6-5
外の様子を伺う事ができる場所はないかと蝋燭台を持って、四方で囲まれた壁を隈なく探す。
一箇所、剥げ落ちそうな場所を見つけ、カインは爪で何度もひっかくと呆気なく木の皮が落ちた。
そうして小さいが穴ができ、覗き込む。
夜空を雲が覆い尽くし、月の姿を隠している。
こちら側は森なのだろうか家の灯りすら見つけることはできない。
しかし暗闇はかえってカイン達には好都合であった。
出口は扉のみで、見張りの存在は確認できない。
どうすれば、と考える。
見張りの姿が見えればいいが、こちらからは見えない。
ならば来てもらう他ない。
カインは考えた末、人形に身振り手振りで考えを伝えた。
少し沈黙の後、人形は頷き同意を得た。
カインは柱の前へ行き、捕まった当時と同じように人形に縄で柱に括り付けてもらう。
縄は見た目は結んでいるかのようにするが、実際にはすぐに解けるようにした。
そして人形は扉の横で姿勢を低くし、すぐには気づかれないよう身を潜めた。
準備が整い、カインが息を吸い込み声と一緒に一気にはきだす。
「いたたたた!痛い、痛い!」
大げさに手足をのたうち回らせ、痛みを訴えるフリをする。
視線は扉へ釘付けさせ、見張りを今かと待ちわびながら情けない声を出す。
しばらく続けてみるが、ドアが開く気配はない。
最初は勢いのあった動きも何だか次第にやる気がなくなり、ばたつかせるのをやめ、声だけ迫真に演じるもついには馬鹿馬鹿しくなって口を閉ざした。
覚めた目で立ち上がり、人形に扉を思いきり壊すよう伝えると、想像した通りに重い蹴りをあびせてくれ、結果、外へ出て倉庫の周りを確認しても見張りの姿はどこにもなかった。
最初から単に存在していないだけだと悟り、カインは人形と共に森へと入った。