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通りへと戻ったカイン達を人々は怪しげな目で見たが、すぐに興味を失った。
露天通りは今日も変わらず賑わいを見せるがこの景色も今日までとなる。
主な挨拶まわりは出来たし、あとはもう町を出るだけであるが、行き先を決めなければならなかった。
乗り合い馬車で陸路を進むも良し、海路を楽しむのも良い。
せっかくの港町だとカインは考え、海路を求めて船着き場へと進むことにした。
カインのやや後ろで仮面姿の人形がそそくさとあとをついてくる。
以前のように横に並んではくれないようで少し寂しいが、これもモニカの考えなのだろうか。
そして客船を求め、港へと着いた。
桟橋が無数に存在するもどれも、商船や漁船ばかりである。
見つけるまで根気強く海岸を沿って歩くこと数十分、それらしきものが1隻停泊しているのをみつけた。
大きさは漁船と商船の中間ぐらいで武装の類は一切なく、観覧船との見分けがつかない。
陸とを結ぶ橋が二つほどかけられており、片方からは続々と乗客が荷物をもって降りてきている。
「あれに乗ろう」
カインが指さすと人形は黙ってうなずいた。
「すみません」
降りてくる乗客を監視するように立っていた一人の男に声をかけた。
見るからに船員ではなさそうだが、関係者には違いない服装をしており、カインの方を一瞥した。
「なにか?」
「この船はどこへ向かいますか?」
「バイマールズに行きますよ」
初めて聞く名前であった。
「えぇと、そのバイマールズには何日ぐらいかかりますか」
「そうですねぇ……。予定では3日程ですかね」
3日間は船旅を楽しめるようである。
問題は船代だが、手に入れた銀貨とモニカからの餞別を足して足りるかどうかであった。
「いくらくらいかかるものです?」
「乗船を希望されるのでしたら、あちらの建物でチケットを購入してください」
そう言い男はすぐ目の前の建物をゆびさした。
錨と波、そして美しい人魚が描かれた看板が目をひく。
その下には店名だろうか文字が書かれていたがカインには読めない。
「ありがとうございました。行ってみます」
カインが一礼すると、男は頷き、己の職務に戻った。




