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薬草って実際にどこに生えてるんですかね
街の乾いた空気とは違い、森の中は蒸し暑い。
薄着のカインですらそう思うのだから、頭からフードをかぶって表情を見せない少女はさぞかし辛いはずだ。
実際、息苦しさから呼吸を早めながら辛そうにしている。
「暑いなら脱いだら?」
カインは何度目の問いだろうかとふと思った。
しかし少女は頑なに首を振り続け、森の奥へと歩を進める。
地面に隆起した木々の太い根で転ばぬよう、時には飛び越えたりしてすすむ。
そして誰ともすれ違わないまま、目的地と思わしき開けた草原へでた。
「ここならありそうね」
先程まで肩で息をしていた少女であったが、今は元気な姿となって手当たり次第に草を掻き分けながら薬草を探している。カインも負けじと見よう見まねで探索するも似たような草の多さに早くも投げ出しそうになってしまった。
「あった!」
近い場所で少女が声をあげた。
「どんなやつ」
カインが少女に近づくと、少女は手に握る薬草を見せてくれた。
オレンジの小さな花がついた細いものであった。
葉の付き方は互い違いにずれて生えており、嗅ぐとほんのり爽やかな香りがした。
「これであと五本よ。あんたも早く見つけなさい」
「う、うん」
少女に一敗したカインは今みた形と匂いを元に少女とは逆方向を探していく。
根本を掻き分けながら進むと、ようやく一本みつけることができた。
見せてくれた物よりやや小ぶりだが、それでも薬草には違いない。
自分も自慢してやろうといつの間にかすぐ傍にまでやってきていた少女に声をかけた。
「こっちにもあった!」
嬉しさ混じる声に気づいた人影が振り向いたが、カインは戦慄した。
醜い顔に尖った鼻、見すぼらしい衣服に酷い体臭。
カインは誰かに教えてもらわずとも、それがゴブリンであることを知っていた。
ついにモンスターと出会ってしまいました。
カインが倒せるか不安ですが、見守ってください