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随分と掃除されていないのであろう小屋の中は、あちこちに埃が蓄えられており、それはカインの歩く床のすぐ側で山盛りに積もられている。
湿気のせいか材木が反ってしまい見事に形の歪んだ家具や釘が抜けて外れ落ちた窓枠など、荒れたい放題となっている。
小屋である以上部屋は決して広くはないが、カインは踏みしめる度に音のなる床に一々驚きながら、周囲に目を配り襲ってくるような物はないかと胸の内で怖がりながら、奥で待ち続ける人形が持つ松明をたよりに進む。
無駄に汗をかきつつも人形の前まで辿り着くと、今度は突き当りの丁字になった通路の右手に案内されると、すぐに行き止まりとなった。
ここはどうも食料庫だったような形跡がある場所で三面の壁それぞれには、等間隔に上下の棚同士の距離を保つ簡素な5段の棚が置かれ、最下段には使い古された麻袋が重なりあって置かれている。
そのうちの一つを手にとり、中身を覗くも中には何も入っておらず、空け口を下へ向けて揺すると小さな粒が砂のようになって下へと落ちていった。
食事にありつけるかと期待したがそれは無理な願いであった。
空腹を心配して手で腹部を擦る仕草をして自分を宥めるカインに人形はふいにカインの肩を叩いた。
「なに?」
人形はカインの前に立つと、麻袋を一つずつ丁寧に畳、空いたままとなっている棚に重ねて置いていく。
そして床においてあった最後の一つが退けられた際、引手口と共に大人一人ぐらいが入れるような大きさの枠が現れた。
カインがなにかと近づこうとすると、人形が前に立ちはだかりそれ以上は進ませようとはしない。
「何が入ってるの?」
カインの純粋な問いに教えることはせず、黙ったまま食料庫の入り口から追い出すように仁王立ちとなって迫ってくるので耐え兼ねて丁字にの分かれ道手前まで戻った。
ならば、と思い左のほうへと進む。
こちらは何も無い殺風景なもので何一つとして置かれていない部屋であった。
ただ四隅には湿気による黒いカビが生えており、天井に迫るような勢いで縦筋を作り、漂う異臭はこれらによるものであろう。
カインは再び、人形が仁王立ちしたまま中へと入れないあの部屋に戻ろろうとしたが、今度はすんなりと通してくれた。
そして、あの引手口を見つけると物は試しと指を入れて開けてみた。