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7-13

 寝る前の時間、カインはこれからのことを少し考えていた。

 テティス商会の事、少女の行方、人形は何処へ。

 テティス商会については、今はまだここで働くのも悪くないなと思い始めている。

 明日にも冒険者に戻ったとしても、自分の力でやっていける自身は今はカインにはない。

 短い間に様々な出会いをし、己の力量と僅かに触れた世界の大きさにあまりの隔たりが存在する。

 ここでは自分が一番下っ端でスネアはもちろん、あのバルサックからでさえ学べることはあると感じている。

 今日の自分よりも強くなる必要がある。いずれ自立する時に力を蓄えるべきと芽生えていた自覚は確実なものとなっていた。

 少女については、日を追う毎に薄まってきていた。

 最初の仲間の行方を掴もうに糸口となる情報が何一つとしてない。

 頭から全身を隠すようなローブをし、杖から少しばかりの魔法を使う。

 最後の別れまで一度も顔を見せてくれなかった。

 カインは胸の内側を探り、あのナイフを取り出した。

 少女が残した唯一の品はこれだが、どこにでもある普遍的なものでとりわけ情報になるものではなさそうだ。

 短い刀身を撫でながら、非常に短い期間であったが彼女との冒険を思い出す。

 同時に牢屋で倒れていた見知らぬ少女と牢屋を去る前に現れたあの女の冒険者の言っていた言葉の意味がカインの頭から離れない。


「大きすぎる……か」


 カインの知らない世界で何が起きているのか、到底知る由もない出来事なのだろう。

 近づけば確実に身を滅ぼす事になりかねないと捉えて、まず違いない。

 それでも……でも今は無理だ。

 名残惜しそうに短刀を見つめ、再び胸の内へと戻した。

 そして人形はどうしているのだろうか。

 解散してからというものの一体どこへ行ってしまったのだろう。

 全身砂を纏ったぎこちない動きをする存在は街でもすぐに目立つはずだが、果たして。

 いづれにしてもすぐに再会はできそうな気がなんとはなしにする。

 それにしても、人形は何者なのだろうか。

 あの小屋の床から現れ、地下の迷宮を共にし、共に見知らぬ村で捕まり、逃げ出した後にテティス商会に拾われ。

 思えば人形に助けられてばかりだなと少し振り返る。

 彼なのか彼女か、いづれは何者なのか知る必要がある。

 カインは柔らかいベッドの上で仰向けになり、徐々に下がり始めた瞼に抗う事なくゆっくりと自然に任せた。

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