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「お連れ様は必要ないのですか?」
ハンネスの疑問は最もであった。
「えーと、その、彼は自分で用意できるので心配ありません。僕のだけお願いします」
「すみません。こちらが勝手なまねをしてしまって」
ハンネスは深々と頭を下げた。
大きなサックの中身を一度取り出し、被っているものは再び売り場へと戻す作業が始まった。
手伝いましょうか、と声をかけそうになったが、ハンネスをまた謝らせそうで歯がゆい気持ちで見守る事にした。
店主ということだけあって取り出した場所がすぐにわかるのだろう、迷いも躊躇いもなく手にしたものを素早く取った場所へと正確に商品を戻していく。少しの合間にでも店内のものを物色しようと考えていたが、それをする時間はなさそうだ。
「おまたせしました。中身をご確認ください」
一際小さくなったサックは今のものとは違い、丈夫な材質……麻などではなく綿でもなく、触ると妙に弾力があり、指でつまめるほどに肉厚である。
ちょっとやそっとでは破れるようには見えず、滑らかな表面は耐水にも優れているように思える。
「すごい素材ですね。初めてです」
「いえ、特別なものではないですよ」
「え?だってこんな丈夫そうなもの……。一体何で出来てるんですか?」
「こちらの製品は沼地に住むモンスターの胃袋を加工したものです」
その言葉にバルザックと共に初めてのしごとをした際のことが記憶に蘇る。
倒したモンスターを時間をかけて運び、リッツのおかげで解体士の所まで届けて素材にしてもらった。
その後はどうなったか知る所ではないが、おそらくあの素材も似たような使われ方をしているのだろう。
「そのモンスターは強かったりします?」
「決して弱くはないですが、沼地の奥に住むモンスターに比べれば足元にもおよびませんよ」
それは自分一人でも倒せる範疇なのだろうか、と少し想像をふくらませる。
「それで、中身なのですが」
「え、あはい。確認しますね」
カインは慌てて新たなサックからハンネスが選んでくれた商品を取り出しはじめた。




