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6話 目標があってこその物語

 「案外異世界の風呂もいいもんだね。てか全然尻尾が乾かねぇ…」

 「少しあれでござるが、修学旅行のようで楽しいものでござるな」


 支給された真新しいパジャマのような服を着る友人の尾寺を前に、ドライヤーで尻尾を念入りに乾かしながら話をする


 お昼ごはんを貰ってから、僕らはこの世界の常識を簡単に教えてもらい、それから大浴場に案内された


 大浴場は室内型の古代ローマの浴場といった感じであった。天井が無いその浴場で星空を見上げることができ、さすが()()()()()王国と思ったよ

 当然だが、脱衣所から男女に分かれてたぞ?紳士諸君。異世界にスケベを期待するな。目ぇ潰すぞ


 浴場の見た目は昔っぽかったが、設備等は近代もいいところだ。ゴテゴテした見た目だがシャワーがあった。ボディソープもシャンプーもリンス―も用意されてた。しかも多分あれ結構イイやつだ

 脱衣所には妙にゴテゴテした見た目のドライヤーもある


 そう、この世界の文明レベルは中世ヨーロッパくらいかと思ったら結構近代的な世界だったのだ


 だけど、案外この文明レベルは妥当だ。先ほど言った説明を聞く限り、この世界は地球と同じような法則で動いているらしく、尚且つ数百年に一回程度地球からの転生者、転移者、召喚者が来るらしい


 結構長いスパンだが、長命種や寿命を延ばすアイテムがある世界である。そこらへんを考えると短いスパンと考えることもできる


 余談だが、この説明を聞いているときに現代知識チートという選択肢が無くなって頭を抱えるクラスメイトが何人か居た。なろう読者って案外いるんだな


 「設備が整っているのは、便利と捉えるべきでござろうな」

 「そうそう、便利なのは良いことよ。…よし、乾いた」


 先ほど聞いた話によると、獣人族にとって尻尾やら耳は結構大事な部位らしい。おいそれと他人に触らせえてよい物ではないらしく、己の象徴的部位らしい

 至極めんどくさいが、体が獣人になったからだろうか、やらなくちゃいけないものだと本能で理解している。…これ以外に言葉が見つからないな


 「それにしても… やはりこのドライヤーの動力は電気ではないでござるな。MPを使って動いてるのでござろうか? にしてはMPの値が減っていないでござるな…」

 「まあどう見たってコンセントに繋がってないからな」


 そうこのドライヤー、コンセントも電池もないのに動いているのだ


 「やはり錬金術でござろうか!? ヌフフフ… これは興味が尽かないでござるなぁ~!」

 「あぁ、尾寺は【錬金術師】になったんだっけ?」


 今更だが紹介を


 今現在このゴテゴテした見た目のドライヤーを興味深そうに観察している彼は、僕の友人である尾寺 錬久間(おでら れくま)

 一人称は「拙者」、語尾に「~~でござる」と言った特徴的な話し方をする銃器愛好家のオタク系男子とでも言おうか


 一癖二癖あるが、いい友人である


 「フムフム… サッパリでござる!」

 「だろうね」

 「ですが!ここから錬金術を学んでいくでござるよ! ゆくゆくは銃を作りたいでござるなぁ」


 まだ見ぬ銃火器へと思いをはせる尾寺をよそに僕は尻尾をといていく


 貰った尻尾用のブラシが気持ちいいんだよな




 「…【鑑定】すれば?」

 「!?その手があったでござるか!【鑑定】!」


* * *


 場所変わりここは食堂。集まって欲しいと呼ばれたためクラス全員で集まっている


 心里は当然僕の膝の上だ

 あれ? いつも学校とかではこういうの控えてたような……


 まあ、ええか。ホカホカして温かいなぁ


 「早速だがこれからの目標について話すぞ。休憩の合間を縫って来てるから時間がないんだ」


 各々適当に座りながら、先ほどお偉いさんの会議から帰って生きた内田先生の話を心里の尻尾をモフモフしながら聞く


 「まず、俺たちはアノーティス世界連盟公認勇者として邪神を完全に殲滅しないといけない。だから、一番の仕事は各地の…高難易度ダンジョン?ってところに封印されている邪神の欠片や、危険団体が所持してる邪神の欠片、危険性が限界突破してる魔物に吸収された邪神の欠片などを回収することだ」


 なるほどなるほど…邪神の欠片どもにとどめを刺して……ん?回収?


 ……まあ、結果は同じか


 「せんせー! 一番の仕事ってことは、別の仕事もあるってことですか~?」


 鳥のような羽を生やした女子のクラスメイトが質問する


 「そうだ。邪神の欠片を悪用する危険団体自体を解体するのも目標だ。その他にも、討伐されていない危険魔物の討伐も仕事だ。まあ、世界の治安維持への協力みたいなもんだな」


 つまり最優先の目標が邪神討伐。ついでに世界治安を維持するために、危険団体の解体も仕事

 ってことか


 「そこらへんが俺たち勇者の仕事だ。そのために一ヵ月ほどこの国で訓練を積む。その後さっき言った邪神の完全殲滅を開始する。 他に質問はあるか?」


 スッと、悪魔のような角を頭部から生やしたクラスメイトが手を挙げる


 「アノーティス世界連盟とはなんだ?」

 「んーとな、大体地球の国連と同じで、国際の平和と安全を維持することを目指す機関だ。俺ら勇者の上司的存在だと思えばいい。 他はあるか?」


 内田先生が見回すが、今の所パッと思いつく疑問はないようだ


 「それじゃあ俺は会議に戻るから早く寝ろよ。 はぁ…俺は教師のはずだったんだがな」


 そう愚痴をこぼしながら、内田先生は食堂から出て行った


 「ああそうだ。異世界系のテンプレとやらを俺は知らん。詳しいやつが説明してやれよ」


 ひょこりと顔だけ食堂に出して今度こそ内田先生は食堂から出て行った


 …そう言われてもなぁ


 困ったときの正純くんといった感じでみんなが正純くんを見る


 「あー…俺もこういうのは得意じゃないんだけど…」

 「そういうことなら任せてくれよ!」


 彼は龍田くん。種族を変える選択をしなかったのだろう。ノーマル人間であった


 「じゃあ蒼真お願い」

 「おう!賢治、只則!手伝って!」

 「クタバレ」

 「投げんの速すぎだろ」


 龍田くんが友人を召喚した!だが本人たちからは不評のようだ!


 「えーと…何から話せばいいと思う?」

 「知らん。自分で考えろ」

 「おめぇが自分で取ってきた仕事だろーが」

 「うーんテンプレっつてもなぁ… みんな異世界系のアニメとか漫画って見たことある?」


 龍田くんがクラスメイト全員を見回しながら聞く


 「ないよ~」

 「しらねー」

 「聞いたことはあります」

 「興味ないから知らないわ」

 「見たことはないね」


 どうやら知っている民は少数派のようだ


 「じゃあ、異世界あるあるトラップから説明しようかな」

 「トラップというと、洗脳やら契約隷属やらか?」

 「まあ定番だな」

 「そ、そんな不穏なことが定番なのかい?」

 「ああ、定番も定番だ」


 訝しむ正純くんを横目に様井くんが うんうん と頷く

 ちょっと具体的な作品名はわからんが、設定的によく出てくるのは僕も知っている


 あっちょっと心里さん急に尻尾触らないで。事前申告してくださいよ


 「例えば…契約魔法とか契約書とかを使ってこっちを奴隷同然に使い倒してくる王国とかはテンプレだな」

 「え?そんな悪い人たちには見えなかったけど…」

 「まあ、決めつけはよくねぇけど演技は絶対入ってるよな」

 「えー怖すぎー。対策はあるのー?」

 「不用意に契約書に名前を書かない。言質とられないように気を引き締める。だな」


 中身をよく読まないで著名とか最悪…あれ?


 「そういえば契約書にもう著名してなかったかしら?」


 どうやら屑川さんも僕と同じ疑問を抱いたようだ


 「あれ?そういやそうじゃん。…や、やばくね?」

 「…?そうか?あれは必要な契約書だったろ」

 「そうだぞ。あれは必要な契約だった。もっと考えて言葉を発せよ」


 そう…だよな!ありゃ必要な契約だったよな


 「…只則は何言ってるの?あれは、必要な契約……だよね?修」

 「なーんか引っかかるけど、あれは必要な契約だったと思うよ」


 うんうん。必要な契約必要な契約


 「仮山!何言ってんだよ!あれは必要な契約だったんだよ!」

 「いやいやいや!み、みんな内容覚えてる!?俺覚えてないんだけど!」

 「?別に内容なんて関係ないだろ?あれは必要な契約だったんだって。落ち着けよ」

 「そ、そうか…?そうかも… ごめんなんか混乱してたっぽい」


 仮山くんは苦虫を嚙み潰したような顔で頭を抑えているが、何をそんなに焦る必要があるのかよくわからないな


 「しっかりしろよ~。まあ、とにかく安易に契約とかしないようにしようぜ!ってことだよ」

 「あとよくわからない装飾品等のプレゼントも要注意だ。【鑑定】なんて便利機能があるんだ、積極的に使え」

 「気を引き締めないとだね。他にはあるかな?」

 「他は……クラス召喚のテンプレで行くと、無能の烙印を押された奴が後から覚醒するとかか?」

 「あるあるだな!」

 「【偽勇者】がなんか言ってら」


 そこからはただの雑談になっていき、結局戻ってきた先生からお叱りを受けるまでクラスみんなで食堂で駄弁っていた




 「心里動かないでね。っとこれでおっけ」

 「わお…!尻尾きれー…!」

 「でしょうでしょう。僕はこういうの器用よ」



――――――――――――――――――――――――――――――

TIPS 邪神の欠片(概要)


 高Lvの者でも近づくだけで意識を失うような邪気が溢れる意思持つ物体。神気や聖気を強く纏う者――勇者など――であれば破壊も容易であろう

 一体幾つあるかはわからないが、その多くは高レベルダンジョンの最深部に封印されている

 破壊した者は破滅を迎えるという噂があるが、あながち間違いではない。元が 雖牙ヲャ に狂った 蜻ェ陦鍋・ である。呪いのしっぺ返しが無いとは言い切れない


 当然だが何度も破壊は試みられたが、単純に破壊ができなかった事例や邪神の欠片が持つシステム外の力に魅了され破壊を邪魔される事例、潜んでいた頃の無償の終焉教団による強奪、邪神による認識阻害…

 などなどの要因が重なり、未だ数えるほどにしか破壊がされていない


 いやはや、これでも破壊できている方だと私は思うがね

――――――――――――――――――――――――――――――

TIPS アーティファクト〈勇者回線〉


 勇者たちの持つスマートフォンを主神ファーオンが勝手に作り替えたもの

 アノーティスの主なエネルギーは魔力であるため、必然的にスマホは使うことができない。まあ結果的にはよいのだろうが、確実に中のデータはおじゃんである

 そこらへんを主神ファーオンに追及しても

「どうせ使えないのだから別によいだろう」

 と言うであろう。……いや今はどうかな


 効果としては

 ・〈勇者回線〉を持つ者同士での電話

 ・本人識別機能(本人以外使用不可)

 ・特別な状況下を除きどこでも使える

 ・使用者のMPをほぼ使わないも同然の量で使用可能

 ・不壊

 などである


 破格の性能ではあるが、無許可で改造したことはどうかと私は思う

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TIPS 獣人族の尻尾(概要)


 獣人族にとって尻尾や耳などの獣由来の部位は神聖なものである

 人族で言うと、性器に例えられるような扱いと言えばいいだろうか?少し違うが大体こうだろう。…多分

 幼いうちは親が洗ったり手入れをするが、成長していくと自然と自分で手入れ等をしたりするようになる


 まあ、扱いは人による(部族にもよる)。街中を歩いていれば誰かに尻尾が当たってしまうように、大体の獣人は尻尾に当たるくらいだったら気にしない。人によっては、仲間へ尻尾で軽くはたく、ちょっと触っただけですごく怒るなんてのもあるくらいに千差万別である。だが、とてもおおらかな獣人でも、尻尾や耳の付け根を触られることは嫌がる

 尻尾や耳の付け根は敏感な所であるため、本当に信用している人にしか預けないものである


 だが、毛づくろいも本来は自分でするべきものであるが、最近は獣人用グルーミング店なども出てきており、毛づくろい程度であれば任せるのもいいのではないか?という風潮がある

 老害(昔の文化を守る者たち)はこういった風潮をよしとしていないようである


 ちなみに、こういった常識は獣人になった勇者に自動的にインストールされているようだ

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