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小鳥達が短くそして時にはまるで人がしゃべるような抑揚をつけて鳴く。
森の中は人の手が一切加わっていないようで人工的に敷かれた道などはなく、獣道だろうと思われる草木達の生育が悪い箇所が伸びている場所があり、カインはそこをたよりに集落を目指していた。
一本一本が大きい木のため葉が日光を遮ってくれており、暑さで困る事はないがいかんせん喉が乾く。
思わず口をあけて喘ぐように息を漏らしつつ、水場を探そうと必死になるも土地勘がない。
岩肌の上に立った時は湖があったが、川は見当たらなかった事を思い出す。
もっとよく探しておけば、と自身を叱咤するも今は一人だという事を思い出し、無駄な事はやめようと怒りを解いた。
「水、どこかに水」
うわ言を呟きながら右往左往と道なき道を進む中で先程から何かが後ろから着いてきていることに気づいた。
喉の乾きからか頭痛を微かに感じつつも、カインは後ろの存在を認識しており、いつでも相手できるよう頭の中に叩き込んだ。
何かは距離は詰めることはせずしかし、決して離れようともせず、ある一定の間隔を維持しつつカインの動向を伺っていた。
正体を突き止めたい衝動に駆られることはあっても未知数の相手に無理はできぬということで悶々とした思いで無視を決め込む。
やがて道はやや開き伸びる木々にも変化が見られるようになる。
枝分かれ激しく葉を大量に蓄えていたものが劇的に少なくなり、代わりに針のようにまっすぐと気持ちよく伸びるものが目立ち始めた。
枝に備わる葉の形も細く尖ったものへと変わり、カインはこの種のものは初めてであった。
興味本位から手で千切り指の腹で転がしながら触ると何やら程よく肉付きのよいものが指の肉に軽く食い込んできて不思議と気持ちが良い。
香りはと嗅いでみても普段のものと大差なく、姿や形が違えど樹木であることに違いはないことがわかった。
カインは近場から枝を細長い枝を拾い、杖代わりにして果てが無いように思える森の奥を目指して歩き始めた。