1-14
本来、魔法使いって何発も連続して魔法を使えるものじゃないと思うんですよね。
ましてや少女っていうぐらいの歳だと、きっと一つ唱えるだけでも大変だと思います。
喜びもつかの間、カインは勝利を忘れて少女に駆け寄った。
ローブが上下に動く事で息をしていることを確認でき、一先ず安心する。
肩をゆするも、息を激しくさせぐったりと倒れ込んだまま、返事はない。
しかし杖だけは決して離すことはなかった。
「大丈夫?起きれる?」
カインの心配する声に一言も発しない少女をそのままにしてはおけず、背負うとしゃがみ込む。
肩を掴んでもらおうと少女の力なく垂れた腕を掴んだ時、背中を殴られた。
「乙女が倒れてる時にあんたは何してるのよ」
「なにって、運ぼうと思って」
少女の言わんとする事を全く考えずただ心配な顔で応えた。
うるんだ瞳がカインの純粋な気持ち示し、少女はため息をついた。
「そうよね、わるかったわ。ちょっと肩かしてくれる?」
「う、うん。まかせて」
カインが手を握り立ち上がりを補助してやり、そのまま肩へと手をまわしてやる。
息はまだ荒いままだが二人はゆっくりとすぐ近くの森の中へと入った。
そして、周りとくらべて大きな木を見つけ、幹を背に彼女をゆっくりと座らせた。
カインも少し離れて座り、戦闘で火照った体を休ませる。
「まったく。ゴブリンなんてツイてないわね」
「ぼくびっくりしちゃったよ」
カインは手持ちの水筒から水を飲みながらしばらく呆けた。
枝葉の隙間から陽が僅かに差込み、鳥たちの鳴き声が遠くで聞こえる。
風で森全体がざわめき、気を休めるにはうってつけであった。
少女を横目で見ると、カインと同じく水筒を持ってきていたらしく少しずつ飲みながら体を労っていた。
「もう大丈夫?」
カインの声掛けに茂みの奥に見える自分たちがいた平原を見つめたままの少女に問う。
少女は視線を変えずゆっくりと頷き、手に握る杖をローブの中へと戻した。
「大分落ち着いた。ありがとうね」
「よかった。でも急にどうして?」
「魔力切れを起こしちゃったみたい」
少女は恥ずかしく申し訳なさそうに俯いて答えた。
「魔力切れってなに?」
「あんたそんな……まあそうよね。知らないわよね。それじゃあ、助けてくれたお礼に教えてあげる」
少女は体をカインの方へと向け、再び杖を取り出した。