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足音はまばらで隙間なく聞こえてくる。
五人以上はいるであろうその足音は牢屋内で木霊し、カインのすぐ横にいるかのように感じさせた。
鼓動は早くなり、胸の内は気が気でないくらい苦しい。
背面から灯りがさしこむ気配があり、無数の松明がカインの牢屋を照らしているのは明白であった。
拳を握り、微動だにしまいと決意する。
「あの子供ですか」
「そっちじゃない、奥のやつだ」
奥のやつ――カインは金髪の少女を見た。
彼女が何だというのか見当つかないが、ひとまず胸を撫で下ろす。
牢屋の錠が開く音が聞こえ、金属の甲高い軋む音がしたのち、牢屋内に数人が入ってきた。
重苦しい鎧靴のような音が近づき、頭上で止まる。
息を呑みこみ、興味から目をあけるような真似はせず、呼吸は静かに努める。
「この少女ですか」
「そっちだ」
足音が数回ほど動いた音がしたのち、何かが浮くような感覚が瞼に伝わった。
「確認した。連れていくぞ」
「了解しました」
足音達が牢の外へとでていき、錠の閉まる音がした。
再びまばらに音を鳴らし始め、次第に遠退いていった。
最後の余韻がなくなった事を確認したカインは目を見開いた。
僅かな量で息を保っていたため息苦しさを開放するのに必死で呼吸をする。
あの少女は誰だったのだろうか。
結局、カインは最後まで知り得ることはなかった。
「まだいる?」
「お陰様で大丈夫」
「そっ。それよりもあいつら何しにきたの?」
「さ、さあ。僕がちゃんといるか確認しにきたんじゃない?」
しらを切りつつ、少女が連れ去られた方向を見る。
あそこから出るしかなさそうだ。
でもどうのような方法で。それになぜ捕まっているのか。
何かしらの手がかりが欲しい。
「ねえ。さっき言いかけた言葉ってなんだったのか?」
「あれはね。ここが冒険者ギルドの地下だってことよ」
ギルドの地下でした。