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知らせを聞いた職員とともにカインが戻ってくると、地面に座ったまま片手で頭をかかえたレーベの姿があった。周りには心配そうに新米冒険者達が集まり、肩を貸そうとしていたが、彼らの体格では押しつぶされてしまうだろう。
持ってきた担架も役にたたないことを知ったギルド員が壁に立てかける。
「仕方ない。肩を使え」
いつの間にか服を着たギルド長がレーベの傍に立つと、脇から腕を入れて支えながら立ち上がらせる。
直後にレーベがふらつくが次第に落ち着きを取り戻すが、足取りはたどたどしく真っ直ぐと進めない。
目線も未だ彷徨い続け、顎は垂れて大きな犬歯をのぞかせている。
一人では大変だろうと、カインが連れてきた職員達がレーベを支えながらやっとのことで場外へと出た。
適当な場所で壁を背にして座らせ、落ち着くまでその場で休ませている。
「どうだ、カイン」
介抱を職員に任せ、あれほど激しい動きをしたにも関わらず息一つきれない姿のギルド長にカインは最初の態度とは違い、恐ろしく少し距離をとった。
横にいた新米冒険者たちも威圧感に触れ、慌ててギルドの中へと逃げていった。
「レーベも確かに強いが、まだまだ。だが、あの一撃は悪くはなかった」
「は、はい」
カインは身を守る小動物のように小さくなってただただ言葉に頷いた。
暫くして、レーベの容態が戻ったのか大きく立ち上がる音が聞こえた。
「ご心配おかけしました」
目をつむり謝罪の言葉をする。
あれほど強く流れられたにも関わらず怪我一つもないのは獣人特有の頑丈さによるものなのか。
カインがレーベを見ていると、ギルド長が頷いた。
「初日の鍛錬はレーベに任せようと思っていたが、今日はやめにしとくか?」
「いえ、休みましたのでもう平気です。鍛錬の役目、承ります」
そういってレーベは場内と場外を隔てる木の柵を飛び越え、軽く運動してみせた。
「彼はやる気だ。カイン、教わることはたくさんあるぞ」
ギルド長は意地悪そうに笑った。