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丁字路を右手に折れ、進むほど丘を降りたときのように家もまばらと散っていく。
家の灯りは今はもう頼りにならないほど少なくなり、再び雲が月を完全に隠してしまっている。
カインは夜目の中で少しでも景色に明るいものを求めて視線を彷徨わす。
すると、街道との接続部にあたる村から伸びる細い道の端に白い花が群生していた。
自ら非常に弱く発光しているかのように周りが暗闇にも関わらず、白い花の周りだけはほんの少し照らされている。
カインのいる位置は今や暗闇といっても差し違い無いほどになっているため足元に何があるのかすら分からない。これといった障害物はないはずだと信じ込むも痛いのがあったら嫌だなと悪く考えた。
しかし進む以外に道はなく、カインはつま先を震わせながら一歩ずつ丁寧に進み、息を震わせながら白い花が咲く畦のような場所へとついた。
白い花は花弁が8枚あり、変則的に外へ向いて開いておりどれも個性的な咲き方をしていた。
茎は短く、花との間は親指ぐらいしか離れておらず、カインは躊躇いなく一つちぎり取った。
灯りの代わりとするには不十分ではあるが、一先ず何かしらの希望がほしいと感じたためであった。
「出口が見えるね」
カインの視線を人形が辿る。
村の入口から伸びる細い入り口の終わりに別の道が合流しており、道幅が太くなっている。
ふと村を見返した。
なにやら灯りが無数に集う場所がある。
あそこは確か麦畑があった場所であっただろうか、曖昧な記憶をたよりに思い返す。
灯りはチリチリと揺らめきあい、密集したと思えば周囲に散らばっていった。
松明の光――カインを探しているのだろう。
しかし、当の本人はもう出口の前までやってきている。
誤解を解くほどの時間はなく、しかしカインは立ち止まるわけにはいかず、わだかまりを残しつつもカインはもう二度と村を訪れることはないと頭を振り、細い道を歩み始めた。