0-7
まだ冒険に出れそうにありません、申し訳ないです。
ただ大事な出会いですので、気を長くしながらお読みください
迫る刃を避ける事を考え後ろに下がろうとしたが、壁の事を失念していた。
男はそんなカインの様子を嘲笑い、ついには横腹に刺さろうかという場面であった。
「避けて!」
両者の間に割り込むように突如、声がやってきた。
カインはその方向が右からだと知り、よそ見をする余裕などなかったはずだが思わず頭が動いてしまう。
男の方も何事かと一瞬の隙が生まれ、手を止めると同時に遠くへと蹴り飛ばされた。
二転三転した最後に壁に運悪く頭を強打し、動かなくなった。
「逃げるわよ!」
「えっあっ」
カインが答える前に腕を既に掴まれていた。
そのまま勢いよく駆け出し、つられて走り出す。
頭からローブを深く被り顔はハッキリとは見えないが、高い声と握る手の細さから少女であることはすぐに分かった。
引きつられるままに小路という小路を進む。
カインはふと後ろが気になるも男の追う様子は確認できない。
デタラメに右往左往と進み、ついには大きな道へ出た。
大通り程ではないが人通りがあり、安全な場所であることに間違いはなさそうだ。
少女が急に立ち止まるものなのでカインは少女の背に危うくぶつかりそうになりつつ、横へと逃げた。
「も、もうだいじょ、ぶ、よ」
少女が肩で激しく息をしながら途切れ途切れに言う。
やや足元がおぼつかない様子で心配になるも、カインの方も同様に息を荒くする。
「あ、ありがとう。助かったよ」
お礼を述べると、少女の口元が緩んだ。
よく見ると口の周りに汗が浮き、よほど暑いのだろうと察しがつく。
「暑そうだし、脱いだら?」
多少マシになった息で言うと、少女は首を横にふる。
単純に我慢強いのか、素顔を人に見せれないのか。
しかしちゃんとしたお礼をしたいと考えたカインはひらめいた様子でポケットに突っ込んでいた小銭を確認した。
「だったらちょっと付き合ってよ」
カインの言葉に少女は首をかしげて不思議そうにした。