7-11
ギルドの中へと入ると、正面に受付があった。
ギルドの従業員は人――ではなく、獣人と呼ばれる者でカインは記憶の中に一人だけその存在を知っている。人間の国ではまだまだ珍しい存在であるため、しばし差別の対象とされる。
無知は恐怖を起こし、やがては差別へとつながる。
そうして奴隷と呼ばれる立場にされることもしばしあるが、カインにはそういった感情はなく、周りの冒険者達の向けられる目もその類は見受けられない。
人と接するように獣人にも当たり前に会話をする。
カインもそれに倣うべく、順番を待ちすぐにそのときはきた。
「いらっしゃい」
渋い声の獣人で顔の周りを短い毛で多うその獣人の手は大きく猫のように肉球がついていた。
カインはスネアに頼まれた羊皮紙を手渡す。
事情を説明をすると、獣人はしばし考えた後にカウンターの内側にあったベルを鳴らした。
すると、ギルド職員専用の出入り口より一人の女性がかけつけた。
その女性に向かって獣人は耳打ちをすると、深くうなずき再び奥のほうへと去っていく。
「あの?」
カインは堪らず聞いた。
「今、ギルドの責任者を呼んできますのでしばしお寛ぎください」
そういってこのギルドにもある休憩室のようなスペースに案内された。
周りの冒険者を気にしながら待つこと数分、後ろから声をかけられた。
振り向くと、スキンヘッドで立派な髭を蓄えた老年の男性がたっていた。
強者のもつ漂う雰囲気がカインの肌を刺激し、思わず立ち上がった。
「ス、スネアさんからのお届け物です」
頭を下げ、両手で羊皮紙を渡す。
「見せてもらおう」
男性が受け取り、その場で開いて読み始めた。
何が書かれているのだろうかと顔を少しあげ、目線で男性の表情を読み取ろうとするも、鋭い眼光が今にもカインに向けられそうな危機感を覚え、咄嗟に目を下に落とした。
二人の間に重い空気が流れ、時間にして一分にも満たないが非常に長く感じる。
男性は時折頷きながら、カインを一瞥した。
突き刺さるような目線を頭から感じ、熱くもないのに汗が自然とわく。
「なるほど、な。君は私の古い友人に推薦されているようだね」
「え?」
「この紙にかかれているのは君が望む事が書かれている。そして、その願いを叶えるべスネアは私に手紙をよこした」
「はい……」
何が書かれていたのか分からないが、スネアが支部を案内してくれた時に言った気持ちを汲んで、ギルドに願書を書いてくれたようであった。
「しかし、私には個人的な付き合いをするための時間はない。そこで、私の代わりをよこそうと思う。ど
うだろうか?」
問われたカインもただ頷くしかなかった。
「理解が早くて助かる。その者は明日にも出張から帰ってくる予定だ。明日、またここに来てくれ。そう
だぁ……昼前でどうだろうか」「
だ、だいじょうぶです」
カインの返事に男性は満足すると、受け取った羊皮紙を懐にいれ奥の部屋へと去っていった。