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最後の一本を踏み抜き、カインは久方ぶりの地上へと出た。
そこは冒険者ギルドがある建物とは違い、街中とは程遠い森の中であった。
薬草採取で訪れた森にどこか似ている気もするが、森の違いなどカインには明確には分からない。
ここがどこであるか、正確に知る必要があるとカインは洞窟の入り口横の数メートル足らずの岩肌を昇り始めた。
次第に周囲の木よりも高い位置へと目線が上がり、遠くのほうまで見渡せる。
「全く分からない場所だ」
四方は山に囲まれ、北側の山の麓には湖が見える。
西にはその中でも一番高い山が立ちはだかっており、あれを越えるのはまず不可能だろう。
東と南からは細長い街道が伸びており、街道同士がぶつかる場所に集落が見えた。
目指すなら集落だろう。
カインは足を滑らさぬよう気をつけながら降り立つと、何もない地面に落ちていた小石で地図を作る。
即席のもので形もかなり歪で自分にしか分からぬようなものだが、それで十分であった。
集落までは歩きで二日あれば到達できる。
その間に身の安全を第一として可能であれば食料も確保したいところである。
幸いな事に陽は高く、位置から察するに朝方であると予想がつく。
何か武器になりそうなものはと辺りを見渡すが、そう都合よく落ちているものはない。
手で掴むには少々胴回りの大きい幹が茂みの下から顔を覗かせていたのを見つけ、一先ず持ち上げた。
地面に突き立てるようにして、自分の背丈よりやや大きいそれを見上げる。
先端は細長く尖っており、何かにかみ砕かれたような歪な形にカインは思わず鳥肌がたってしまう。
他に良さげなものは見当たらず、持ち運ぶには重たすぎる。
せっかく拾ったがと名残惜しそうに再び地面に転がし、あのナイフをすぐに抜けるよう胸の内側にあることを意識しながら通りの良さそうな道を選んで進み始めた。