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第十九幕 獣帝同盟

 聖魔王国の軍は撤退し、砦には静寂が戻った。

 血と硝煙の匂いだけが、戦いの終わりを告げている。


 カリナは銃を下ろし、舌打ちを一つした。

「……結果的には、悪くない選択だったわね」


 その声に、最初の棘はなかった。

 先ほどまで「滅ぼした方が早い」と言い切っていた自分の言葉を、どこかで反芻しているようだった。


 ライサンダーもまた、斧を収めながら低く唸る。

「若いもんは、ここまで成長しとるんじゃのぉ…」


 それは独り言に近い呟きだった。

 だが、その背中には確かな戸惑いと、ほんのわずかな納得が滲んでいる。


 ヴァリスだけは、最初とはまた違う表情で晴翔を見ていた。

 ――否、正確には「団長より下、ではなく階級などただのお飾りだと気づいた」


(来た時と同じだ)


 帝国に現れたあの日。

 未熟で、どうせコイツもそこらの兵と同じく、すぐ死ぬだろうと思っていた。


 何度も選択の道を迫られる。それでも揺るがない目をした少年が、今も変わらずそこに立っている。


 力ではなく、理由を選ぶ。

 勝利ではなく、その先を見据える。


(団長とは、前に立つ者じゃない。

 “何を守るか”を示す者だ)


 ヴァリスは、そう理解してしまった自分に小さく息を吐いた。


 やがて、獣王国の兵たちに囲まれる形で、晴翔たちは王城へと案内される。

 警戒と困惑、そして感謝が入り混じった視線が向けられていた。


 獣王レオグラントとの対面。

 重い沈黙の中で語られたのは、復讐でも威圧でもなく、選択の言葉だった。


「……雷牙、ブルガロス。 我が国は二人の戦士を失った。怒りが無いと言えば嘘になる」


 それでも、と王は続ける。


「貴様は、敵を討つ力を持ちながら、手を差し伸べた。 ならば問おう、人の子よ。帝国は、我らを裏切らぬと誓えるだろうか」


王だけでなく、周囲の獣人たちも息を潜めていた。


俺は、緊張で震える唇を噛み締めて堂々と語った。

「敵は、聖魔王国です。 これ以上、獣王国と帝国が争う意味はありません」


 その言葉を、団長たちは背後から黙って聞いていた。

 

 誰も口を挟がない。

 それ自体が、晴翔を“代表”として認めた証だった。


 やがて王は立ち上がり、重々しく告げる。


「獣王国は、帝国と刃を収める。共に聖魔王国に立ち向かおう」


 同盟成立した。

 歓声が上がる中、カリナは晴翔の横顔を見て、ふっと笑った。


「……あんた、面倒な道を選ぶのが得意ね」


「でも、その道は……悪くないでしょ?」


 晴翔は緊張から解放された安堵と喜びで口調が緩くなっていた。


 こうして、獣王国との同盟が成立したのだった……。

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