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話はそれだけですぐに終わった。
ギルド長の案内の元、支部の入り口付近で待っていると小袋をもったギルド職員がカインとセルバスにそれぞれ渡した。
中身は銀貨十数枚と初めて触る金貨が二枚程入っていた。
受け取り、再び船が係留されている場所へと戻る。
依然として船はギルド員が立ち入り捜査をしており、身元が分かる者は既に解放されて下船していた。
甲板から人形が手を振る。
まさに身体検査を受けようとしていた瞬間で、カインは慌てて船内へとのりこんだ。
事情を説明しても首を縦に振らない検査員にやきもきしていたが、セルバスが口添えをしたあと、もらったばかりの銀貨を二枚手渡すと、検査員は黙ってまだ未検査の隣の船員の取り調べを始めた。
「ありがとうございます」
セルバスの気の利いた行動に深々と感謝を述べる。
「気にするな。お前には色々と迷惑かけちまったからな。罪滅ぼしと思って勝手にやったことだ」
「ええ全くもって。でも、なんとかバイマールズへ着くことができました」
「お前、これからどうするんだ?」
カインは少し考えた。
まだこの街のことは何も知らないので観光がてら少し滞在してみようと頭に計画を描く。
ただ、すぐにギルド長にいわれた言葉で画策していたものは崩れる。
すぐにでもここを出たほうが身のためかもしれない。
後から何か言われてでもしたら自分ひとりでは対処できないだろう。
もうテティス商会の後ろ盾はないのだ。
護衛としてではなく、冒険者として生きるからには自立した生き方を学ばなければならない。
「今すぐにでも出発しようかと」
「なんだ。せっかく来たのに少しぐらいここにいればいい。なんなら、俺のオススメの店でも紹介してやろうか」
「お気遣いなく……あ、でしたらこの辺の地図が手に入る所はありますか。この街の周辺が分かるものがあればいいんですけども」
カインが申し訳なく言うと、セルバスはしばし考え何か浮かんだ表情をした。
「おう。だったら、会社へ来てくれ。うちは海運会社だ。海図が主だが、何枚か陸地のものがあったはずだ。お前の役にたてるとおもうぜ」




