4-2
ついに一人となったカインは少女に会う決心をつけ、牢屋から出た。
落ちていたナイフは肌身離さぬよう胸の内側に入れる。
そして靴を脱ぎ、素足の状態となって足音を極力出さないように階段をのぼっていく。
足裏の熱をひんやりとした石造りの段差が奪っていく。
カインは息する音も逃さぬよう口に手をあてながら先を急ぐ。
螺旋階段を上へ上へと進み、ついに扉の前にやってきた。
内側には人はおらず篝火が少し離れた所に置かれているだけであった。
カインは扉の前にたち、靴を履くと扉に耳を当て外の様子を知ろうとした。
木の扉なだけあって外の音は容易に聞こえるはずだが、無音が続く。
不自然に思い、扉の表面に細々とできた切れ目を見つけ、そこから外の様子を伺う。
そこは石の洞窟の続きであった。
注視しなければ分かり辛いが、やや勾配のある坂道のようで奥まで続いているのがわかる。
今度は可能な範囲で左右を確認するも人の気配はない。
カインは緊張しつつもドアハンドルに手をかけ、錆びた蝶番が音をならさぬよう慎重にあけた。
「やっぱり誰もいない」
扉の外にも篝火が設置してあり、周囲を明るく照らすだけであった。
どこまで続いているのかまでは分からないが、等間隔で奥まで点在する赤い点は松明だと想像がつく。
一本道なようで迷う必要はないようだ。
カインは静かに、しかし警戒を怠らずに壁伝いに歩き始めた。
思っていた通りの石の路面で最初の松明を拝借しつつ進む。
そうして十分足らずで急に光が見えた。
洞穴から覗き込むような眩い光でカインの足は軽くなる。
持っていた松明を投げ捨て一目散に走り出した。
自由へと還れる場所がすぐそこまで来ている。カインの胸の内は嬉しさで溢れそうであった。