6-15
気づけば15話になっていました。
そろそろ7章を始める予定です。
カインは勝手に一束拝借をし、紐をほどいてすぐにモンスターの前へまっすぐと並べていく。
全て置き終えるも一回では野営地までに届かず、ざっくり考えると二回繰り返す必要がある。
余った麻紐はモンスターの口と身体との境に括り付け、抜けて落ちないよう確認を込めて軽く引っ張ってやると、首から上の肥大した口にうまくひっかかりその心配はなくなった。
紐を背負う形で身体を前へ傾けながら地を踏ん張る。
ゆっくりとだがモンスターが薪の上を転がり始め、徐々に速度をあげていくも滑らかにとはいかない。
それでも少しずつ野営地との距離は狭まっていき、確かな手応えを得る。
遠近で動く従業員たちの数も減る中で敷いた薪の一束分が終わろうとしていた。
いつしか空は焼けた色から群青へと変わりつつあり、手前の仕事を早々に終わらせた者は灯りのある場所で思い思いに休んでいる。
早く終わらせなければ夜になる、カインは身のこなしを鋭くさせる。
要領を掴み、薪を敷く間隔も置く度に確認などせずとも等間隔に無事における。
野営地のすぐ手前まで敷き終え、すかさず紐に繋がれたモンスターの所へ戻り、もうひと踏ん張りと詰まった声と共に顔を赤くして力の限り牽いていく。
しかし最初の勢いはなく、己の身体能力の低さを自覚するほどに息切れを起こしてしまう。
膝に手をついて肩で息をしながら少し休み再び紐を握るも力が出ない。
気持ちだけでは負けてはいないが、身体がついてこれず目の前に見える野営地が思いの外、果てしなく遠くにみえた。
「なにをしている」
座り込んで息を荒げるカインの横をバルサック率いる護衛達が通り過ぎていく。
両手には枝木や食料になりそうな果実、ある者は背に狼を二匹も担いでいる。
他にも最初は持っていなかったはずの古びた武器や凹みの目立つ防具を抱きかかえる者もおり、怪我でもしたのか肩をかりてよろけながら進む者もいた。
カインの仕事の遅さに護衛達は一瞥だけし、そっぽを向いて野営地へと歩いて行く。
それはまるで道端に転がる小石でも見るような興味のない瞳であった。