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「お前、そこの新入りに教えてやれ。俺はお前らみたいな半人前ですら無いやつに教えるなんざごめんだ」
そういって護衛は遠く離れた篝火の多い場所へと移動していった。
他の護衛たちもカインをあざ笑うかのような薄い声をだしながら、離れていく。
「新入りが入ったって聞いてたけど、まさか俺より年下とは」
薄いそばかす顔の青年は驚いた顔でカインを見た。
背が高く、申し訳ない程度の防具をしているその青年にカインは一種の親近感を覚えた。
獲物は槍を使うようで、中古品なのか手入れがされていないのかあまり良い状態のものではないものを手に持ち、どこか頼りない雰囲気を醸している。
「僕はカインって言います」
まずは自己紹介とばかりに勝手に名乗る。
お辞儀をさげると、相手方もおもわずつられて下げてきた。
「俺はリッツ。お前が来るまでは俺が一番の新入りだった。というわけだから、よろしくな」
握手を求めて来たので思わず差し出す。
握る瞬間にいきなり力を込められ痛みで小さくうめいた。
リッツはそれを声を抑えて笑うので腹が立ち、その場から去ろうとカインは考えたが腕をつかまれた。
「悪い悪い。昔、俺も初対面でやられてさ。つい魔が差してお前にやっちまった」
リッツはお詫びとばかりにモンスターを運ぶのを手伝ってくれるといってくれた。
カインがあれほど力と薪を駆使してようやく動かしていたものを、容易く肩に担いだ。
そうして灯りをカインに持たせ、口で指示しながら野営地より離れた場所にある小川の場所に辿り着いた。
「もっと早く持ってきてくれたら処理のしようもあったんだけどな。もうすっかり夜だから今夜は川の中に沈めておこう」
リッツは腰にさげていた頑丈そうな縄で巧みに死骸に巻き付け、大きめの石に流されないよう重しとしてきつく巻き付けた。
まるで川の中を泳いでいるかのように死骸は右往左往しながら流れに身を委ねている。
魚みたいだとカインは素直に感じたことを呟いた。
「魚だったら食いでがあるのになぁ」
食いでの言葉にスネアとの食事以外何も食べていないことを思い出し、カインは腹を鳴らした。