7-2
解体士が解体作業の終わりと告げると、それを帆馬車に載せるというので手伝わせてほしいというと、了承してくれた。口の部分は硬い唇は柔軟性のある素材となるということで、女性バックになったりするそうで、他にも日用品や薬品になる場所も運びながら教えてくれた。
将来必ず役に立つ事だろうとカインは一言も忘れないよう頭にたたきこむ。
それが終わるとリッツが食事を持ってきてくれた。
スネアとの食事より大分質でも量でも劣るものだが、カインが村で食べていたものよりかはずっと良い。
パンも幾分か柔らかく、気持ちばかり入ったクズ野菜の塩スープは十分にまともな食事といえる。
食事の合間にも交代で野営地の撤収作業をする従業員たちの目がとまる。
カインの知る商会というの町や都市部に店を構え、幾つもの支店で独自の商売ルートを構築しながら利益をあげる組織なのではと考えていたが、こういうやり方もあるのかと参考になる。
商人の道が拓けそうな予感だが、冒険者を中途半端に投げ出したくはない。
「残さず全部食えよ」
次々と畳まれる天幕や篝火、使用された燃料材を埋め立てる様子をカインが眺めていると、横で全て食べ終えたリッツが注意してくれた。
慌てて我にかえり、急ぎ食事をすませる。
危うく喉につまりそうになるとそれをリッツが笑うので面白くない顔をした。
「今日はこのまま町まで向かうらしい」
「町?なんて名前の?」
その町の名がルガだと嬉しい。
「さぁな。俺もそこまでは分からねぇ。けど、町に着けば数日の自由がもらえるんだ」
「自由……」
カインは自由きままに生きる冒険者を目指して村をでた。
スネアに直接言われた訳ではないが、護衛見習いという気持ちで働いていると自負している。
今は雇われている身。
自由は手にするものではなく、与えられるものに変わっていた。
「お前は何かする予定でもあるのか?」
「分かりません」
いきなり言われても何も頭に浮かんでこない。
何かないかと視線を右上に向けて考える。
すると、銀貨の存在をふと思い出した。
「あ、ありました。美味しいものを食べたいです」
「美味しいもの。分かりやすくていいな」
そういって苦笑いしながらカインの背中を軽く叩いた。