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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

愛猫からの置き土産〜いや転生するとか聞いてない〜

神様は割とテキトーに転生させる。

 

 生まれ変わりは信じていなかった。

 宗教なんて犯罪や事件の温床の元だし、仏教や神教は詐欺の元。

 信じられるのは己のみ。


 


 そんな無宗教なオジさんバツイチは新型感染症で孤独死した。




「ワシは神じゃ起きんかい!」

ダミ声の神様に無理矢理起こされる。


「どちら様ですか?眠いのですが」


「偶々お主の近くを通り過ぎた際にワシ咳こんでしまっての。ワシの神型ウィルスに感染して死んだのじゃ。想定外での、スマンが転生してもらうぞ」

「いや、そちらの都合では無いですか、このまま眠らせてください」


「お主が生前飼っていたキリコと言う名の猫おったじゃろ」

 確かに飼っていた。

 名前を呼ぶと鳴く賢い猫で35年生きた。


「確かに飼っておりましたね」

「彼奴から頼まれたのじゃ、死んで身体が固まるまで撫でてもらった恩を返したいそうじゃ」


 律儀な…

「いや、だから僕は…」

「撫でると発動する癒し手を左手に宿した。右手は悪魔を遠ざける。上手く使うのじゃぞ」


 いや、だから眠いんですって。

ボケてますか?聞こえないフリですか?


真っ白な空間の中に飲み込まれていく…。





△△△△△△△△△△△△△△△




今より召喚儀式を執り行う!


馬鹿デカい声で神官が叫ぶ。

次の瞬間、ズゴゴゴッッッと塔が揺れた。


さァァァァァァァと光が魔法陣の中から漏れ出すように光り出す。


そして、サァァァァァァァと光が収まるとそこには少女達が驚いたように空を仰いで座り込んでいた。



「えっ?ちょっとココどこ?」


亜麻色の髪をした少女が言う。


「ああ!召喚儀式だったのね!」


茶色の髪を揺らしながら叫ぶ少女。


2人の少女はそれぞれの反応を見せた。


「そうだね、君たちはこの世界に召喚された聖女様だよ」

太陽のような笑顔を少女たちに向けているのは、この国の第一王子ハインリヒだ。


「やっぱり!あなたは王子様なの?」

「そうだよ、君は動じないね」

「だって漫画やアニメで見ていて憧れていたから嬉しくて!」


「…」

その様子を苦い顔で見ている亜麻色の髪の少女。


2人はその後、別々の道を歩き出す。




△△△△△△△△△△△△△△△





…暗い、目が開かない。


ドーンッッッ!

意識が戻ったのと同時にかなり響く音がした。


「懲りずに砦の門を破城槌で叩いてきたか」

「魔法師の結界魔法で防いでおりますが、結界が破れても門が頑丈ですので…」


「憐れな奴等だ」

「長子ミリアム様は拘束魔法行使時の負担過多で意識を失いかけております」


「無事なのか?」

「魔力そのものは使い切ってはおりませんので…」

「拘束魔法を使うたびにコレでは…先が思いやられるな」


ふと気づくと音が止んだ。


バタバタと兵士が砦内の執務室に入ってくる。

「報告いたします!敵軍は沈黙、拘束され身動きは取れません」

「そうか…1人は拘束を解き、自国へ報告に走らせよ」

「はっ!」


「アイリーンは何処にいる?」

「はっ!、お子様とご一緒に見張り台で見学されています」

「長子の嫁の方が肝が据わっとるなぁ」




この世界でリュウジンが建国したリュウジン族唯一の国、リュウジン国。


リュウジンとは龍の神の末裔と言われ、人間種では無敵の存在として認知されている。


それ故に妬みや僻みの対象となりやすく、名を上げようと攻めてくる国もある。


まったく相手にはならないのだが、その相手の愚かさを後嗣に伝えるため、後継に戦場を高台から拝ませると言うアホらしい慣習がリュウジン国にはある。


 リュウジン国国王グランダムは息子であり長子のミリアムとその妻、アイリーンとその息子キリアを砦に呼び寄せた。


ミリアムには敵兵士の拘束を。

アイリーンはキリアに戦争と言うものを見せる。


と言う課題を出した。戦いそのものは余裕である。

 

リュウジン国側が本気を出して戦争を行えば相手の国が更地と化すのは目に見えているのだ。


戦力も相手の国から1万人出兵してきても100人に満たない人数で対応する。


「結界も必要無いが、門を破壊されて門番が反射的に攻撃して死なれても困るしのぅ」

国王は顎髭をいじる。

 

「キリア様は爆睡しておりましたな」

軍団長がこともなげに言う。


 数十年に一度の周期で不作や豪雪で飢饉が起こるのだが、何故かその度この国に攻め込んでくる。

 

だいたい飢饉の周期が分かってるのなら対策すれば良いのにわざわざ異世界から聖女を呼び寄せる召喚術式を行い、豊穣の儀式をさせると言う。


「今回は呼べなかったようだのぅ」

「以前成功したのは300年くらい前でしたか。魔王が復活するとかで勇者とかも一緒に召喚されましたな」


 リュウジン族は長生きだ。個体によっては万単位で生きる。だから生き証人が結構存在する。


「魔王はその前に召喚した勇者だったかのぅ」

「ええ、強大な魔力を持つ魔族を討伐した後、その力に怯えた当時の王に暗殺を仕掛けられました。が、生き残り呪詛を吐き魔王と呼ばれる魔族の王になった…バカですな」


「魔王復活を唱えたのも生き永らえていた聖女でしたな」


 正に繰り返す悪循環。

 300年掛けて元に戻る。

 まったくもって馬鹿な話だ。

 

そして今回も聖女を呼ぼうとしたけど、星の巡りが合わず中断されたらしい。


 飢饉は数年続いた。


 それでも人間はしぶとい。なんだかんだ生き残った。


 そして年は巡る。

 ちなみにリュウジン族の成人は50歳だ。

 


 キリアは転生者であるが、ハッキリと自覚するまで3年掛かった。


 その頃から神童扱いされ、語学や数学は専門家たちが舌を巻いたほど。


 料理にも口を出し、母子で新しい調理法や魔法を使った調理器具のような魔導具も開発した。

この世界は食べ物に無頓着でキリアは幼心にガックリしたものだった。



 5歳のとき、癒しの魔法を発動させた。自分の不注意で母親が火傷した際に急に発動した。何も無かったように痕も残らず癒してみせた。


 10歳のとき、不慮の事故で片足を失った天馬を何事も無かったかのように元に戻した。


 12歳のとき、命を落とした流浪の旅人に生命を戻した。


 15歳のとき、呪われた聖獣の呪詛を一身に受け、5年の年月を使い調伏した。その際に右手に悪魔ルシフェルを宿す。


 その右手の甲には紋章が刻まれた。

 悪魔を遠ざけるための右手が導き手になった瞬間であった。


 そして20歳で左手に神を宿し、堕天したルシフェルに真なる導きを与えた。


 祝福と呪詛を陰陽、表裏一体として魔法陣に転写し瞳に宿した。

そしてキリアは成人を迎える。


「この世界に馴染みすぎだよなぁ、僕ってもっと慎重だと思ってたのに」

 

自重せずに50年経っていまさらである。



△△△△△△△△△△△△△△△




 召喚された異世界の少女たちは…………。


「詩音はどうするの?私は残って欲しいって王子様に言われちゃった」


 茶髪の15歳の山口美咲はそう言った。


「美咲はそれでいいの?」


 亜麻色の15歳、結城詩音は難しい顔をしている


「だってもう戻れないんだよ?日本に。だったらイケメンと一緒にちやほやされた方がいいじゃん」


 あまりのストレートで考えなしの言い分に辟易した詩音は美咲の部屋を黙って出ていった。


 美咲には治癒魔法が使えた。非常に希少な魔法である。怪我や骨折などの治癒は出来た。


 だが、重度の怪我や病気、精神障害には対応できず痛みを緩和する程度しか出来なかった。


 詩音は癒しの魔法だった。切り傷や裂傷などの修復を得意としたが、それ以上の能力は発揮出来なかった。


「やはり美咲様の方が素早く回復するな。痛いのも軽くなるし」

「癒しよりも治癒魔法の方が上なのではないか」

「…詩音様が通られるぞ、私語は慎め」


通路を歩くと周囲の心無い囁きが耳に入る。


 最初の印象から城内の人々には美咲寄りの態度が目立った。


 明るく朗らかな可愛い少女と無表情でニコリともしない少女。

 

詩音は召喚されたときに思った。


 『これって誘拐だよね。なんなの?ラノベはフィクションだから許せるけど、実際に仕向けられると犯罪者の集団じゃない!こいつら!』 


 怒り心頭だった。


 「ワタシは癒しの魔法しか出来ません。同郷の美咲が治癒魔法が使えて豊穣の聖女の可能性もあります」


「豊穣の聖女とは中々の知識ですねぇ。君は残らないのですか?この国に」


 魔法省の大臣サミュエルが嫌味ったらしく聞いてくる。


「あなた方に便利に使えるのは美咲でしょう?ワタシよりも確実にあの子ならそちら側に…」


「皆までは言わなくてもよろしいですよ。自分はどちらでも良いのですがね」


 ニヤリと笑いながらサミュエルは立ち去った。


「気持ち悪いヤツ」


 王城内を歩きながらメイドたちの囀る話し声に聞き入ると、詩音は戦争と言う言葉を耳にする。


「近々リュウジン族の国に戦争をしに行くらしいわよ」

「あの国は農作物をこちらには決して流通させないからねぇ」

「流浪の民には分け与えるんでしょ⁈偽善よね」

「私たちを悪者にしたいだけなんじゃないの」

「分け与えるほど食料があるなら、こちらにくれたっていいじゃない」

「私たちと違ってリュウの血が入って、ちょっと強いからって偉そうにして欲しくないわ」


 詩音の中で疑問が湧く。


 流浪の民、つまりは国を追われて避難してきた人々だろう。その人たちは人間の国から追い出されたのでは無いのか?


 流通させないけど流浪の民には分け与えているのは…追い出した人たちに流通させない理由の一つでは無いのか?

 

 リュウの血が入っているとは何なのか?


「これはリュウジンの国に行けば現状が分かるかもしれない」


 城下に降りると魔法省のお偉方に言ったら、目立つとこちらも困るから…と言って認識阻害を付与した外套を渡してくれた。


 美咲が居るのでワタシには割と干渉して来ない。


 召喚された後に多少の金銭も与った。


 情報を得るために城下町を彷徨った。


 途中お買い物中の女の子の肩に当たったが、女の子の驚く顔が印象に残った。


「凄いな、このローブ。人にぶつかるまで気付かれない」


 そのあとも子供にぶつかったりしたが相手はビックリしてキョロキョロしたあとボクを見つけられず不思議な顔して立ち去った。


ぶつかってもすぐにその場から離れると見つけられないらしい。

 

 流浪の民が集まる炊き出しをする場所を見つけた。


 意外に小綺麗な旅人に近寄り聞き耳を立てた。


「こないだ森で獣魔に襲われてよう、死んだかと思ったらリュウジンの街で目が覚めてよう」


 これは、聞きたかった話だ!


「リュウジンの街だって?よく入れたな」

「それがよう、目が覚めたときに服をよく見たら斜めにザックリ切られた跡があってよう。血だらけだったんだよう」

「おめぇ、そりゃ死んだんじゃねぇか?よく生き返ったな!」

「そうなんだよう。んでな、飯も食わして貰ってよう。そんとき癒しの神様が俺を救ってくださったんだ!で言われてよう」


 癒しの神様?なんだろうそれ?


「ああ、それ聞いたことあるぞ。リュウジンの国には癒しの手を持つ神童がいるって」

「そうそう!そんなことも言ってたなぁ」

「聖獣様の呪いまで治したってよ」


 癒しってそこまで出来るものなの?


 詩音は魔法省の連中には言っていないことがある。


 癒しの力を使って病気まで治したことを。


 メイドの連れてきた子供が美咲の前で寝ていた。

 激痛なのか身体を丸めて苦しそうだった。

 美咲は痛みを緩和してあげたようで子供は痛みが和らいだのか寝息を立て始めていた。


 メイドは泣きながら感謝を美咲に言いながら美咲と共に廊下に出た。

なんだか気になって様子を見ていると…すぐに子供は痛みで目を覚まし、苦しみ出す。


「これはボクも経験したことのある病気かも」


 それは虫垂炎、盲腸だ。

 過去にボクは虫垂炎になり症状や術式など事細かな説明を受けた。


「ひょっとして治るかも」

 

 炎症を抑え雑菌を無くすイメージを送った。


 すると目に見えて子供の顔色が良くなった。


「なるほど、イメージか」

 手応えを感じた瞬間だったが、その場を立ち去り…余計なことは周りに言わずにずっと黙ってきた。


 癒しの可能性は…と期待してしまう。


「んでな俺も良い事をしようと思ってなあ。皆んなのところに来たのさあ。癒しの神様には直接会えるかわからんけど、リュウジンの国へ困ってる人いたら連れてきていいって言われてんだあ」


 これはチャンスかもしれない。

 

 彼が集めた人たちは軽傷な人から、火傷・片腕や片足の無い重傷者まで数人いた。


 彼らは歩き出す。ボクも着いていく。


 数時間歩くとそこには馬車があった。

 彼は本当にリュウジンたちから頼まれていた。


「うん?お嬢さんも乗るのかい?」

 御者らしき人に声を掛けられた。


「えっ?ボクが見えるの?」

「ああ、見えづらいと思ったら認識阻害か。悪意は感じられないし、一緒に来なさい」


「は、はい!ありがとうございます」

 

 なんとかリュウジンの国の砦の門の中に入った。


 砦内は穏やかな雰囲気が流れていた。


 王城の人たちのようにセカセカ動き回るわけでも無く、怒鳴り散らすような怒り顔の人もいない。

 

 ふと綺麗な顔立ちの少年がこちらに近づいてくる。15歳くらい、ボクとそう変わらない男の子だ。


 もし、スカートを履いていて髪の毛が長かったら女の子に見えたと思う。


「久しぶりだね、旅人さん。体調に変化は無い?」

「癒しの神様!ありがとうなあ、五体満足に過ごさせてもらってらぁ」

「キリアでいいよ、神様は言い過ぎだ」


あはは、と笑う少年が癒しの神様なのか。若すぎてビックリ。仙人みたいな人を想像してた。


「じゃあキリア様ぁ、今回連れてきた者たちをどうかみてやってくだせぇ」


「そうだね、じゃあ屋敷に来てもらおうかな。あれ?君は怪我人では無さそうだね。ああなるほど、大丈夫だよ。君も僕と同じだよね。一緒について来て」


 僕と一緒?何がだろう?

 疑問に思いつつ彼のあとをついていく。


「ここは診療所なんだ。最低限の器材しか無いけどね」


 清潔な空間、キレイなシーツを張ったベッドが沢山あるけどカーテンで仕切れるようになっている。


「この部屋は陰圧室でもあるから必ず扉は閉めてね」


 あれ?ここ異世界だよね?王城では見聞きしなかった物や言葉に凄い違和感。


「では皆さんベッドの上で横になって、補助の必要な方は言って下さいね」


 ガヤガヤと皆んな動き出す。


「君は…」

「あ、はい。結城詩音といいます」

「詩音さんだね、僕はキリア。これから診察と治療を施すから、近くで見ていてね」

「あ、はい」


 見た目とは違い、歳を重ねた落ち着きのある態度と所作に見惚れてしまった。


 彼は次々と患者を診察し治していく。それは怖いくらいに確実で患部を左手でさするだけで奇跡がおきる。


「暖かい…ふわぁ腕がある!」

一瞬だった。片腕が生えるのでは無い、もう腕があるのだ。


「僕はね、治して癒すのでは無くて。そこに在るのが当然って、悪い物は最初から無かったんだってイメージしてるんだ。だから脳に痛みが来ることは無くて最初からそうだったんだって事にしちゃう」


 不思議そうに見ていたボクに向かって微笑みながら彼は言った。


(ちょっと!無自覚なの?顔が、熱い!)


 キリア本人は自分の顔の良さには自覚が無い。


両親も弟妹たちも親類縁者も皆の顔面偏差値が高すぎて比較のしようが無いから。


当然、顔に綺麗や汚いと言う概念も無いのだ。


美しさや可愛さなら言葉としてよく使うけども、悪様に人を貶すことはしない。


(ヤバい!絶対異性にはトキめかないと思ってたのに…これはヤバい!)


すでに遅かった…恋のカミナリは落ちた後だった。


「詩音さん?大丈夫?治療は終わったよ」

「ひゃ、ひゃい」

「ひゃい?向こうではそんな返事が流行ってるの?」

「向こうですか?」


「ちょっとこの腕輪を持ってくれる?」

渡された腕輪を握ると周りの音が気にならなくなった。


「これはね、発した声や音と相反する音を出して常に打ち消す魔導具なんだ。長時間使うと精神崩壊の可能性があるから長くは使えないけどね」


魔導具⁈王城では聞かない言葉だ。


「…悪用されると困るから君のいた王国には卸してないんだ。特に指輪、指につける魔導具は魔力を充填させて使うんだけど…暴走しやすいんだよ。腕輪や棒状の物ならすぐに手放せばいいんだけど指輪はそうもいかないからね」


「なるほど、わかります」

「理解してもらって助かるよ。まずは…君は召喚された異世界の人、だよね?」


「えっ?分かるんですか?」

「君の顔立ちは僕たちとは違うし、黒眼黒髪もこの世界では少ない組み合わせなんだ」

「この世界では、ですか…」


「単刀直入に言うね?僕も君がいた日本からの転生者なんだ」


「は?」理解出来なかった。


「事前にね情報は貰っていたんだよ。で君は僕たちにここまで来て貰うよう導いたのさ。ゴメンね?」


ストンと理解した。不自然な程の違和感はこれか、と。


「なるほど…ではワタシをどうすると?」

「ゴメンねって意味はそう言う意味では無くて…あの魔法省のお兄さんイヤだったよね?」


サミュエルのことだ。


「彼はね、魔眼持ちで…魅了を君に掛けようとしてたんだ」

「ええっ?あの気持ち悪さはそれだったんだ!ボク狙われてたの?」


「それが君の素か、そのままでいいよ。そう、あの男は…もう1人の女の子は王子が狙ってるから君をターゲットにしたみたいだね。君の方が魔力量が多くて効かなかったけどね」


「出てきて正解でした、ありがとうございます。…えーと、それで貴方は元日本人と」

「そうそう、手違いで死んでしまったらしくて。無理矢理この世界に来させられたんだよ。やっと前の年齢に追いついた」


「え?失礼ですけどお幾つですか?」

「50歳で亡くなって今は50歳になった」

「へー50歳…50歳⁇」

「そうなるよね、普通の人だったら。僕たちは長命種でね。万年生きられる個体もいるくらいなんだ。だから見た目と違ってそこそこ歳はいってる」


「ボクと同い年かと思ってました」

「君は…」

「15歳です。もうじき16歳になります」

「高校一年生かぁ、大変だったね。こんな形でこの世界に来させられて」

「いえ、ボクは両親も親類も居ないので…」

「そうかぁ。どうする?いきなりだけど僕と一緒に来てくれると嬉しいな。近日中には一度本邸に帰るから」

「行きます、行きたいです。美咲のことも気になりますが…」


「ああ、彼女なら大丈夫。下手に手を出して国が崩壊したら困るだろうしね」


「え?どう言う事ですか?」

「もう魔導具は外そうか」


そっとボクの手に触れて腕輪を置く、すると騒めきが戻ってきた。

皆んな不思議そうにボクたちを見ている。


「君の友人の聖女はね、豊穣の女神の加護を受けて全国各地を周ることが決定したらしい」


おおっ!っと皆んなが声を上げる。


「キリア様、じゃあひもじい思いは無くなるんですかい?」

「すぐにどうこうとはならないけど、間違いなく精霊たちが豊穣の手助けをしてくれるからね。聖女によほど悪さをしなきゃ大丈夫さ」


「意にそぐわないことをしたらどうなるの?」

ボクは素直に疑問を声にした。


皆んながシーンと黙った。


「間違い無く天変地異が起こるし王族にも呪詛が掛かることもあるだろう。その時はリュウジン族が出来うる限りの手助けをするから、出来ればこちらまで来てもらえるようにみんなに伝えてね」


「ありがとうございます、キリア様!」



一旦その場をキリアと詩音は離れて砦内の執務室に向かった。


「お爺さま、失礼します」

ガチャりと重そうなドアを開けると壮年の男性が座っていた。


「おお!キリア、治療は終わったのか」

「はい、しばらくは本邸に帰れそうです」

「そうかそうか。そちらの娘さんが例の?」

「はい、召喚者であり癒しの使い手でもある結城詩音様です」


「結城詩音です。詩音とお呼びください」


「ほうほう、賢い子じゃのう。ワシはグランダムと言う、そこのキリアの祖父じゃ。よしなにな」

「はい、ありがとうございます」


「お爺さまはつい先日まで国王だったんだよ」

「えっっっ?そ、そうなの?さ、先に言ってよ!」

「ワッハッハ、構わん構わん。もう隠居の身じゃからのぅ。キリアとは仲が良さそうで何よりじゃ。詩音や、キリアの嫁に来る気はないか?」


「お爺さま、早急な囲い込みは疑いを持たれますよ?」


グランダムは顎髭を扱きながら目を細める。

「ふむ、やぶさかではないと見た。キリアも成人を迎えたしな、慌てることもないが…」


詩音は、見透かされてる⁈と気が気では無かった。

「どちらにせよ神民の儀式は必要じゃからのぅ」


神民の儀式?なんの儀式だろう?


「お爺さま、それも含めて本邸で彼女の意志の確認をしないと…」

「分かっておるわ。最近アイリーンに似てきたのぅ、困ったもんじゃ」


「ああ、アイリーンは僕の母親ね。向こうには伝えてあるから安心してね」


何を安心すると言うのだろうか?




やたら頑丈な作りの蔵のような建物、その中にボクたちは居た。


「転移魔法陣ってわかる?」

キリアが屈んで魔法陣に触れながら、上目遣いでボクの顔を覗いてくる。


やめろ、心臓が保たない。


「う、うん。小説である程度理解してるよ」

「今どきの子は凄いなぁ。じゃあ魔法陣の上に乗って目をつぶってね。視覚に頼ると気持ち悪くなるからね」


目を閉じる。

見た目ボクと変わらないキリアがおじさんくさいことを言う。これもギャップ萌え?


などと考えてたら一瞬の浮遊感からすぐに重力を感じる。


「はい、目を開けていいよ。到着、ようこそリュウジン国本邸へ」


「ふわぁ?!」

見上げるとステンドグラスのような色ガラスがはめられた天井にキラキラ光が差し込んで眩しいくらいだ。


外に出て建物を見るとドーム状のインドのタージマハルみたいな形のガラス張りで派手な外観。


異世界感あるなぁと思ってしまった。



△△△△△△△△△△△△△△△




一方、聖女を召喚した王国。


フールー王国の国王アドルフはハインリヒ王子に困っていた。


「あのバカ息子は聖女にベッタリとは本当か?」 

「ほとんどの行動に同行しているようですな」

 

 宰相は呆れている。


「神殿に入り浸っており甚だ迷惑ですぞ」


 枢機卿は歯に衣着せぬ言葉を辛辣に吐く。


 当然だろう。

 本来は王子が聖女に依存させなければならないのだ。

 

何故か王子が骨抜きにされている。


「あれほどサミュエルに魔眼の対抗策を指導させておきながら。いや何らかの他の魔法も考えられるか…」


 実は単純に少女の見慣れぬ容姿が嗜好にハマってるだけの第一王子ハインリヒなのだった。


「何にせよ聖女が豊穣の女神から加護を受け取っている事実は真なのだ。300年前と同じ轍を踏まぬよう徹底させよ!」



 そして惚れっぽい王子はやらかす。


「何故そんなに怒るのだ。私は何か悪い事をしたのだろうか?」


「いきなり他の人がいる前で、"私の聖女に触るな!"とか騒ぐんだもの!私は貴方のものでは無いわ」


「いや、しかしサミュエルがあまりにも近すぎて周囲のものからもやり過ぎと聞いていてな…」


「サミュエル様は詩音がどこに行ったのか私に伝えるために私の部屋に来ただけなの」


「其方の国ではどうか知らないが私の国では情事の疑いがかけられてしまうんだよ。わかって欲しい」


ウルウルと子犬のような仕草をする王子。


「〜〜〜分かったわ!以後気をつけます!ところでサミュエル様は?」


「体調を崩したようでな。寝込んでいる」


(じゃあ仕方ないわね、サミュエルから貰った指輪を嵌めて魔力を流せば詩音の居場所分かるって言うし。かなり近づかないとダメらしいけど…)




「ちっ、なんで貴族牢に入れられなきゃならないんだ!」


サミュエルは王子からの信用を無くし、幽閉されていた。


 元々はハインリヒに魔法の技術や知識を買われて部下にされたのがキッカケだが、その信用は出会った時から魔眼を使ってコントロールしている結果だ。


「しかも魔封じや魔眼封じまでしやがって…」


その封じ方を自分で指導したのだから自業自得だ。


「まあいい。聖女に指輪を渡す事に成功したし、とりあえず様子見を決め込むか」



△△△△△△△△△△△△△△△



今日から聖女である美咲は王国内の街や村を行脚する。


 豊穣がメインだが、治癒の行使も含まれる。

「豊穣の儀式は農地に直接手を置いて祈るんだっけ…土なんか触りたくないなぁ」


 前途多難であった。



△△△△△△△△△△△△△△△




「あらあら、貴女が詩音?待っていたわ!」

「アイリーン…さま?王妃様と言った方…」

「やあねぇ、お義母様で良いのよ!」


 アイリーンに抱きつかれた詩音はしばらくすると…意識が遠くなる。


(ホントに子供がいるの?あり得ない美貌とバストなんだけど!垂れてないし!あぁ…意識が)


「お母様、詩音さん息ができていないようです」

「あらあら、ごめんなさいねぇ」


「ぷわぁ!…いえこちらこそ…」

「ほらほら、一緒に座りましょう♪」


 詩音を抱きかかえたまま強引に座る。


「まったくお母様は変わりませんね。可愛いと見るや抱きかかえる、その癖」


「あらまぁ、習性みたいなものね。でも詩音”さん”付けは如何なものかしらぁ」

「えっ?いや、まだ許可も頂けてないし」

「別に構いませんよ?そのかわりキリアと呼んでも良いですか?」


いつの間にか復活した詩音が言う。


(何か知らないけどやり返された気分)

「もちろんそれで構わないよ、詩音」


「キ、キリアありがとう」

(何だかやり返された気分)


「…そろそろ落ち着いたかな?」 

「お父様も黙って見てるなんて人が悪いよ」

「息子の成長を喜ばない親はいないさ」


 ここは本邸、いわゆるリュウジン国の王城の執務室になる。


「今日をアイリーンと、君達に会えるのを楽しみにしていたよ」

「それはお待たせして申し訳ありません。ですがお母様の行動が…」


「あらあら、キリアちゃん。このお母様に何か問題が?」

「プレッシャーが…それさえ無ければペットも懐くのに」


「貴方ぁ、息子が虐めるぅ」

「ははは」


お母様は小動物には好かれない。


どうも動物達は死を覚悟してしまい動けなくなるようだ。

逆にイフリートやリヴァイアサンなどの精霊や聖獣には好かれやすい。


「詩音殿、遠路はるばるお越しいただき感謝する」

「い、い、いやあの、こちらこそ急に来てしまいまして…」

「急に、では無いよ。向こうの情勢も芳しく無いからね。キリアに動いてもらった。手数を掛けたね」


 優しい微笑みはキリアと面影が似ている。


「いきなり本題で申し訳ないんだけど、我々リュウジン族は長きに渡る生の代償としてこの世界の記録を司っている」


「記録、ですか?」

「そう、記録だ。私達より悠久の時間を漂う神達はね、暇人の集まりなんだ」


「暇人ですか?」

「ただの暇人じゃない、人々にときにはチカラを与えたり、ときには不幸を与える。気ままな方々なんだ。人の営みを黙って見ていればいいものを手を加えて楽しもうとする。そう言った行いをする神を邪神として我々は監視するという運命を担っている。そして可能であれば討伐する」


「…壮大ですね」


「今回は邪神は現れなかったが、召喚を行った国があった」


「あ…」


ミリアムは居住まいを正す。


「召喚儀式をした者の中に悪魔が隠れ潜んでこの世界を乱そうとしている」

「それは誰だかわかるんですか?」


ゲ○ドウポーズを取り、前を見据えるミリアム。

「途中から魔力が追えなくなった」


「アナタ、それよりも」

「ああ、そうだったな。詩音殿、癒しの使い方をもっと知りたくはないかな?」


「え?」



 詩音は癒しの使い方を学ぶことにした。


「でも美咲が心配なんだよね…」

「ならお母様の護衛の1人を使いにだそうか?めちゃくちゃ強い女性だから安心だよ。もし彼女に出逢えたら詩音の名前を伝えて迎えに来たと言ってもいいかい?」


「もちろん!」



△△△△△△△△△△△△△△△




 行脚をはじめて10日目、事態は深刻化していた。


「やぁだー、お風呂入りたい!」

 聖女のワガママだ。


クリーンの魔法だけではサッパリしないらしく、我慢の限界と言い出した。


「分かりました、土魔法で湯殿を作り温熱魔法でお湯を張ります。それでよろしいでしょうか?」

「出来るなら早くやってよ!使えないんだから!」


 土魔法師は貴重だ。


城や城壁、土塁や側溝、田畑に使う耕作魔法など引く手数多なのに絶対数が少ないのだ。


 温熱魔法も水魔法との併用なのでとにかく魔力燃費が悪い。

 つまり効率が悪いのだ。魔力を使い果たせば歩けないので馬車に乗る。

荷物を担ぐ、移動速度が落ちる…悪循環でしか無い。


 空間魔法で荷物を収容出来れば良いのだが、空間を司る神が持ち主が死んだり放置したり譲渡しなかったりで収納されたままの空間が増え過ぎて、嫌になり極力適性魔法持ちを作らないようにしてしまった。


 「あー、お風呂最高!シャンプー、リンス、トリートメントが欲しいぃぃぃぃ!」


 従者達は意味不明な叫びに呆れた。


 それは毎日続いた。


 お風呂を作るたびに面倒が増え、負担になり人が居なくなる…我慢出来ずに逃げ出すのだ。


 最後に残るのは責任ある立場の人や希少で名前や顔が割れている魔法師たち。


 すぐさま王に連絡するがいかんせん距離がある。


結局20日目に温泉を宿泊施設に備えるこの国唯一の辺境伯領の領都に急遽予定外に入ることになった。


「温泉?凄いなー、異世界にもあるんだー」

 聖女美咲は素直な言葉を続けた。


すでに目的も忘れている様子だった。




 「これは…不味いですな」


 宰相は報告書を精査した結果をこう述べた。


「治療が終わってないのに一々中断したり、豊穣の儀式も中途半端で…これは暴動が起きかねませんな」


 枢機卿もうなだれた。


 ただでさえ不作が続き不況下では通常の税収ではままならず、貴族たちからの税収も期待出来ない。


 貴族たちは間違いなく民から搾り取ろうとするだろう。


 気休めにもならない名ばかりの聖女が来たとなれば更に国政に不満を残す。


 ちなみに王子も聖女に同道しているが、別働隊と一緒に動いている。


馬車酔いで動けない日々が続いてるらしいが…。




 「このままだと財政も傾く上に寄付金も期待出来ずに痩せ細るだけだ!」


 「では、ワタクシの案を奏上させていただきたい」


牢に居るはずの男が背後から声を上げる。


「サミュエル!貴様いつ牢から出てきた!」


 宰相は聞いていなかった為、慌てた。


「王子が聖女の旅に随行されるので牢から出していただきましたよ?」


「何故王であるワシに通達が来ていないのだ?」

「王子が報告を忘れていたのでは?」

「うむむ…」


 それもあり得ると思えるのが辛い王だった。


聖女との旅で王子の気分が高揚していたら…頭が痛い王。


「念のため、サミュエルの話を聞いて見ましょう」

 枢機卿はニヤリと笑みを浮かべ、そう言う。


 廃嫡もありうる、と枢機卿は考えていた。

 

 "王と枢機卿の癒着具合が凄そうな…楽しめそうですね!"


サミュエルの心は弾んだ。




△△△△△△△△△△△△△△△




「キリア、これはどうしたらいい?」 

「そこは大腿骨の膝に近い部分だから…そうそう、詩音は血流コントロールが上手いね」

「ホントに?これなら塊が出来ない気がして」


 砦内にまた怪我人を呼び治療をしている。


「前より増えたね。よくない傾向だなぁ」


「美咲は大丈夫かな?」

「彼女はこちらに向かってるよ」


「え?なんで?」



△△△△△△△△△△△△△△△



 つい先日、夜に美咲は襲われた…一般の農民に。


「聖女様!5日前に寄っていただいた村の者です!豊穣の儀式を行えば翌日には芽吹くだろうと言われましたが一向に芽生えず、3日待ちましたが…」


「聖女様は嘘ついたんか?他の村の人間も10日経つのに芽吹かねえって。本当に豊穣の女神様の加護をいただいたんか?」


「ほうだ、ここまで結果でとらんのは何や!」


「聖女様!どんどん不信を抱いておる者が集まり出しております!」


 騎士たちは聖女を護るよう囲むがその輪を更に農民たちが囲む。


「何よ、私は言われた通り祈っただけなのに!」


 美咲は1人馬車の中で震えていた。


「王城の庭で祈ったときは…」



 彼女が王城にある大庭園の枯れた薔薇に…。


「可哀想。でも詩音が…私が祈れば咲き誇るって言ってたから…」


 詩音に言われた通り、薔薇が咲くイメージで祈った。


「豊穣の聖女様だ…!」


周りの侍従やメイド達が騒ぎ出した…それは王城どころか王都全体に響き渡った。



「私にはチカラがあるんだ!」

 そのときはそう確信した。


「なぜ?チカラが無くなったの?」 

 その確信はアッサリ失っていた。


「おい!向こうに居た馬車が走り出したぞ!」

「こっちは囮か!追うぞ!松明で知らせろ!」


 農民たちが走り出す。


「王子が乗った馬車だ!追えば不敬罪で処罰されるぞ!」

 誰だか分からないが騎士の1人が叫んだ。

 騎士たちもパニックになったように農民たちの後を追い始める。



 静かになった。馬車の周囲は虫の音もしない。


「あれ?誰も居ない?」



「…美咲様」

「何?誰かいるの?」

「はい」

 

 スッと目の前に女性の騎士が現れた。


 王城では見たことがない簡素な皮鎧だった。


「あなたは誰?」

「詩音様の使いの者です。美咲様をお迎えに参りました」



△△△△△△△△△△△△△△△



 「聖女は逃げきれたかな?大丈夫かな…」

「王子」

 「私が馬車酔いしてなければ…」

「王子」

 「いや、もっと騎士を一個大隊まで…」

「ハインリヒ王子!」


「な、なんだ?!」

「前方に農民らしき奴らが座り込んでいます。どうされますか?」

「殺すわけにもいかないだろう。代表者を募れ」

「…はっ!」


△△△△△△△△△△△△△△△


 王城では伝令により農民たちによる暴動が起こり、聖女を囲み脅していると連絡が入った。


 それを聞いたサミュエルは笑みを深める。


「聖女はリュウジン国の罠にハマり豊穣のチカラを魔導具によって抑えられてしまった。それを勘違いした自国の農民によって聖女は王国を追い出され、リュウジンの国に囲われてしまった。聖女を取り返さなければならない。魔導具はリュウジン国の者が聖女に渡しているのでしょう。同様の物を私も持っています。その暴動は一個大隊で抑えねばなりますまい」


 指輪を見せる。


「一個大隊をその農民たちに差し向け威嚇すると言うのは…」


「各地で暴動が起きれば聖女は戻らないと5つの中隊それぞれ使って告知しなくてはなりません。一個大隊500人は必要です」


「ううむ」

考え込むアドルフ。


「そして王国民や農民には聖女を取り戻すため、兵を募り寄付金を募るのです」


 アドルフはハッとした。

「寄付金…なるほど、これは致し方無いな」

「…陛下、よろしいので?」

「選択肢は現状少ない…宰相の不安もっともだが、考えがこれ以上及ばない」

「私も考えがまとまり切れず不甲斐ない気持ちで御座います」


 枢機卿は口角を上げた。


△△△△△△△△△△△△△△△


 王子は困っていた。


「何故代表者が来ないのだ」

「代表者一人に責任を押し付けたくないのでしょう」


 親衛隊隊長は苦い顔をして言う。


「…私が出よう」

「殿下!お待ちください!」


 王子は護衛の言葉を待たず、馬車を降りた。


「フールー王国第一王子ハインリヒである」


 聖女が出てくると思っていた農民たちは息を呑んだ。


「せ、聖女様は?」誰かが叫んだ。


「私は囮だ。聖女の行為の責任は我々王族にある」


 痩せ細り目も虚ろな農民たちは座り込んだ。

 もう動けない、そうアピールしているようだ。


 伝令が王子の元に片膝をつく。

「御前失礼します!聖女は馬車より失踪した模様!何者かに手引きされた可能性があります」


「何だと?足取りは?どこに向かったのだ?」

「残念ながら見張り兵すらその場を離れており、足取りは掴めておりません」

 「何ということだ…」


 王子は頭をかかえる。


「一番近い国はリュウジン国ですが…1人で向かうことは不可能と思われますので、やはり手引きした者がいるはずです」

 

 親衛隊隊長が力強く言った。


「となると…」

 悩み出す王子。



「…ここは一旦王城に戻り指示を仰ぎましょう」


△△△△△△△△△△△△△△△


 「美咲様、こちらのローブをお使いください」

 詩音が使っていた外套を羽織る。懐かしい匂いがした。

 少し気持ちのゆとりを取り戻した美咲は歩き出した。


△△△△△△△△△△△△△△△


 王子が立ち去り、農民たちは肩を落としながらもそれぞれの村に帰って行った。


「あんた!」

 村にたどり着いたある農民は妻に待ってましたと言わんばかりの態度で待っていた。


「どうした?何かあったのか?」

「凄いんだよ!雨が降ったんだ!そしたら芽吹いた草花が翌日には実をつけたんだよ!」


 何を言ってるのか理解出来なかった。


「実をつけた?」

「芋だよ!実が成ったのさ!麦や粟は芽吹いたんだけどまだ時間が掛かりそうで…でも芋は食べられたんだ!あんたの分もあるから早く家に来な!」

 

 信じられなかった。


 聖女様はすぐ芽吹くと言ったから…待つ事が出来ずに文句の一つでも言ってやろうと取るものも取らず走り出した。


 皆んなも着いてきた。


しかし、時間が掛かったが豊穣の聖女様のチカラは本物だった…なんて事をしてしまったんだろうと後悔した。


 泣きながら芋を食べた。皆んなそうだったろう。


 誰かに伝えるでもなく村長の家に集まっていた。

「なあ、どうする?とんでもねぇことしちまった」


 村長の声が震えている。

「聖女様が起こした奇跡は間違いない。俺たちは間違った。だが奇跡が続いてるってことは聖女様がまだ生きて祈ってくれてるからかも知れない」


俺は謝罪したい気持ちでいっぱいだったから、そんな事を言った。

 皆んなが頷く。


「代表者を立てて王城に陳情しよう。他の村とも連携をとって」




△△△△△△△△△△△△△△△


 


 「だいぶ不穏な動きを見せてるねぇ」

 「どうしたの?キリア」 


 首を傾げて疑問を投げ掛ける詩音。


 すっかり仲良しの2人にニヤニヤするアイリーン。


 美咲が嵌めている指輪を女騎士からアイリーンは伝え聞いている。


「お母様、あの魔族の指輪は一度はめたら外せないんですか?」

「あれはねぇ、呪いが付与されてるわねぇ…外せても魔力暴走はしちゃうと思う」


「僕なら外せるってことですね」


「あの、魔力暴走ってどうなるの?」

「指輪付けてた本人以外に爆発のような衝撃を与える魔導具なんだ。意図的に魔力暴走を起こす、僕たちの失敗作だね」


「なぜ失敗作が出回ってるの?」


「それはねぇ、魔力欠乏症って言う病気があって治療のために魔力を貯めて解放する魔導具を作って使用してだんだけどぉ」 

 

 お母様の説明は分かりづらいと思う。


「人族の一部で使用すると魔力暴走する可能性が出てきてね。回収したんだけど…回収しきれなかった分が魔族に渡ったようでね。その指輪に呪いを付与出来る魔族はかなり限られるんだけど」

 

「そいつがサミュエル!」


 お母様は叫ぶ、許されざる敵と認定したのだ。




△△△△△△△△△△△△△△△




 王城にはかなりの王都の人々が集まっていた。


「神はあなた方を見捨ててはいなかった!我々は豊穣の女神が使わした聖女を取り戻さなければならない!」


歓声が上がる。『取り戻すぞぉ!』


 「寄付金集めは順調ですな」


 戻ってきた枢機卿はほくそ笑んだ。


「財政も軍備に回せるくらいにはなった」


 アドルフもほくそ笑む。


「農民からの徴兵も順調です」


 宰相は安心したように語った。


 だが、彼らは知らない…精霊たちの行動を。


今回は聖女が知識不足のため、祈りは間違っていなくてもしっかりしたイメージが精霊たちに伝わらず。


『どうしたらいいんだろ?』

『なにしたらいいんだろ?』

『うーん』『うーん』


数日後。


『まあいいか、雨降らせちゃえ』

『うんいいか、芽吹かせちゃえ』


結果、雨は降り芽吹いていた。

そして聖女はこの国を出る。


『加護が無くなるね』

『加護必要無いよね』


そして加護は無くなった。


 「大変だよ!芽が萎れてる!」

 「芋が…腐っていく!」

 雨もすっかり降らなくなり地面が割れ始めた。


 「聖女様が居なくなったから?」 



△△△△△△△△△△△△△△△



 精霊にとって人の営みはどうでも良くて、憎しみ合おうが戦争しようが気にはしない。


 だが、土地が荒れると小さな精霊たちも寄り付かなくなり廃れてしまう。


人が住めなくなるのだ。


そこに悪魔や魔族が住むだろうって?


残念ながら人の負のイメージを糧とする悪魔には人々が居ない場所には住み着かない…つまり国が腐ると集まるのが悪魔なのだ。


そして精霊や魔力を好む魔族が精霊の居ない場所へは近づく意味も無い。


 ならば人が居なくなったことでどうなるのか?


 また精霊が棲みつき始めるのだ。


 そして精霊を求める魔族も集まる。


 人の気配が無くなると小さく弱い精霊たちが集まって魔力を育て、森が出来ていく。


 エルフやドワーフ、ドライアドなどなど、その魔力の多い森に住み出す。


 そして人よりも絶対的なチカラを持つ魔族たちが人々を寄せ付けない場所を作るのだ。


 結局自分の居場所を自ら失い、それを繰り返すことで生存圏を減らし続けているのだ。


 神はそれが面白くない、楽しめないのだ。


弱く、脆弱で非力なのに徒党を組み、争いお互いを殺し合う人類に。

誰かを守るために強くなり、どんな苦難でも何度でも立ち上がり、お互いを讃えあう人間種に。

神は大いに興味があり、僅かな希望でも大きな大望に繋げてくれると理解して敢えて僅かな神のチカラを与えるのだ。


△△△△△△△△△△△△△△△


 聖女が居なくなった原因は何なのか?

 聖女に不敬を働いたからでは無いのか?


 「俺はそうは思わない。聖女に不敬を働いた俺たちが真っ先に罰を受けるはずなのに受けたと聞いたことが無い」


「お前だけじゃない、俺たちだって聖女様に不敬を働いたが…確かに罰は受けてないな」


「俺は罰を受けても仕方ないと思った。だが現状はどうだ?雨が降らず草花が枯れた」


「俺たちへの罰じゃねえか、困ってるんだし」

「直接、聖女に不敬を働いていない女子供が何故罰を受けるんだ?おかしくないか?」


「…確かに、俺たちが罰を受けるならまだしも、村で俺たちの帰りを待っていた連中にまで纏めて罰を与えるのは不公平だし助けてくだすった聖女らしくないな」


「だろう?だから俺はこう考えた、聖女を利用して悪さする連中が居るんじゃないか?ってね」


"おおっ?!そうだな!そうかもしんねぇな!"


 皆んなが激しく同意する。


「俺たちは間違った事をした。だが聖女が怒っている訳じゃない。聖女を利用して何か企んでる奴がいるんだ」


「戦争起こそうとしてる奴じゃねぇか?」


誰かが呟いた。


「あれ?なんかしっくりくるな。お国は兵隊を募ってる、教会は寄付金募ってる」


「あれ?俺たち騙されてねえ?」

「騙されてるさ!俺たちは国と教会に騙されているんだ!」


一部の農民たちが起こしたムーブメントは国中を瞬く間に駆け巡る。


「おい、聞いたか?国王が聖女取り戻すのに戦争するのって、教会に寄付金で儲けさせて貴族たちは戦争にほとんど出ないで国民に戦争やらせようって」


「聞いたかよ、教会が寄付金募るのって貴族たちが儲けるために神官囲って金せしめるために戦争って大義名分を作ってるって」


「王族が」


「教会が」


「貴族が」


「神官が」


 疑心暗鬼を通り越して、騙された!と騒ぐ国民が総出で噂を広めた。



 その最中、一部のまともな貴族や神官たちは…


「巫山戯るな!民のためにもならない貴族たちのせいで我々まで悪漢扱いではないか!」


「神に仕える身でありながら、物欲にまみれるとはけしからん!」



△△△△△△△△△△△△△△△



 戦争を仕掛けようとリュウジンの国の砦前まで行軍を進めていたが、砦前にはたくさんの人々がすでに集まっていた。


 病魔に侵された者、怪我で動けなくなった者、飢えで痩せ細った者…様々な人々が聖女達の治癒を待ち並んでいた。


 農民や王都民、騎士や軍族貴族が集まった一万の軍勢はその光景を見て言葉を失い立ち尽くした。


 そこへ伝令兵が次々と駆け込んでくる。


 「報告!農民たちが一揆を起こし王都に集まりだしました」

 「報告!王都民が王城外を囲み、予断を許さない状況です!」 

 「報告!王に戦争を起こす疑義を問う貴族や神官が王城内に立て篭もりました。何卒御指示を!」


「ええっ?ワタシニハムリネー」

 アドルフは情報過多で適切な言葉も出ない。


「王よ…その対応には無理があります…」

 

 宰相は、王子と親子だなと王を呆れて見ていた。




△△△△△△△△△△△△△△△




 「あらら、国が分断しそうなのに砦前に軍隊がいるよ…ダメな王だなぁ」


 キリアは冷静にダメ出しをする。


「私が説明に出ましょうか?」


 美咲がマトモなことを言う。


「…立派に成長して、お母さん嬉しいわっ!」

「詩音て割とノリが良かったのね…」




 美咲が砦内に入ってそれなりに経つ。


 ある程度砦に近づいたら転移魔法で砦内に入ってもらい、美咲の指輪をキリアの右手で外す。

「僕にすべてを委ねて…大丈夫、必ず護ってあげるから」


「キリア…天然のタラシねー」

アイリーンは呆れ顔だ。

 

 そしてミリアムの固有結界魔法で爆破して事なきを得た。


 砦前に軍隊が揃うまで間は美咲の心のケアを行った。


 キリアと詩音の熱心なフォローで美咲は自分を取り戻した。


 フールー王国の村々を転移魔法で周り、雨を降らせ、草花を芽吹かせ、聖女とリュウジン族が手を組み皆んなを救う、と説きながら実行していった。


 気がつくと美咲と詩音の2人は双陽の聖女と呼ばれ始めた。


 誰しもが手を取り合いお互いを慈しむことで幸せが訪れる…と説いた2人を崇める人々は絶えず、貴族や神官までも双陽の聖女を崇めた。


「聖女はあなた方の目の前に居ります。順番を守ってご挨拶いただけると助かります。あ、はみ出さないで!そこ!割り込みしない!」


 戦場になるはずの砦前が聖地巡礼と化していた。


「私たちは何をしていたんだろう?」

 サミュエルの魔眼により魅入られていた騎士や貴族たが我に返り始める。


「さて、そろそろ現れるかな?」

「何が?」


 キリアは詩音の頭を撫でながら、言う。


「悪魔さ」



△△△△△△△△△△△△△△△



「やっぱり人間は役に立たないね」


 砦の上空で黒い翼を羽ばたかせながら浮かぶ人の形をしたモノが居た。


「もっと楽しませるような方々はいませんかねぇ」


「何だい?神にでもなったつもりかな?」


 サミュエルの背後から語りかける声がした。


「誰だ?」

 

 自分(サミュエル)と同じ高度で浮かび続ける存在は少ない…誰だ?


「悪魔だけど、これは困ったな…一応最強クラスの雑魚か」

「何だと?雑魚とは何だっ!」


「誰だ?と誰何しておきながら、怒り出すのもどうかと思うよ?ああ、僕はリュウジン国のキリア」


「リュウジン国…」


「名乗ったんだからさぁ、君も名乗るべきでは?」


「ああ、失礼した。誇り高きアークデーモンのサミュエルと申します」


「いや、だから最強クラスの雑魚って言ったよね」


 言葉と同時にサミュエルの首を掴む。

 真っ黒で細長い右手が。

「ギャァ…」


「あれ?ルシフェル?君はいつの間に僕の右手を乗っ取ったんだい?」


 そう言った瞬間に右手がキリアに()()()


「ゲハっ!!…ル、ルシフェ…ル?」

 

驚愕した顔のサミュエル。


「まだまだかぁ、(ルシフェル)はまだ出てこなくていいんだよ?始末する時はお願いね」


「舐めるなぁ!」


 サミュエルは、ドンッッッ!と音を出しながらキリアに一気に近づく。


「舐めたく無いなぁ」

 

 右の膝でサミュエルの顎を砕くようにカチ上げる。

「ムグッ」


 上を向いた顔に左肘を叩きつける。

「ブッ!」


 右膝と左肘に挟まれるサミュエルの顔は潰れる。


「お前さぁ、詩音に色目使ったよなぁ…美咲は心を惑わされた」


 殺意むき出しなキリアの顔はまるでアイリーンの怒り心頭な顔そっくりだった。


 膝と肘を顔から離し、左手で髪の毛を掴む。

「ひゅっ?」

 サミュエルの顔の目の前には右の手のひらが被さる。

「今、()()してやるからねぇ」


 右手からルシフェルが浮き出すとサミュエルの()()()()から黒く光る玉を引き出す。


 次の瞬間、光った右手の紋章からルシフェルが現れ、その玉を口に入れ飲み込んだ。


「ァァァァァァァ」


声にならない叫び声を上げながら真っ白になって霧散して行く()()()()()()()()もの。

 


 ルシフェルは透過した姿のまま、左手に浸透して消えていく…キリアの中で循環し、浄化されるのだ。


「ふう…」


 何事もなかったようにキリアは詩音の隣に降りる。

「ただいま」


「おかえり…」

 詩音の顔から耳からが真っ赤だ。


「いいなぁ、詩音羨ましいなぁ」

 

美咲は詩音の横顔を眺めながらうっとりしている。


「キリアはやっぱりアイリーンの血が濃いんじゃ無いかな?」

「あらぁ、どこを見て言ってるのかしらぁ…ミリアム」

「…」



△△△△△△△△△△△△△△△



引き揚げていく王国の民達に一緒に同行した美咲はフールー国でしばらく聖女として残るそうだ。


王子は嬉しそうだがアドルフ王は疲れ切った顔だ。


「もう退位しちゃおうかな…」


王を睨む宰相は言う。

「許しませんよ、まだ地盤が安定しておりません。責任を果たすべきです」


「そう、かあ…」



 神殿に帰った枢機卿は愕然とした。

「何も、無い、無くなっている」


 彼が集めた財産すべては心ある神官や司教によって換金され炊き出しに使われていた。


 一文なしである。


「これから、どう、したら…」



△△△△△△△△△△△△△△△



 これから行われるのは神民の儀式…神の民になるための儀式だ。


「単純に僕の血を飲んでもらうだけなんだけど…イヤ、かな?」

 

 その上目遣い、反則です…鼻血出ちゃう。


 美咲が王国に向かう前にその儀式を行うことを関係者に伝えた。

 もちろんリュウジン国の者達以外だと詩音と美咲だけだが。


「一応確認なんだけど」


 キリアは居住まいを正して2人に聞く。


「おそらく元の世界には戻れないと思う。残酷だけどこの世界で生きていかなきゃならない。君達はどうしたい?」


「僕はリュウジン国に居たい…その…キリアと居たいし…」


 可愛いの権化がそこに居た。


「いいなぁ詩音は…私はあのヘタレ王子かぁ」


「いや、選択肢はあった方がいいよねぇ?」

 アイリーンは美咲の目を見て急に手を繋ぎ出す。

「えっ?えっ、何ですか?」


「リュウジン国は一夫多妻なのよー。何故かミリアムは私1人だけど」

「アイリーンが2人いたら…死ぬな」

 物騒なことをミリアムが言い出す。


アレ(ミリアム)は気にしないでねぇ…キリアは可愛いしカッコ良くない?美咲はどう思う?」


「え?あ、可愛いし…カッコいいと思う…」

 詩音を見ながら美咲は言う、が詩音はウンウン頷いている。


どうやら詩音も美咲なら問題ないらしい。


「でね、選択肢はあった方がいいからぁ、神民の儀式、してみない?普通よりずっと長く生きていくから辛いこともあるけどぉ、美咲ちゃんのためにはなると思うのー」


「美咲はどうしたい?僕は…どうせなら3人で一緒にいたい…な」

 美咲は胸の奥でキューンとなった。


「私も…詩音と居たい、な」

 

 美咲と詩音の2人は抱き合う。


「あれ?僕は当て馬?」


「そう言うことから始まることもあるよ」

 ミリアムが切ない顔で言う。何があった?


そんな事があって2人の召喚者は神民の儀式を終えた。





△△△△△△△△△△△△△△△





 アイリーンは2人目を出産した。

 女の子だ。


「アスティナ、おいでー」

 トテトテと笑顔を振り撒いて歩き、抱きつく。


「可愛いねぇ」

 詩音に。


「お母様、悲しい」

「お母様悲しいって言ってるよ?アスティナはどうするのかなぁ」


 ハッとした顔をしたアスティナはトテトテとアイリーンの足にしがみついた。


 ニパァと笑うアスティナ。


「あら?あらあら!可愛いわねぇ」

 そっと抱き締めるアイリーン。


(お母様も成長したな…しかし、アスティナ恐ろしい子!)


 新たにアークデーモンの反乱と題した記録を記す。

 また違う記録を記す機会はあるだろう。

 リュウジン国では漏らす事なく記していく。


 キリアは生かされた意味を今後も探し続けるし、いつかは愛猫に出逢い文句の一つでも言いたいと思っている。


そして…


 2人の聖女の物語はこれからだ。


一気に書き上げたので設定ゆるゆるですが、ご容赦ください。

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