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カインとセルバスはバイマールズの冒険者ギルドにいた。
ボドカのものとは違いここはカインが訪れた中で一番大きい。
敷地面積もさることながら地上3階、地下2階とちょっとした城塞のような造りに驚かされる。
様々な人種が入り混じり、モニカのような猫の獣人もいれば蜥蜴を二足歩行にした種族、雄羊のような立派な巻角を側頭部に携える者もいる。
それに様々な独立した言語も加わりカインの頭の中は破裂しそうになった。
カイン達が案内されたのは2階の応接室でそこにはバイマールズのギルド長が既に待機していた。
妙齢の華奢な女性で妖艶な瞳がカインを捉える。
案内したギルド職員を下がらせ、立ったまま話をすることになった。
「セルバス殿。今回の件は隠密にしたいと考えております」
「どういう意味ですか?」
「あのミュルカという者についてですが、私達が長年追っている組織に関するものだと判明しました」
セルバスとカインは顔を見合わせた。
「すみません、質問いいですか」
カインが遠慮がちに手をあげると、ギルド長は黙ってうなずいた。
「ええと、ミュルカを捕まえた時に見てしまったんです。あの子の本当の姿を。あれってどういう事なんですか?」
声を潜めてカインが告げる。
ギルド長は眉を潜め、手で目隠しを作った。
「ああ、あれを見たのか」
「はい。とても不気味でした。あれは一体何ですか?」
「答えられない」
鋭い一言であった。
「ただ人ではないと伝えておこう。どちらかといえばモンスターの類だ」
「モンスター……」
幼子のフリをしてカインに近づき、他愛無い会話をしていたあの少女がモンスターだったというのはカインには納得できない。
適当な言葉で濁されていると感じてしまう。
「あの子はどうなるんです」
「本部の方へ移送する予定だ。ここで扱うには荷が重たい。それだけ事は大きいんだ」
大変な事に巻き込まれた自覚は薄々あった。
妙な勘というか頭のどこかで違和感が度々刺激されていた。
事は本当に大きいものだなとギルド長の口調と話す内容で自覚へと至る。
「僕たちはどうなるんですか」
「別に何も……というわけにはいかないだろう。最初伝えた通り、隠密にしておいてくれればこちらから何もしない。殺人者の確保と言い方はあれだが口止め料も多めにださせてもらうつもりだ」
不安そうだったセルバスの顔が少し晴れる。
しかしながら、カインはというとあまり納得のいかない様子で顔をうつむかせた。




