0-8
いよいよカインの目的地が現れそうです。
気の利いた台詞を言った手前、カインは引くに引けない状況にあった。
先頭を歩きながら、何かお礼できそうなものはないかと視線を闇雲に泳がせる。
しかし目に留まるものはどれも少女には似つかない物ばかりで、多くは単なる住宅である。
少女の方もカインのちぐはぐな行動に気づき、声をかけてきた。
「商業区はこっちだけど」
「商業区?」
間の抜けた声で聞き返してしまい、思わずボロがでてしまったと口を押さえた。
「まさかあんた、何も考えずに歩いてたわけ?」
「うっ……。ごめん」
図星をつかれ、力なく謝罪した。
格好をつけようとした事がすぐに裏目に出てしまいもう走っていないというのに顔を紅潮させる。
少女は呆れた様子だが、カインの心意気を察してくれたようで顔をもとに戻してくれた。
「あんた、ルガに来て日が浅いんでしょ」
「う、うん」
素直に答えると、鼻で笑う音が聞こえた。
「やっぱりね。じゃあここがどこかも分かってないみたいね」
この通りに名前があるのか。
カインは答えを言われる前に先に言おうと、標識を探すもそういった類のものはどこにもない。
懸命に探すカインを少女は再び鼻で笑う。
「嘘よ。この道に名前なんてないわ」
からかわれたとカインはバツの悪い顔になった。
流石に悪かったと彼女が頭を下げる。
「ちょっと意地悪が過ぎたわね。私これから商業区に用があるの」
少女が指さす先にここよりも大きな建物が並ぶ場所がある。
そこから先は三階建ての建物が当たり前のようで街の中で最も賑わいを見せている場所ではないかと期待させる。
もしかすると、あそこにカインの目的地があるのかもしれない
「よかったら一緒に来ない?」
少女の誘いにカインは快く頷いた。