第十一幕 帝国会議
帝国の領地である野原の少し盛り上がった丘。その場所から帝国の城を鋼鉄の角を持つ巨躯の三戦士の1人――武牛牙が仁王立ちしながら眺めていた。分厚い胸板を打ち鳴らし、爆弾のような声を響かせる。
「聞け! 我らが王国の勇士たちよ! 雷牙を討った帝国の犬どもに、我らの怒りを知らしめる時が来た! あの地に血を流し、我らの蹄で踏み砕け! 我らは獣王国の誇り、誰も我らを止められぬ! 」
戦士たちの鬨の声が轟き、地響きのように大地を揺らす。雷牙の仇討ちを掲げたブルガロスの言葉は兵たちの胸を熱くし、戦の炎を燃え上がらせていった。
――場面は帝国へと移る。
帝国城の会議室。重厚な扉の奥に、六つの椅子が並んでいた。そこに集ったのは、帝国を支える六人の騎士団長たち。エリナは遠征に出ているため戻ることはできず、代わりに晴翔がエリナの代理として一番端の席に座らされていた。
第一騎士団長グラディスは鎧を着込んだ豪胆な老戦士で、剣を杖のようにして何も喋らない。
第二騎士団長カリナは冷たい眼差しを向けながら、扇を軽くあおぎ、会話に入ろうともしない。
第三騎士団長 オルフェンは愛刀のナイフを研ぎ続けている。
第四騎士団長 ヴァリスは椅子を揺らしながら不敵な笑みを浮かべ、周りを挑発するように視線を巡らせた。
第五部隊長セドリックは姿勢を正し、他の団長たちの意見を聞こうと真剣に耳を傾けていた。
第六部隊長ライサンダーは身体がデカすぎるので壁に寄りかかりながら持ってきた肉をバクバクの食べている。
やがて口を開いたのはオルフェンだった。
「俺だけ出ればいい。知能がないあの牛が相手なら、速度はこちらが上回る」
ヴァリスが鼻で笑う。
「馬鹿か。正面からぶつかればあんな奴ら敵じゃねぇだろ。わざわざ策なんていらねえ。」
グラディスは沈黙、ライサンダーはまだ食べてるし、カリナは退屈そうに溜息をつき、話し合いはまともな作戦会議どころか、自由時間になっていた。
晴翔は耐えかねて声を上げた。
「ま、待ってください! もう少し考えましょう! 敵は獣王国の三戦士の1人です、エリナ団長のように作戦を練ってから、、」
しかしその声に、団長たちは冷ややかな視線を投げる。
「小僧が口を挟むな」
「お前に何が分かる」
その言葉に胸が締めつけられる。実力不足を突きつけられるのは、わかっていたことだった。だが悔しさと共に、胸の奥から熱が湧き上がる。
騒然とする会議室。その中で、セドリックが立ち上がった。
「皆、やめたまえ。――少し良いか晴翔殿」
セドリックは静かに彼の肩に手を置く。
「エリナ殿なら、こう言ったはずだ。『冷静に考えろ。口ではなく行動で全てを示せ』と」
その言葉に、晴翔の胸が打たれた。深呼吸し、思考を整理する。頭に浮かんだのは、これまで学んできた戦術の断片と、エリナの姿だった。
「……俺なら、こうします」
晴翔は立ち上がり、地図を指し示しながら団長の守って欲しい箇所を説明する。昔やっていた戦略ゲームを元に敵の進軍路、兵の士気を削ぐための時間稼ぎの内容。具体的で現実的な案に、団長たちも一瞬だけ息を呑む。
だが次に響いたのは、ヴァリスの嗤う声だった。
「おい小僧。なら――お前が今回の総団長をやってみろよ」
彼の眼光は鋭く、挑発の色を隠そうともしない。
「口で語るのは簡単だ。――俺たちを動かしたいんならお前が先導しろ」
先導……って、まさか俺が一時的に帝国代表になるのか!?
俺の動揺を隠せない表情を見て、ヴァリスは不適な笑みを浮かべながら部屋から出て行った。




