5-4
最初に梯子が見えた。
カインはどこまで続くのか覗き込むと、地下道のようなものがみえた。
そこまで深くない様子ですぐに地面に足が付けるほどの深さしかない。
進むべきだろうか。
カインが悩んでいると、人形は先導するように梯子を使いぎこちない動きで下へと降り始めた。
松明を器用に脇に挟み、片手で梯子を持ちながらゆっくりと降りていき、地面に降り立つ。
辺りを見渡し、梯子の直下から離れるとカインを見上げた。
降りてこいという事なのだろうか、わざわざ松明を自分の肩より上へと掲げ、灯が広範囲に届くよう補助してくれている。
カインは生唾を飲み込むと、梯子に足をかけゆっくりと降り始めた。
滑らせないよう一歩下がる毎に何度も地面と自分との位置を確認し、手の腹に冷や汗をかきながら慎重を重ねて降りる。
息も荒くなる中で足が地面の感触を捉えた時、安堵から大きな深呼吸をした。
見守ってくれていた人形も頷く動作をしてくれた。
そしてカインたちは辺りを見渡す。
仄暗い下水道のような造りで幅僅か二十センチ足らずの水が流れている。
近づいて見るとどうも汚水ではない様子で、単なる湧き水のように思えるほど透明色のあるものであった。
「ここはどこだろうか」
どこかで水滴が落ちる音が聞こえ、なにやら寒気がする。
人形が松明を全ての方向に廻すと、迷宮のように幾つもの通路が映る。
そのうちで一番広そうなものをカインは選び、人形に行き先を伝えるかのように指先で道をさした。
人形も意味を理解してくれたのか、松明をカインの指先に向けてくれた。
この道は他のと比べて妙に広く、どうも気になる。
水路とは別方向になってしまうが、狭い道で何かしらの問題が起きるよりかは余裕がある方がいい、カインはそう考えた。
「先をお願い」
カインの言葉に人形は頷き、二人は道を進み始めた。