6-12
スネアは思ったとおりのカインの答えに喜び、すかさずテーブルセットや皿を召使いに下げらせた。
出発の準備を従業員に伝え、暫く休ませていた馬車に乗り込み御者台の前に陣取る。
手際の良さにカインは唖然とし、街道のはずれに取り残されたままとなっているとバルサックが駆け寄ると、顎でスネアの横に向かうよう指示をだしてきた。
どうすればいいかわからないカインと人形は言う通りに馬車の傍に立つ。
「ん?カイン。お前、武器はないのか?」
スネアが不思議な顔で言うので頷くと、護衛の一人を呼ぶと何やら耳打ちを始めた。
それが終わると護衛は前から二台目の馬車の中から何かを探し出し、早足で主人の元へと戻ってきた。
手には長剣と短剣の間ぐらいのもので両刃のものであった。
「さすがに丸腰というわけにはいかまい。この先、モンスターや野盗が出る故な。これはワシからの就職祝いと思ってもらえたらいい。大事に使いなさい」
大事に鞘に包まれた武器を護衛から手渡され、嬉しさのあまり腰にすぐに身に付けた。
「ありがとうございます。大事に使わさせていただきます」
スネアは頷き、商隊の準備が完了した報せを受け、出発の合図を発した。
各馬車の馬が嘶き、コツコツと蹄を鳴らしながら一団は街道を進む。
足並みを合わせるのに苦労しながらも、既に遠くになってしまったあの村でのことを思いながらカインはテティス商隊の一員となったことを自覚しはじめていた。
やがて日が暮れ始めた頃にスネアが野営の準備をするようみなに伝える。
護衛とは違い、馬車の中で揺れていた従業員達が降り始め、各馬車の責任者らしき人物が必要な道具を次々と降ろしていく。
篝火や天幕、調理用具など各馬車に割り振られているのか各々が降ろしては組み立てを始める。
そしてカインにも初仕事がやってきた。
「カイン。お前はこれからバルサック達と野営に必要なものをとってきてくれ」
スネアはそれだけいうと、今しがた天幕を組み終えたグループに次の指示を与えに奔走していた。
カインは人形と共に商隊より離れた場所で散開して警戒にあたるバルサックに声をかけた。
「話は聞いている。お前は俺たちと共に周囲の警戒にあたるが、その前にこの辺りに危険がないか調べる必要がある」
「危険があるんですか?」
周りは開けた土地で危険があればすぐに察知できるぐらいには障害物はない。
「そうだ。ここは確かに視界も良い場所だが、それは相手にとっても同様だ。例えばあれだ」
そういってバルサックは少し窪地となった場所を指さした。