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8-5

 ギルドに入ると、受付に昨日の獣人の姿はなかった。

 代わりに人間――中年の無精髭の目立つ男性が立っており、入ってきたばかりのカインを一瞥しただけで何も言わず、取り掛かっている仕事に熱を込め直す。

 相手が目線を合わせずともカインは通り過ぎる際にさり気なく会釈をし、受付カウンターを抜けてホールへと出たが、休憩スペースの席はがら空きで他の業務カウンターに人の列は一切無い。

 それでもパーティーらしき集団が二つ程、互いの縄張りに入らないようにして遠くはなれて座っていただけであった。

 片方はなにやら地図を広げ、駒を使って作戦会議をしているようであった。

 もう片方は世間話で盛り上がっており、カインを見ると四人全員が一瞬口を閉ざしたが何事もなかったかのように再び笑い声をあげて盛り上がり始めた。

 カインはパーティー達の間に座る形で一人で使うにはやや大きいテーブル席に腰掛けた。

 そして約束の時間まで、何か暇をつぶせるようなものはないかと周囲を伺う。

 ルガの街同様にここにもクエスト依頼書を貼り付けるためのボードが目に留まるが、今は何も貼られていない。柱が邪魔になって見えていない部分にあるのではないかと、立ち上がって寄って見るが一枚も依頼書は張り出されておらず、寂しい気持ちになる。

 四隅には集められた押しピンがあるものの、そもそも数が少ない。

 きっとこの中には長い間使われていないものもあるのだろうか。

「カイン?」

 声がホールから聞こえたので振り返ると、ギルド長が立っていた。

「あ、あの。ちょっと早いかなって思ってたけど来ちゃいました」

 カインはすかさずホールで待つギルド長に挨拶をした。

 ちょっと早いどころではなく、流石に少し苦しい言い訳をしてしまった。

「居ても立っても居られない、という感じだね。いいだろう、私の用件にはまだ早いが一つ手合わせでもしてみないか?」

 そういうと、ついて来いと人差し指で合図をした。

 カインは言われるがまま、奥の部屋へとギルド長の後を進むと少し開けた場所へと出た。

 円形の造りをしており、席は置かれていない。

 地面は砂地で現在、場内には数人の男女が各々が獲物を持って模擬訓練のような事をしている。

「あそこにいる冒険者達は君とそう変わりない度合いの者たちだ」

「はい」

「数は……4人いるが、見てご覧。その4人を例え新米だろうと敵わぬ相手を」

 指さす先、カインは目を薄めて見ると1対4の構図がいつの間にか出てきており、冒険者たちが挑む相手は彼らよりも5割増し背の高い相手であった。

 手は大きく腫れたように大きく、片手に持つ盾は重々しいタワーシールドと呼ばれる長方形のものを使用している。余る手には人が両手でもって丁度良い触れるだけで頭が割れそうな戦棍を持っている。

 そして何よりも特徴的な長い髪の毛のような――あの獣人であった。

 

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