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「決まったかしら?」
「お母さんもいい?」
「もちろんよ。お母さんと一緒にいたい気持ちはよく分かるわ」
ミュルカは理解を示してくれたルビアの手をとった。
「この子と母親は私の部屋で泊まってもらうことにするわ。いいわよね、船長さん」
威圧するかのような鋭い眼がセルバスにささる。
「あ、ああ。あんたさえ良ければ」
「理解が早い人は好きよ。それじゃあ私は戻るわ」
そう言い残し、一人勝手に船内へと戻っていく。
甲板に残った乗客たちは自分たちを導く存在を失い、勢いはなくなった。
誰しも不満をあげなくなり、カインも例外ではなかった。
水平線に陽が沈む頃、カインは再びセルバスに呼ばれた。
「まさか魔女が乗っているとは思わなかった」
「すごい人なんですか?」
「ああ、魔法使いの中でも名持ちってのは数えるほどしかいねぇ。もちろんそれに見合った強さが兼ね備えられている」
魔法使いという言葉にカインの体は一瞬反応した。
人形が不思議そうにみつめる。
「ああそれともうお願いは無しでいいぞ。殺人が起きて上にあの女の存在だ。ここいらが俺の運の尽きだ」
投げやりな態度となって、小さな酒瓶を一気にあおった。
そして、汚らしいゲップを周囲に吐き散らす。
カイン方まで漂ってきた形容し難い匂いから逃れるべく、顔の前で手を扇ぐ。
「ちなみにお願いって一体?」
「お前はあれをみせても動じなかったが、やはり無知だったからか」
セルバスは呆れてため息をはく。
「まぁお前はそういうのやらなさそうな顔してるし、無理もないか。いいか、あれは違法商品だ」
「違法商品?」
「そうだ。あれを俺たちが売買してるって国に知られたら指名手配されるような代物だったわけだ」
「な、なんでそんなことに僕を巻き込もうとしたんですか」
「へへっ。そりゃお前さんは単純そうで使えると思ったからよ。まぁそんなことは今となっちゃどうでもいい。それ以上のことが起きちまった」
セルバスはまだ隠し持っていた酒瓶をあけ、再び一気にあおる。
ふたつの空瓶が仲良くぶつかり可愛い高い音をあげる。
「俺は一応お前が怪しいとみている。なにせ最初にみつけたやつだからな」
カインは無実の罪を着せられようとしていることを不安におもった。
反証できるものは乏しく、反論する余地もない。




