6-1
6章になります。
迷路を抜けたカイン達はついに森から見えた集落に辿りつきました。
しかし村人たちは部外者のカイン達を捕らえてしまいます。
カインたちはここをどう抜けるのか、お楽しみください。
カインは鼻歌交じりで森の中を進んでいた。
疲れと空腹で倒れそうだった時もあるが、今や嘘かのように感じない。
ご機嫌のまま進む中で人形は辺りを警戒してまるで主を守る護衛のように警戒している。
乾燥した枝木を踏み、乾いた破裂音が響くがそれさえも人形は反応する。
心配しすぎなのではとカインは内心、呆れているも目指したゴールを前にすぐに上機嫌と変わる。
ポケットの中で互いにぶつかり合いながら鳴り合う銀貨の心地よい音色に耳を澄ませ、顔も自然と緩んだ。
集落の入り口が見えたのは日暮れに差し掛かる頃であった。
森の中で左手に道らしきものを見つけたのでそちらを選んで進むと程なくして見えてきた。
字が読めないので何という村なのかは分からないが、大きなアーチ状の入り口は間違いなく村の入口であった。そのアーチの横には一人の男が立っており、カインの姿が見えると横に携えた槍を構えた。
「ち、違います。敵じゃないです」
カインは誤解を解こうと走り始めた。しかし、入り口周囲の村人達は悲鳴をあげ、一目散へと村の奥へと逃げいてく。一人構える男も大声で村に何かを叫び続けており、その声に呼応したのかそれぞれが得意な武器を手にした人たちが次々と集まってくる。
そしてある程度の数が纏まると、カイン目掛けて襲いかかってきた。
堪らず急停止をして、逃げようとしたが大の大人、それも武装した複数人が物凄い形相で進む姿に足がすくんでしまい、気づいた時には囲まれてしまっていた。
「囲め!絶対に逃がすな!」
男たちは槍で円を描くように槍の先端をカイン達に向け、外へ出ることの出来ない陣形をとる。
ギラつく瞳と呼吸を荒くさせながら地面を足裏で擦りながらまるで品定めでもするかのように殺気立っている。
カインは人形と背中を合わせ、互いに相手に目を配らせながら悪い未来に備える。
「まずはその人形からやれ!人間は後回しだ」
一人、武器が長剣の男が囲う男たちの外から腕組をしたままで指示をだした。
どうやら指揮官のようで体躯も一回り大きい。
「ま、まってください!」
カインは震え声で叫んだ。
集落の奥まで届くのではないのかというほど、大きな声に森の音も静まり返った。
そのおかげか場が緩んだ。槍の男たちの表情が困惑し、隣同士で顔を見合わせる。
両腕を構えていた人形もゆっくりと腕を降ろし、やる気のない状態で腕をぶらつかせる。
カインも無抵抗を示すため、両手をあげて降参の意思を伝えた。