4-1
カインはナイフを辛うじて動かせる右手で握ると器用に鋸を引く要領で縄を切った。
長い間結ばれていたので手足の鈍さを感じ、手首を回しながら軽く動かし次いで足の縄も解いた。
自由に動けるようになったが鉄格子がカインの前に立ちはだかる。
「鍵か?ほら」
女性はポケットから鍵を取り出すと、カインの足元に投げた。
カインはそれを拾い上げるつもりもなく、警戒して後ろへ半歩下がった。
「何が目的?」
「目的……か。特にないな」
「え?」
カインは豆を食らったような顔で女性を見てしまった。
「お前、ただの冤罪で捕まってんだろ」
カインは首を縦に振った。
女性は何か知っている様子であった。
「気づいたらここに運ばれる途中だった」
カインは最初から女性が現れる一連の流れを説明した。
時折、黙り込み話が止まる事数度あり、どこか腑に落ちたように頷き、再びカインが説明する。
最後まで説明すると、女性は視線を右上にやりながらゆっくりと頷いた。
「なるほどな。金髪の少女に、お前がしらないフード姿の少女」
「なにか知っているの?」
カインは鉄格子にしがみつき、檻の中から食いいるように女性に問うた。
急な態度に女性は目を開いて驚くも、目を細めカインを見定める。
「一部、な。だが、お前には大きすぎて扱える事じゃない。ここは下がれ」
「大きすぎるってどういう意味?下がれって諦めろってこと?」
「その意味が分からないなら尚更、諦めろ」
女性は最後にそれだけ言い残し、牢屋から素早く階段を駆け上っていった。
腑に落ちないカインは足元の鍵を拾い上げ、静かにそれを見つめた。