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落葉落枝したものを踏みしめる音が耳に入る度にカインは追っ手を心配し、その都度、倉庫の方を振り向いて追手のことを考える。
倉庫はまだ目と鼻の先に見えるがまだカイン達が逃げた事は広まっていないようだ。
光は今のところカインの蝋燭台だけで自分の周りしか鮮明に照らさないが、仄かな残光に照らされた先に、前を黙々と進む人形が見える。
森の奥では光る眼が幾つか見えるが、カインが目を合わすと視線をはずしどこか遠くへと去っていく駆け足が聞こえる。
そうして歩き続け森を抜けると、村の反対側へとやってきた。
此方側は家の数も多く、ほとんど灯りをつけている。
迂回したい所だが、北と東と南は集落が広がっており、必ずここを抜けなければならない。
比較的あかりの薄い箇所、それと家があまり密集していない南をカインは選ぶことにした。
灯りが遠くからでも分からぬよう、カインは葉が多くついた大きめの枝を選び、集落から見つけられないように蝋燭台を隠してやりながら、足元に灯りが残るようにして小丘を下りはじめた。
寒暖差によるものなのか背の低い雑草達は湿っており、露のせいで滑りそうになる。
すかさず人形が動き、支えてくれながら共に平地までやってきた。
「ここから北東へ進もう」
灯りが少なく家も少ない。
遮蔽物は家以外には特にないが大きく育った麦畑があり、中に紛れて腰を屈めて進めばある程度は姿を隠すことが出来るはずだ、とカインは考えた。
人形は背丈が大きいので、四つん這い担ってもらうしか無い。
それを抜ければ丁字になってる場所にさしかかるので、そこを右手に折れれば村の出口となっている。
カインは麦畑を指差し、次いで四つん這いの姿をした。そして、その場で豚が進むように動き、再び立ち上がり指でぐるっと村を出るための道筋を伝えた。
人形はこれまでとは違い、何度も首を縦にふって頷いてくれた。
「よし、じゃあいこう」
カインは少したるんでいた服のシワを伸ばすと、集落の中へと足を踏み入れた。