3-8
「はぁ……それにしても、いつになった私達の容疑は晴れるのかしら」
「僕もなんだか気持ちを吐き出したら楽になってお腹空いてきちゃった」
仄暗いジメジメとした牢屋でも仲間と二人なら多少の冗談も言い合える。
わずかの談笑でも心は明るく変わり、カインは普段通りに戻った。
「ここを出たらまずはご飯よね。あんた何か食べたいものある?」
「えっ考えてなかったなぁ。きみはなにかある?」
「あたしは屋台ってのを経験してみたいの」
そういえば街には一際にぎやかな場所があったこを思い出す。
きっとあそこならば少女の目的も果たせるだろう。
それと、感謝を込めて何かをごちそうしてあげたい。
「いいね。僕もそこで好きなものを食べたいよ」
「じゃあ決まりね。ああ、早く出してくれないかしら」
少女の声だけで少女の抑えきれない逸る気持ちが表立って現れるの目に見えた。
「ほんと、誰かきてくれないかな」
決して言霊ではないのだろうが、遠くより足音が聞こえ始めたのであった。
二人は口を紡ぎ、カインは横になった。
背を外に向けて目隠しは忘れずに装着する。
足音は間隔と音から察するに一人だけであった。
次第に大きくなる音に二人は固唾を飲み、今度は期待を込めた緊張を始めた。
松明を持っているのであろうその人物はまずはカインの牢屋を照らした。
微動だにしないカインを確認すると、そのまま少女の方へと向かう。
「あんた何者?」
少女の声だった。少女はギルドの地下だと言ったはずだが、相手はギルド職員ではないのだろうか。
二人は何かしら会話を始めた様子で非常に小さな声で囁きあうように会話をしていた。
カインは耳を集中させ、聞き取ろうとしたが音だけで言葉までは拾うことができない。
そうして音が止むと、静かに牢屋が動く音が聞こえた。
カインは喜びのあまり起き上がろうとしたが、相手が物言うまでは横になり続けると決め込んだ。
二人の歩く姿が近づいてくる。
次は自分の番だとカインは自然と口角をあげて、いまかいまかと待ちわびた。
しかし、足音は止まることはなかった。そこには誰もいないとばかりに躊躇う音すら残さず、淡々と階段を昇り、地上へと去っていく音だけが聞こえてきた。
なぜカインは取り残されてしまったのでしょうか