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スネアはカインの言葉を信用したのか身を低くし、馬車内へと戻ると一号車は停止した。
後続も異変に気づき、順に止まり始める。
従業員と周りの護衛達の視線が一号車に注がれる中、慌てた様子でバルサックが馬にのって駆けつけた。
「旦那様、いかがしましたか?」
バルサックの声にスネアが幕から顔を覗かせた。
「右手の森に弓使いがいるらしい。野盗かもしれん」
バルサックは頷く、下馬をし数名を連れて森の中へと入っていく。
森の奥へと姿が消えた所でカインは隠れていた御者台の内側から身をだした。
固唾を呑んで待つこと数分、野太い悲鳴が森からきこえた。
立て続けに声は聞こえ、最後の声がきこえてからすぐにバルサックが最初に森から戻ってきた。
「賊を討ち取りました」
戦利品なのだろうか握りしめる小袋をスネアに渡す。
その内の一つの紐を解いてあけると銅貨が数枚入っており、血がついたものや泥で汚れたものがある。
「よくやった。賞金首だったか?」
スネアの問いにバルサックはいいえと伝え、愛馬の傍にかけより再び騎乗すると、真ん中の帆馬車へと戻っていった。
カインがそれを見送ると、バルサックについていった残りの護衛達が森から出てきた。
息を切らしながら、一人は腕に矢を受けており黄土色の服を赤く染めている。
「けが人だ。手当してやれ」
適当に従業員に指示を出し、すかさず近場にいた者が護衛に寄り添う。
幸いにも傷は浅い様子で元気に腕を振るってみせたが、看護するものが肩を貸してやり、二号車の中へと連れて行った。
「よくやったカイン。お前が見ていなければ襲われていただろう」
スネアはカインの肩を叩いて褒めた。
「偶然です、偶然」
カインは笑ってごまかしたが、胸の内では大喜びをしていた。