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5-1

新章となります。

小屋とカインを巡る冒険になります。

 不自然といえばそうかもしれない。

 小丘との境は明確に分かれており、カインが立つ場所は人の手入れが入らないせいで地面に無数の凹凸が生じ、地表にまで姿を現した針の樹が跋扈する非常に歩きにくい土地であるが、ある一線からは背の高さを低く揃えられた緑の芝が小屋まで続く道筋となっている。

 カインは罠ではないかと勘繰り、芝の直前まで向かいそこで足を止めた。


「誰かいませんか!」


 小屋に向かって大声で叫ぶ。

 森の中にカインの声が木霊し、誰かが返事をくれるのを期待してしばし待つも何も変化は起こらない。

 近づきたい気持ちと深読みする心とが対となり、カインを葛藤させる。

 この場を無視し、先へと進めば良いと考えるが、今の森は視界が悪くなり始めていた。

 降雨の後、水煙が辺り一面に発生してしまっており、視界は非常に悪い。

 ここまでモンスターに遭遇せずに来れた事は幸運であるに違いないが、いつまでもそれが続くとは限らない。

 慎重に動かなければならない所でカインは警戒心を薄めていることを頭の隅では理解していた。

 しかし経験皆無の自分に言い聞かせる事はできても体は自然と危険の方を向き、光誘わる蛾のように芝生へと足を踏み入れた。

 雨水に濡れた無数の柔らかな緑の針はそれまで泥濘んでいたカインの足を優しく受け止める。

 足裏から頭にまで伝わる心地よさにカインはまた一歩と進み、何事も無いままついには小屋の入り口まで辿り着いた。

 ドアはなぜか鉄扉で、長年この場で受け続けた気候によって大部分を錆びつかせている。

 まずはと思い、拳で数度叩いてみる。

 鈍い金属音が叩いた場所を中心として音の波紋が広がり、少しの余韻を残して消えた。

 カインは半歩下がり、相手が出てくるのを待つもドアの内側からは何一つとして音が聞こえない。

 留守なのか、放棄された場所なのか。

 思い切りを決めて扉を押すも重厚な扉は微動だにすることもなく、巨大な壁のようにカインの力を物ともしない。

 自らでは歯が立たない事を悟り、二度目は激しめにドアを叩いた。

 

「誰かいませんか。いたら返事してください」


 カインの声は望み薄からか先程の大声が嘘のように今は力弱く消えてしまいそうなものへとなっていた。

 それでも返事はないのでカインは小丘を降ろうと小屋に背を向けた所でようやく扉が動く音が耳に入り込んできたため、カインは表情を明るくして振り返った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 相手、優しい人だといいけれ、ど……。
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