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0章はここまでです。
次回からは冒険者になる章が始まります。
少女の後ろ姿についていく中で歩く人々の服装が変わっていくのがわかった。
薄着で地味な色合いの多かった服装がしっかりと着色されており、デザインも簡素なものより複雑な記号や波打つ襟元など見るからに労働者ではなくそれら人を束ねるような出で立ちの人が多く行き交う通りへと姿を変える。
道幅も広くなり、馬車の往来も増していく中で見えていた三階建ての建物がある堺から軒並み始める。
堺には今まで見なかった標識がある。
ただ、カインは字が読めずに書かれている文字は読めずとも横長の長方形の看板に描かれた天秤と金の絵柄にここが少女が話す商業区だと判断した。
「すごい所でしょ」
はしゃぐ少女の姿にカインも同意した。
露店形式で販売する店はなく、全てがドアで外と店内を区切って店内のみで販売をしている。
雰囲気から察して高級そうな店の出入りには、入り口の横に店員らしき人物が控えており、客の出入りに応じてドアの開閉を行う。
それを当たり前だといわんばかりに客は一切疑問を持たずに通り抜ける姿がカインにとって別次元のように思えた。
「あ、あれよ」
色々と目移りしていたが、少女の指差す先は一際目立った建物であった。
それに店とは違い、格式ある造りで出入りする客は物騒なものを背や手、腰に身に着けている。
「それじゃあ私はあそこに用があるから」
「え、あそこってもしかして?」
「ん?あそこを知っているの」
知っているも何もカインが探していた場所であった。
夢を叶えるための大事な一歩を踏める場所。
彼らは客ではない。冒険者だ。
「俺もあそこに用があるんだ」
「えっ」
「冒険者になるためにこの街に来たんだ」




