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頭に何か当たりカインは目をゆっくりと空けた。
半目状態で意識がまだ浅いうちに再び何かが当たり、それは数を増していく。
今しがた頬に当たる感触を指でなぞると液体――雨であった。
まちまちと降り始め、本格的になる前に木陰に避難した。
おそらくは朝なのだろうが空は灰色の雲で覆われており、カインの気持ちもやや暗くなる。
雨除けとなる物は特には見当たらず、仕方がないので木陰から木陰に移る要領で移動するも針の様な木達の葉はみな枝分かれしており、葉自体に膨らみがないので大して雨を防ぐことにはならない。
それでも多少はマシにはなるので、頭を守るつもりで手のひらを広げて雨具のつもりで先を進む。
しばし歩き、雨が強くなりはじめる。
遠くで雷が鳴り、ついには土砂降りとなって鳥を撃ち落とすかの如く鉄砲水が森を襲う。
堪らずがむしゃらに走り、どこか雨宿りできる場所はないかと視界が悪く始める森でちょっとした洞窟を見つけた。
軒が僅かにでており、明かりを当てずとも行き止まりが外からでも分かる程、矮小な洞窟であった。
先客の様子は無く、安心して休めると感じたカインはしばし居座るべく濡れた上着を見つけた突起した場所に引っ掛けた。
火は起こせないので寒さは耐え凌ぐしかなく、両手で肩を激しく摩りながら熱を保つ。
「へくしゅっ」
クシャミが出てしまい、体を震わせる。濡れた髪と上着が吸い込んだ雨水が体に残る最中、遠くの空の具合を伺うも雲はどこまでも続き、晴れる見込みは皆無である。
今日は一日中雨だろうか。
予定に遅れが生じてしまい、このやるせない気持ちにカインはため息を吐いた。
何かとつけて上手くいかない事ばかりで嫌になる。
あの牢屋のときと同じ気持ちが芽生え始めるも、雲の隙間から僅かに空いた場所に柔らかい光が見えた。
気持ちも少し晴れた気持ちで見つめると、それは陽の光ではないことにきづいた。
カインは思わず立ち上がり光の正体を突き止めようと目を凝らすも距離が離れすぎているため明確に捉えることはできない。空に誘われるように駆け上がる、もしくは吸い込まれるようにして正体不明の光は上へ上へと昇り詰める。
正体を突き止めようとするも光はやがて静かに勢いを失い、空は再びどんよりとしたものへと戻った。
あれは一体なんだったのだろうか、カインは光の消えた場所をいつまでも眺め続けた。