3-1
新章となります。
「こいつらは仲間で間違いないんだな」
「はい。あいつらの近くにいました」
「よし、なら牢屋に連れて行け。あとでたっぷり事情を聞こうじゃないか」
朦朧とする意識の中でそんな会話を耳にした。
次第に戻りつつある意識の中、無意識に体を動かそうとしたが手足を縛らえて、動けない事に気づく。
腹のあたりに硬い何かが当たり、ゆらゆらと体は揺れながら時折、上下されながらどこかへと連れていかれている。
目を開けたが目隠しをされているせいで何者かわからないが、薄い布生地のお陰で微かに情報がとびこんでくる。
石壁覆われた狭い空間を進んでいる。
一定間隔に松明が設けられており、灯りが最大になる時に前にもう一人誰かが歩いている事がわかった。
その者は肩に人らしき者をのせており、そのためカイン自身も誰かに担がれている事に気づいた。
「こいつらは同じ部屋でいいんだよな?」
カインを担ぐ者が言う。男だろう、その低い声からは強者を匂わせる。
「そうだ。上からの命令だ。間違えるなよ」
応えた側は女性だった。酒やけした声で淡々とした口調であった。
少女のように深いフードをかぶっているので顔までは分からないが、容易く人を担ぐだけの力があることから想像してこちらも手練なのだろうか。
やがて二人は右に曲がり、突き当りのある廊下へと入った。
左右に等間隔で鉄格子の部屋が並べられ、一番近い右側の中へと入った。
そしてカインともう一人が床に投げ捨てられた。
硬い地面に受け身も取れずに投げられたため、カインは思わずうめき声がでてしまった。
牢屋から立ち去ろうとする二人がそれに気づき、足を止める。
「起きてるのか?」
「関係ないさ」
「そうだな、俺たちには関係ない」
改めて二人は去っていき、静寂で虚しい世界にカインはとりのこされた。
頬に当たる冷たい土の感触が恐怖を増長させるも、意を決して体をおこした。
そのままイモムシのように這うように壁を探し、見つけると背を預けた。
せめて手足が動かせればと一息つきながら、もう一つの袋を見る。
カインは大方、少女だろうと考えていた。
「大丈夫?」
しかし返事はない。
再び、這っていき顎で頭だと思われる部分を軽く叩いてみるも反応はない。
「起きて、起きてってば」
何度か繰り返すもやはり返事はなく、ついにカインは諦めた。
顎も痛い上に、頭を何度も上下させているので気分も悪くなる。
ひとまずおいとき、逃げる算段をつけなければならない。
今度は鉄格子に沿ってゆっくりと這う。
どこか錆びて剥けている場所があればと探しながら注意深く一本一本を観察する。
そうして観察していると右端の縦筋の鉄が丸ごと一本錆びている箇所があった。