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11-6

 ドアを開けて中に入ると、何人かの客が個別の窓口に立ち、受付のものから説明を受けていた。

 船賃を支払う者や目的地での観光の説明を聞く者など様々な声が聞こえてくる。

 こういった店は初めてのカインは一先ず、今しがたあいたばかりの窓口に立つことにした。

 受付側が窓口を隠すようにしていた木の板を退けると、横に並んでいた人形の格好に一瞬驚いたが、すぐさま営業の顔となって一礼をした。

「ご用件をお聞きします」

「バイマールズに向かうための船賃を教えてください」

「バイマールズですね。でしたら、こちらの価格となっております」

 受付が自身のテーブル元から何枚かの羊皮紙を探りながら言い、目当てのものを見つけて一枚カインの前に見せた。

 数字までは読めるが何が書かれているのか分からない。

「すみません。文字が読めないのですが、これは銀貨ですか?」

 カインが数字の隣に書かれた文字を指さすと、後ろや周りの者達がカインの耳に入らぬよう小声で何かを話始めた。顔をみなくともどんな顔をしているのかすぐに想像できてしまう程、カインにはなれたことであった。

 外野の揶揄に耳を傾ける程、暇ではない。

「そうです。ただ、一番上に書かれている文字は金貨の場合になりますからご注意ください」

 言われて一番目の行に書かれている文字は他の文字とは違い少し短く、隣の数字もリストの中で一番小さい。

 逆に一番下のものは銀貨の文字とくらべて長いので恐らくは銅貨あたりをさしているのでは察しをつけた。

「何が違うんですか?」

「部屋割りの違いになります。今しがた申した金貨の部屋は一人部屋となっておりまして、船内中央の広い部屋となっています。広いといっても一般住宅の一部屋をさらに小さくしたものだとお考えください」

 カインは受付の言葉にモニカの店内を連想した。

 手を置いて隠していた数字をちらりと見ると、そこには四の文字が書いてある。

 三日の船旅で金貨四枚は割高に感じてしまうが、用意されているという事は買う者がいるのだろう。

 住む世界が違うと考え、目線を中段の方へと向けた。

 そこは銀貨で買えるものが二種類あり、三枚で買える方が気になった。

「そちらは、二等部屋よりもやや劣るものですね」

「具体的に教えてください」

「かしこまりました。こちらの銀貨三枚の部屋は四人部屋の一つとなっておりまして、部屋の大きさとしては最上位の部屋よりもさらに狭くした中に四人の方が利用されるものです。ベッドの供えは一応ありますが、期待されないほうがいいですよ」

 受付は苦笑いをしながら勧めないように話した。

 しかしカインの手持ちを見た時、今後のことを考えるとこのぐらいが丁度良い。

「まだ空きはありますか?」

「ご購入ですか?オススメはできませんよ」

「大丈夫です。身体は頑丈ですから」

 カインは小袋から銀貨三枚を取り出し、受付に手渡した。

 受け取るもあまりいい表情ではないが、仕事だと割り切った表情で代わりにチケットをくれた。

 手のひらに収まる長方形のもので、印章によって外で停泊中のあの船が描かれたものが押捺されている。

「お買い上げありがとうございました。出発は二時間後になりますので、乗船前にそのチケットをお見せしてください。良い船旅を」

 そういうと、木の板が降りて窓口は閉じられた。

 カインはなくさぬよう、銀貨の入った小袋に折りたたんで入れると、意気揚々と外へと出た。

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