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少女は助かるのか、カインはどう動くのか。
明日になります
本で見たのと実際で見るとではワケが違った。
背はカインよりも少し低い、緑の体色でかみ合わせの悪い歯並びに小骨が歯抜けた部分にひっかかっている。
手にはどこかで拾った木の棒を握りしめ、カインと目を合わせると威嚇してきた。
乾いた低い声で汚らしく唾を吐いて喚いた。
「うわあああ」
カインは思わず腰を抜かした。
先程まで姿すら無かったゴブリンがなぜこんなところにいるのか。
腰につけた得物を抜かなくてはとカインは抜こうとするも手汗と恐怖から柄がなかなか握れない。
「な、えっ、どうして」
起き上がろうにも体が震えて言う事をきかない。
ゴブリンはカインが自分より弱いと判断したらしく、体に力が入れずに立てないカインににじり寄りはじめた。
木の棒は引きずりながら、弱そうなカインを倒そうと考えている。
「ち、近寄るな!」
今出せる力で目一杯叫んだ。
一瞬ゴブリンの動きが止まる。急な大声に動揺してしまったのか、ゴブリンは一歩下がった。
カインも今の一言で震えが収まり、ようやく立ち上がる事ができた。
「近づいたら倒すよ」
かわいい脅しをしながら、ようやく抜けた得物を前に構えた。
所々に刃こぼれがある得物で少し頼りないが、カインが唯一装備したもので扱えるものもこれしかない。
利き手に力を入れ、その時を待った。
「あんた何してるの?」
ゴブリンの背後から少女が無鉄砲に現れた。
手にはいつの間にか三本になった薬草を握り、戦闘態勢のカインを不思議そうに見た。
「逃げてっ!」
カインの忠告虚しく、ゴブリンは振り向き少女に襲いかかった。