱だ。
「感じる……!」
「よし。基礎はクリア。
次は、実践 だ。」
禁断の遺跡への出発
昇降門が開く。
今日のメンバーは――
• ガルド(リーダー・魔法剣士)
• リナ(斥候・弓手)
• エルム(魔法使い・地熱操作)
• カイト(正式メンバー・見習い)
• 老師ゼン(特別顧問)
地上に出ると、風が唸る。
昨日より雪が深い。
視界は10メートル。
――禁断の遺跡 は、地下都市から北へ3キロ。
極寒の荒野を、徒歩 で進む。
「カイト、足元に気をつけろ。氷の罠 がある。」
リナの声。
俺は短剣を握り、地熱マント を引き締める。
30分後。
――遺跡の入り口。
崩れた石柱。
壁に、魔法大戦の紋様。
中央に、巨大な扉。
――封印されている。
エルムが杖を掲げる。
「封印は三重。
1つ目は地熱、2つ目は氷結、3つ目は……血。」
血!?
俺はハッとする。
――ローブ集団の目的。
「奴らは、設計図 を手に入れるため、
この扉を生贄の血 で開こうとしてる。」
ガルドの声が、低く響く。
ゼンが前に出る。
「開けるのは、俺たち だ。
だが、中は未知。
カイト。お前が、鍵 になる。」
俺!?
ゼンが俺の手に、小さな水晶 を握らせる。
「これは、地熱の結晶。
お前の鼓動 と共鳴する。
扉の前で、地熱を感じろ。」
扉の前
俺は扉に近づく。
水晶が、熱を帯びる。
――ドクン……ドクン……
地熱の脈が、俺の心臓 と重なる。
「開け!」
ゼンが杖を振り上げる。
ガルドが剣を、リナが弓を、エルムが地熱を――
――轟音。
扉が、ゆっくりと開く。
中は――
暗闇。
そして、無数の魔法回路 が、壁に光る。
中央に、巨大な機械。
――魔導兵器の心臓部。
「これが……設計図!?」
エルムが叫ぶ。
そのとき――
影 が動く。
ローブ集団の残党。
――10人。
「設計図は、我々のもの!」
リーダーが、血の入った壺 を掲げる。
――生贄の血。
「カイト! 水晶を!」
ゼンの声。
俺は水晶を掲げる。
――光が爆発。
地熱の結晶が、魔導兵器 に反応。
機械が、起動 する。
「な、何!?」
ローブ集団が慌てる。
――機械の目 が、赤く光る。
ゼンが笑う。
「愚か者め。
設計図 は、起動キー が必要だった。
――地熱の血 だ。」
俺の水晶が、機械に吸い込まれる。
――ガシャン!
設計図のホログラム が、空中に展開。
「やった!」
リナが叫ぶ。
だが――
機械が、暴走 する。
「警告。エネルギー過多。自己破壊シーケンス開始。」
機械の声。
「逃げろ!」
ガルドが叫ぶ。
脱出
俺たちは、遺跡を全力疾走。
背後で、爆発。
熱風が吹き、氷が溶ける。
――遺跡が崩壊。
地上に出た瞬間、
雪が舞う。
俺は倒れ込む。
短剣は折れ、マントは焦げている。
でも、設計図のデータ は、エルムの杖 に保存された。
ガルドが俺の肩を叩く。
「カイト。よくやった。」
ゼンが微笑む。
「お前は、地熱の息子 だ。」
地熱の息子?
――俺の出生 に、秘密が?
ルミエール帰還
ミオが、涙で迎える。
「カイト……! 無事で……!」
俺は、設計図のデータ を見せる。
「ミオ。これで、ルミエールは守れる。」
その夜、老師ゼン が、俺に告げる。
「カイト。お前の両親 は、魔法大戦の生き残り。
――地熱炉の設計者 だ。」
俺の目が、見開く。
――俺の過去。
――ルミエールの真実。
――地上の未来。
魔法の灯りが、静かに揺れた。
――次は、俺の出自と、地上の新天地へ。




