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12-2

 2つの街に訪れた経験から市はあまり大きいものではないと考えていた。

 ルガの場合は露天は市、店舗は商業地区と住み分けされていた。

 ボドカはまずは露天から始まり、奥へ進むたびに店舗が現れ、それらを含めて市を形成していた。

 バイマールズはボドカと同じ形式であったが、相違する点がある。

 それは市の規模であった。

 始まりから終わりまでは百メートル程度のものと考えていたが、想定していた終点よりも先にずっと先に続きが見えるのだ。

 さらにいうと、そこからが市の始まりに過ぎないという点であった。

 終点からは数本の道が枝分かれして伸びている。

 新しい道の始まりには文字が書かれた鉄の看板が置かれ、取り扱う商品の種類が書かれているのだと想像する。中には絵が加わることもあり、豚、鳥、モンスターが描かれているものには、それが肉を扱うものだとカインにも判断できる。

 日常生活において頻繁に利用されるものはこうして見た目ですぐわかるようになっているが、そうではないものは文字のみでカインには分からない。

 道を訪ねようにも強面で背も高く、人間とは違う蜥蜴族たちに聞くには勇気が必要だ。

 そもそも言葉が通じるのだろうかと悩んでしまう。

 レーベやモニカの時は話せたが、少しカタコトであったような気がする。

 そこから察するに、種族が独自に使用している言葉の存在を匂わせていた。

 しかしながら、ここでうだうだしていても仕方がない。

「とりあえず、こっちから行ってみようか」

 カインが指さす先は身を防具に固めた者が歩く通りでおそらくは、この通りで正解であると感じていたためであった。

 人形も同意見なのかうなずいて、二人は蜥蜴族たちからの無意識な圧力に肩身の狭さを感じながら進む。

 

 道はどうも間違いのようであった。

 通りの始まりの周辺には調理器具や農耕具などが店頭のショーケースに飾られている。

 今ならすぐ引き返すのは楽だが、これもまた経験と楽観的に考え、品々を見てまわる。

 その内の一つのみつ鍬が気になり、置かれた値札をそっと覗く。

「高い……」

 どのようにしてこの値段なのか不明ではあるが、想像していた価格の3倍は違う。

 確かに精巧な作りでカインの村で使われていた物とは出来栄えも随分と違う。

 正確に揃えられた3つの爪、亀裂の生じていない樫の木持ちて。

 鍬が外れないよう打ち込まれた楔も錆びた箇所は一つもなく新品そのものである。

 これは覚悟しておいたほうがいいかもしれない。

 カインが欲しているのは単なる旅用品だが、専属の職人が扱うものの可能性が高い。

 市だと思って簡単に考えていたが、ここは商業地区だと考えを改める必要性がでてきた。

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