6-2
カイン達は殺されはしなかったものの縄で逃げられないように縛られ、村の離れの倉庫となっている場所へと連行された。
口元を例のごとく布で覆われ、結ぶ位置が下手くそなため口呼吸をし、その度に布が揺れる。
人形の方は大人しく縄につき、カインの後ろを歩く。
砂は未だ全身に纏ったまま、剥がれる様子はない。一体どういう原理なのだろうか。
「入れ」
先頭を行く男が顎で倉庫へ入るよう命令した。
カインはその男を一瞥し、頭をかがめて中へ入った。
狭く、汚らしい。
まだあの牢屋のほうがマシと思えるほどに不衛生である。
木の床は腐り、カビ臭い上にカインの前をネズミが横切った。
灯りは蝋燭が入り口ドアの横に一本だけテーブルの上の木皿にのせられており、随分と使いまわしているのか蝋がまとわりついている。
人形も中へと入ると、先頭の男が中へと入ってきた。
そして、太い一本柱にカイン達の縄を括り付けた。
「お前たちの処遇は村の者たちで決める。それまではここにいてもらう」
カインは何も言い返さずに黙って頷いた。
しかし目からは反抗の意思は失われていなかった。
まっすぐと男の目を見つめ、視線を決して外すことなく見つめ続ける。
男も不気味に思ったのか一度だけカインと目をあわすとすぐに外へと出ていった。
残された二人は柱を背もたれに座って一息ついた。
「捕まっちゃったね」
ルガの街にきておそらく二日目ぐらいだろう。その間に二回も捕まるとは不運が重なる。
そのせいか放つ言葉にあまり悲壮感はでておらず、どこかあっけらかんとしてしまっている自分が怖い。
人形もそんなカインに黙って頷き、しばし休むかのように頭を下げて項垂れたような姿をとった。
本当は人間なのではないだろうかとカインは少し笑い、同じくして目をつむる。
迷路を歩き続けた疲れがどっと押し寄せ、気が付かぬ間に眠りに入った。